フレデリックが見据える未来とは。その歌詞を考察した。
今のフレデリックが示すビジョンとは
2019年10月にEP『VISION』をリリースしたフレデリック。
前作『フレデリズム2』のリリースから約半年というタイミングで発表された本作は、収録されている3曲すべてを通してフレデリックのバンドとしてのメッセージが色濃く提示されている。
さらに、フレデリックの既存のイメージである“中毒性”を保ったまま、本作で新たな『フレデリズム』を開拓したといえるだろう。
2020年2月に、自身二度目のアリーナ公演である横浜アリーナ公演を控えているフレデリック。彼らからのメッセージを知る上で重要な一曲である『終わらないMUSIC』はEP『VISION』の終曲であるだけでなく、横浜アリーナ公演タイトルの副題としても採用された。
今年の4月から来年の2月まで続くバンド史上最長のツアー。
その集大成である横浜アリーナ公演を見据えた本作に込められた、フレデリックからのメッセージを紐解いていく。
広がっていくフレデリズムの波
----------------“繰り返されるフレーズが中毒性を呼ぶ音楽”
終わらないMUSIC 僕らのMUSIC
いつまでも離れない 後腐れのないメロディに包まれ
変わらない歌を
終わらないMUSIC 僕らのMUSIC
退屈じゃ届かない 遥か彼方のメロディに誘われ
波に揺られ揺れようよ MUSIC
≪終わらないMUSIC 歌詞より抜粋≫
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そう称されることの多いフレデリックの楽曲だが、彼らの魅力はそれだけではない。
フレデリックの楽曲は、聴き心地の良いメロディや練り上げられた構成美など、“中毒性”の一言で言い尽すことができない多くの要素を持っている。
『いつまでも離れない 後腐れのないメロディ』とは、いつまでも耳にこびりついて離れない中毒性に同居する聴き心地の良さを連想させる。
この曲ではフレデリックというバンドが、彼らの音楽性を進化させながら奏で続けていくという強い意思表示を、ドラマチックな演出を削ぎ落としたシンプルなメロディにのせて歌っている。
----------------音楽は、アーティストから与えられた情報だけでなく、聴いた者各々の想像で広がっていく芸術だ。
正解はどこにある
君の想像で 想像で
偶然に惹かれ合う
君の想像で 君の想像次第で
≪終わらないMUSIC 歌詞より抜粋≫
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聴き方・楽しみ方に決まりなんてない。決められたものでないから、自由に楽しむことができる。
聴いた者それぞれのイマジネーションで描かれる世界がまさに“フレデリズム”なのだと、提示されている。
横アリの、その先の未来に向けて
----------------『この歌の主役が変わることはない』と同時に、『変わることはないメロディを求めて』と紡がれているこのフレーズは、フレデリックらしい華麗で面白い言葉遊びだ。
終わらないMUSIC 僕らのMUSIC
いつまでも離れない 後腐れのないメロディに包まれ
変わらない歌を
どこまでもMUSIC 僕らのMUSIC
この歌の主役が変わることはないメロディを求めて
明日の空に歌おうよ MUSIC
≪終わらないMUSIC 歌詞より抜粋≫
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しかし、このフレーズに込められたメッセージは決して戯れのようなものではない。
“中毒性のあるフレーズ”や“ボーダーレスなメッセージ性”、“心地よく踊れるビート”など、これまで無数の武器を手に入れてきたフレデリックが新たなフェーズに向かっていくという、ある意味でとても強気なメッセージが込められているのだ。
また『明日の空に歌おうよ』と、未来を見据えた形で幕を閉じるこのフレーズからは、2020年2月の横浜アリーナ公演だけでなく、その先の未来まで変わらず音楽を奏で続けるという意思を感じることができる。
『終わらないMUSIC』は、ライブハウスよりもずっと演者と観客の物理的な距離が遠くなるアリーナ公演を踏まえて、これまでのフレデリズムの特徴ともいえる“中毒性のあるリズムとメロディ”から“ストレートでボーダーレスな言葉選び”に重きを置くことで観客との精神的な距離を縮めてくれる曲だ。
中毒性のあるメロディが耳に残り続けるというフレデリズムは今、真っ直ぐな歌詞が心に残り続けるフレデリズムに姿を変えている。
どんな形でもフレデリックの音楽は、私たちを掴んで離さない力を持っているのだ。
TEXT DĀ