1. 歌詞検索UtaTen
  2. コラム&特集
  3. J-POP
  4. 岡崎体育

岡崎体育って天才やな!関西人が思わず唸る「鴨川等間隔」

2017年、「MUSIC VIDEO」のヒットでブレイクした岡崎体育。誰もが笑える「MUSIC VIDEO」とは真逆の切ない曲「鴨川等間隔」の歌詞に見る、岡崎体育の面白いだけじゃない魅力にズームイン!
兵庫県に生まれ、京都で育った岡崎体育が歌う『鴨川等間隔』。

このたったの5文字から、関西人の心に思い浮かぶ一つの風景と、その裏側にあるフクザツな心理に迫ります。

岡崎体育ってどんな人?


思わず“あるある!”と大きく頷いてしまう、ミュージシャンのMVにありがちな展開を、コミカルかつシニカルに歌った『MUSIC VIDEO』。

笑える歌詞とMVで話題を集めた『MUSIC VIDEO』のイメージから、岡崎体育はミュージシャンなのかお笑い芸人なのか、よくわからないけど、とにかく面白い事をする人、という印象を持っている方も多い事でしょう。

しかし、『MUSIC VIDEO』は、よく聴けば歌詞だけでなく音作りも緻密な作品。他にも、 英語と日本語のダブルミーニング歌詞を完璧に成立させた『留学生』など、岡崎体育の曲には、笑いのフィルターでは隠しきれない知性を感じずにはいられません。

また、自身の作品のみならず、他アーティストへの楽曲提供、ラジオのパーソナリティ、さらには俳優デビューまでしてしまった岡崎体育。

“なぜそんなにマルチなのか?!”と思ったら、岡崎体育は同志社大学卒の高学歴ではありませんか。

関西風に言うところの「かしこ(賢い人、インテリの意味)」なのです。

「かしこ」ならではの完璧に計算された笑い…う〜ん、岡崎体育のつぶらな瞳の奥には、鋭い眼光が潜んでいる、という事ですね。

関西人にとって京都の鴨川とは?


京都で育ち、同志社大学に通った岡崎体育にとって、京都を流れる鴨川は、日常生活の一部のような存在だった事でしょう。

一方、京都府民以外の関西人にとって、古都京都を象徴する鴨川は、一種の憧れを抱く場所。

鴨川に憧れる理由、それは、川沿いに広がる京都らしい風景、夏の納涼床など様々ですが、実は『鴨川等間隔』も、その理由の一つなのです。

『鴨川等間隔』、このたった5文字を見ただけで、関西人には、ある共通の情景が思い浮かびます。

それは、京都の中心部、主に三条大橋から四条大橋付近の鴨川沿いに、まるで定規で測ったかのように等間隔の間を開けて座るカップルの姿。

その姿を笑いのネタにしつつも、正直言えば自分も一度は鴨川沿いに等間隔で座ってみたいと思っている…。

そんな少々ひねくれた感じで、関西人は鴨川に憧れてしまうのです。

「鴨川等間隔」という5文字に込めた意味


----------------
免許更新の待ち時間 硬いパイプ椅子に尻を冷やした
売店でヤンマガ買って 知らない漫画を読んだ
≪鴨川等間隔 歌詞より抜粋≫
----------------
岡崎体育が歌う『鴨川等間隔』、とくれば、“鴨川に等間隔で座るカップルたちを、さぞ面白おかしくディスってくれるのだろうな”と思いきや、いきなり幸せなカップルたちの姿とは無関係の、孤独な情景で曲はスタートします。


----------------
友達は皆それぞれの 友達と遊びに行ってんだろうし
誘えるやつも塩田くらいか アイツはいいや また今度飲みに行こう
≪鴨川等間隔 歌詞より抜粋≫
----------------
免許更新の待ち時間に、漫画を読みながら誰か友達を誘って遊びに行こうかと思ったけど、付き合ってくれそうな友達は「塩田」くらいしかいない。

でもその塩田には、今は会いたくない。そしてもちろん、この曲の主人公に彼女はいません。

学生時代特有の、この何とも言えない孤独感と倦怠感、経験のある方も多いかと思います。

そして、勘のいい関西人のリスナーならば、ここでハッと気がつくはずです。

これは、鴨川沿いに座っている側の人間ではなく、三条大橋から鴨川を眺めている側の人間の歌なのだと。


----------------
鴨川等間隔 寄り添う恋人たちの心理的距離
風になびく髪を耳にかける仕草だけは許してやろう
鴨川等間隔 橋の上 見下ろしながら見下される
≪鴨川等間隔 歌詞より抜粋≫
----------------
免許更新が終わって、結局一人で街まで買い物に出た時に、いつものように渡った三条大橋。

ふと欄干から下を覗けば、鴨川沿いに等間隔の間を開けて座るカップルたちの、お決まりの風景が目に入る。

二人きりになりたければ、もっと上流の静かな所に行けばいいのに、彼らは、なぜここで等間隔に間を開けて座るのでしょうか?

それは、その距離感が、二人だけの空間を確保出来ると共に、各カップルが鴨川でデートをしている自分たちの幸せを、お互いに確認できる絶妙な距離だからです。

しかも、人通りが多いからこそ、その幸せを周囲にもアピール出来る…とまでカップルたちが考えているかどうかはわかりませんが、賑わう橋の上から見下ろしている独りもんからすれば確実にそう見えます。

「橋の上 見下ろしながら見下される」とは、自分は橋の上から見下ろしてるはずなのに、実は、“彼女いないのか、かわいそうに”と、見下されているような気がする、そんな、かなりこじれた感情を表しているのです。


----------------
友達は皆それぞれの 新しい道を歩んでんだろうし
在学生は塩田と俺か アイツはいいな 家を継ぎゃいいもんな
≪鴨川等間隔 歌詞より抜粋≫
----------------
ここで再度登場する「塩田」。なぜ「塩田」と今は会いたくないと思ったのか、その理由がこれで判りましたね。

就職活動中の主人公は、同じくまだ就職が決まっていない塩田と会ったところで、家が自営業の塩田を羨む気持ちしか湧いて来ないからです。

これは勝手な想像ですが、きっと塩田は実家が寿司屋かお寺なのでしょう。寿司屋かお寺を継ぐには修行が必要なので、塩田も塩田で大変なんですけどね。


----------------
木津川BBQ はしゃぎ合う男女の輪には入れない
≪鴨川等間隔 歌詞より抜粋≫
----------------
人間は、大きく分ければ2つのタイプに分類されます。

生まれつき社交的な性格で、誰とでもすぐに友達になれるタイプと、生まれつき内向的で、なかなか人と打ち解けられないタイプ。

後者はバーベキューではしゃぐ男女の輪になど簡単に入れませんし、鴨川でも主に橋の上から眺める側。

心のどこかには出来ればあちら側に行ってみたいという気持ちもあるけど、自分がそんなタイプじゃない事も良く解っている。

そんな、生まれつき社交的な人たちには到底理解出来ないであろう不器用な若者の心情を、鴨川の風景の中に映し出した『鴨川等間隔』。

切なさに胸を打たれながらMVを見ていると、関西人ならばこう突っ込む事でしょう。“これ、宇治川やん…”と。

鴨川を歌った曲のMVに流れる川は宇治川、“そのセンス、天才やな…”と、唸らずにはいられない関西人なのでした。

TEXT 岡倉綾子

京都府宇治市出身の男性ソロプロジェクト。 2016年5月発売のアルバム『BASIN TECHNO』でメジャーデビュー。 同アルバム収録の「MUSIC VIDEO」は、『第20回文化庁メディア芸術祭』エンターテインメント部門新人賞を受賞。 2019年6月に、自身の夢と公言していた<さいたまスーパーアリーナ>···

この特集へのレビュー

この特集へのレビューを書いてみませんか?

この特集へのレビューを投稿

  • ※レビューは全角500文字以内で入力してください。
  • ※誹謗中傷はご遠慮ください。
  • ※ひとつの特集に1回のみ投稿できます。
  • ※投稿の編集・削除はできません。
UtaTenはreCAPTCHAで保護されています
プライバシー - 利用契約