彼らが自らの手で書き下ろした楽曲の一つに『愛のかたまり』がある。
2001年に音源化されて以来、数ある彼らの楽曲の中でもダントツの人気を誇る名曲だ。
一体、この曲の何が聴く者の心を魅了するのか。その歌詞から探っていく。
女性目線で語られるストーリー
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心配性すぎなあなたは
電車に乗せるのを嫌がる
まるで かよわい女の子みたいで
なんだか嬉しいの
あなたと同じ香水を
街の中で感じるとね
一瞬で体温蘇るから
ついて行きたくなっちゃうの
≪愛のかたまり 歌詞より抜粋≫
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繊細な情景描写と、それを伝える語り口。説明するまでもなく、この楽曲は女性視点の世界観である。ちょっとした束縛にも感じ取れる恋人の行動。しかし、彼女にはそれすらも嬉しく思えてしまう。
一人で街を歩くときさえも、ふとしたことで彼への想いが募り、会いたくなってしまう。
ここまでストレートで強い感情はなくとも、何となく共感できる女性は多いのではないだろうか。
女性の恋心を代弁するように語られるドラマティックな歌詞は、おそらく高い人気の理由の一つである。
周りが見えなくなるようなまっすぐな愛
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どんなにケンカをしても
価値観のずれが生じても
1秒で笑顔つくれる
武器がある あたしたちには
変わっていく あなたの姿
どんな形よりも愛しい
この冬も越えて
もっと素敵になってね
≪愛のかたまり 歌詞より抜粋≫
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例え二人にすれ違いが生じても、この先二人の関係が少しずつ変化しても、何があっても一緒にいられることを確信しているかのようだ。
そして、これから年齢を重ねる過程で、彼がどのように変わっていくのかを楽しみにしている様子。
彼がどんどん魅力的になっていくことを期待し、切望している。そんな相手に巡り逢えた女性は、大いに共感できるかもしれない。
対して、まだそのような相手に出逢えていない方は、“自分もそう思える相手と巡り逢いたい”、“そう思えるような恋愛がしたい”という憧れを抱かせるようだ。
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あまりに愛が大きすぎると
失うことを思ってしまうの
自分がもどかしい
今だけを見て生きていればいいのにね
ねえ 雪が落ちてきたよ
≪愛のかたまり 歌詞より抜粋≫
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それほど大切に想える相手がいたとしても、ちょっとしたことで不安になったり、終わりを考えてしまったりする。この不安定な心は、恋をしている時の女性特有の感情であることは言うまでも無いだろう。
そんな負の感情を抱えながらも、それでも傍にいたい恋人。恥ずかしいほどまっすぐに向けられた愛情は、女性が憧れる恋愛の象徴である。
理想の乙女心
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子供みたいにあまえる顔も
急に男らしくなる顔も
あたしにはすべてが宝物
幾度となく見させて
思いきり抱きしめられると心
あなたでよかったと歌うの
X'masなんていらないくらい
日々が愛のかたまり
最後の人に出逢えたよね
≪愛のかたまり 歌詞より抜粋≫
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はじめから終わりまで、すべて女性の目線による恋愛の世界観を表した歌詞。
女性から男性への一方的な愛情しか読み取れない気がしていたが、実はそんなことも無いように思えてきた。
男性によって描かれた、恋人に夢中な女性の可愛らしさ、美しさ。
もしかするとこれは、男性目線から理想的な恋人の姿を描いているのではないだろうか。
自分の愛情表現を受け入れてくれる。一緒にいない時でさえも、自分のことを考えてくれている。
これから先、二人で歩むであろう未来を楽しみにしてくれている。
そして、惜しみ無く大きな愛を自分へ向けてくれる。その気持ちが大きすぎるあまりに、不安な気持ちを隠しきれなくなることもある。
何て可愛らしく、いじらしい女性だろう。
男性から見たら、なかなかに理想的な彼女ではないか。・・・少々重たいと感じてしまう方もいるだろうが。
女性が描く女性の姿とはまた違った存在意義がある。男性によって描かれた女性視点の歌詞だからこそ描けた深い愛情表現。
この世界観は楽曲最大の魅力と言えるだろう。 お互いが想い合わなくては、愛は成立しない。
「愛のかたまり」はその愛の大きさを表しているだけでなく、そんな双方向の男女の想いや理想、憧れを包括した言葉なのだ。
TEXT 島田たま子
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