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失恋した時こそ聴きたい…King Gnu「傘」が守るものは?

King Gnuの『傘』はブルボン「アルフォート」のCMソングとして書き下ろされました。タイトルだけで、雨、涙、失恋と、想像力をかき立てられます。一体どんな物語が描かれているのでしょうか?

始まりは、恋の終わり


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さよなら
ハイになったふりしたって
心模様は土砂降りだよ
傘も持たずにどこへ行くの?

あれこれ
不安になったって
どうしようもない
"運命でしょ?"
曇りガラス越しのあなたには
もう何も届いちゃいない
≪傘 歌詞より抜粋≫
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『傘』というタイトルにぴったりな、別れの場面から楽曲は始まります。愛する人との別れは、何度経験しても辛いものです。

「さよなら」というたった4文字の言葉で、あっけなく終わってしまう2人の時間。強がって平気なふりをしても、心は痛みます。

立ち去る「あなた」の心には、目には見えない土砂降りの雨が降っているのでしょう。傘を差し出したいけれど、自分にはその傘が見つけることができません。

どんなに嘆いても、もがいても、こじれてしまった関係を修復する術はありません。運命に抗う力を奪うのは、どんな言葉も届かなくなった大切な人の姿でしょう。

届かないなら、言葉は無力です。

「運命」の儚さ


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3回目のアラームで
ようやく起き上がれそうな朝
眠い目を擦りながら
顔を洗ってコーヒーを流し込め

運命なんてハナから
信じきれやしないよな
深読みのし過ぎばかりじゃ
満たされやしなくて

もっと話したいんだ
もっと近づきたいんだ
遠くで眺めていたく無いよな
どんな時だって
≪傘 歌詞より抜粋≫
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深い眠りの中にいる内は、失恋の痛みを忘れることができますよね。だからいつまでも起き上がりたくない…そんな朝もコーヒーで無理矢理現実へと引き戻されます。

「運命」という言葉は、とても甘い響きで人々を惹きつけます。それでも、運命は絶対ではないと知ってしまったから、盲目的に信じて安心することもできないのです。

いつか失われてしまうかもしれない愛だからこそ、手放したくない大切な人とは、言葉を交わし、温もりを感じていたいですよね。

それが人の心であり、恋する、愛するということなのです。

そんな大切で当たり前のことに、愛を失ってから気付く虚しさが、歌詞で表現されています。

夢と現実の狭間でさまよう心


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ガラス片を避けながら
直行直帰寝落ちる毎日さ
確かに僕ら其処に居たのさ
寄せては返す波の中を
必死に立っていたんだ
≪傘 歌詞より抜粋≫
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自分も、恋人も、現代を生きる人は皆、毎日を必死で生きています。

息を吐く暇もないほどめまぐるしく過ぎて行く日常の中で、忘れがちな生きがいや張り合いを、2人は恋愛に見いだしていたのかもしれません。

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ゴールなんか有りはしないよな
ただのレースとは違うよな
巷に流れるラヴ・ソングの
様にはいかないね
≪傘 歌詞より抜粋≫
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でも、そんな2人の愛にも終わりが訪れます。もう2人で愛を育むことはできないし、「あなた」に声が届くこともありません。ただ、自分の声が虚しく響くだけです。

「巷に流れるラヴ・ソングの様にはいかないね」という歌詞に、恋に焦がれる切ない心情が表れています。

本当は自分たちも巷に流れるラヴ・ソングの様に幸せになれると思っていたのでしょう。そうならなかった現実が、失恋した心に突き刺さります。

虚無感漂うラストシーン


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ゴールなんか有りはしないよな
ただのレースとは違うよな
巷に流れるラヴ・ソングの
様にはいかないね
≪傘 歌詞より抜粋≫
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最期にぽつりと言い放った言葉が、終わった恋の現実を教えてくれます。藍那ね、簡単に語れるものではありません。

長い人生の終わりに振り返ってみて始めて、ようやく見えてくるものなのでしょう。

それくらい、愛とは大きく、難しく、曖昧で捉えようのないものなのです。

そんな愛を前にして迷い、立ち止まり、最期には愛を失った「僕」がこれからどこへ行くのか?

失恋特有の虚無感を漂わせ、余韻を持たせたまま終わっていく曲の作りが見事です。

失恋した時にこそ聴きたい楽曲の一つだといえるでしょう。

TEXT 岡野ケイ

東京藝術大学出身で独自の活動を展開するクリエイター常田大希が2015年にSrv.Vinciという名前で活動を開始。 その後、メンバーチェンジを経て、常田大希(Guitar/Vocal)、勢喜遊(Drums/Sampler)、新井和輝(Bass.)、井口理(Vocal/Keyboard)の4名体制へ。 SXSW2017、Japan Nite US Tour ···

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