バンドシーンを牽引し続ける10-FEET
『RIVER』や『1sec.』などは、10-FEETのライブでよく歌われる人気の楽曲です。
しかし、忘れないで欲しいのが2009年に発売された6thアルバム「Life is sweet」に収録されている隠れた名曲『風』。
『風』はライブでの演奏頻度も多く、ファンの間では知らない人はいない名曲です。
子どもの頃は純粋で、自分の思ったことをただ率直に相手に伝え、時にはそれをきっかけにケンカすることも気にしません。
大人になると“我慢”を覚え、“作り笑い”を覚え、“物事をうまく解決する力”を手に入れ、純粋さと引き換えに自分らしさを失っていってしまう、そう感じることはありませんか?
しかし、本当に自分らしさはなくなったのか?『風』の歌詞はその答えを10-FEET流に導いてくれています。
幼い頃の夢、今でも残っていますか?
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いつまで歩けば辿り着くの 笑って振り返る日はくるの
一人じゃ無いのに一人きりで いつまでも僕は笑えるかな
≪風 歌詞より抜粋≫
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人は誰しも子どもから大人へと成長しながら人生を歩んでいきます。その人生の歩みの中では、心境が変化していくのは当たり前のことです。
子どもの頃は怖いもの知らずで、ただ前を見つめて走り続けていた。好きなものは好き、嫌なものは嫌、そんな当たり前の表現も当たり前のようにすることが出来ていた。
そして何より、なりたい自分の理想像や大きな夢を描くことも同様に出来ていました。
それが出来ていたのは子どもならではの“純粋さ”があったからではないでしょうか。
時が経ち、大人へと成長した当時の子どもは、成長とともに当時描いていた大きな夢も胸の奥底に眠ってしまっている人も多いのではないでしょうか。
あの時描いた夢は、きれいさっぱりなくなってしまったのでしょうか。そんな自問自答をしながらも、日々仕事に追われながら生活をしていくことで時はさらに流れていきます。
幸せを掴むにはダメージは負うもの
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スマートに負けを認めろとか 求めない事が幸せとか
笑い合いたけりゃ戦うのさ 手を伸ばして願いを描くのさ
≪風 歌詞より抜粋≫
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大人になり、多くの人と関わりを広げていく中で、周り人との関係性を重視し、自分の意見を主張することをやめてしまう人もいると思います。
“自分が我慢して場が収まるなら”と考える人、“現状維持が一番楽”と考える人。
我慢をする、変化を求めないそんな消極的な考えに自分自身が支配されていくこともありますよね。
自分自身に素直で、喜怒哀楽を全力で表現できていた幼少期に戻れないのだろうか、と思ってしまう。
このまま廃れていくのか。そんな人生でいいのだろうか。そんな迷いに陥ったとき10-FEETのライブではいつも答えを導き出してくれています。
ヴォーカルのTAKUMAは過去にライブのMCでこんなメッセージをファンに残しています。
“困難の無い幸せなど人生にはないのだ。幸せを掴むには多少のダメージは伴うものだ。”
その熱いメッセージを象徴するかのように『風』にも10-FEETらしい答えとして記されています。
無駄なことなど何一つない
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最初から真っ白のあの白と 消しゴムの跡だらけの白じゃ
キタナイ白の方がイカすのさ 嫌なやつの方が純粋さを知っているのさ
≪風 歌詞より抜粋≫
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今までの人生で積んだ経験は、すべて無駄なことなのでしょうか。決してそんなことはありません。自分らしさがすべて失われたわけでもありません。
生まれたときは真っ白だった、自身に与えられた人生という名のキャンバス。
誰しもが人生を歩みながら、そのキャンバスに失敗や後悔という名の絵を、描いては消し、描いては消し、何度もそれを繰り返しながらより良い絵が描けるよう、人生を歩んでいきます。
キャンバスは消しゴムによって表面的には真っ白になっているかもしれませんが、実はその人にしかない絵がたくさん蓄積され続け、自身の礎となって積み重なり“今”につながっています。
そんな消し跡だらけの“汚い白”こそが、その人だけの個性であり魅力なのです。
一般的に“嫌なやつ”と言われている人ほど、アイデンティの表現に長けているのかもしれませんね。
成長を繰り返し自らを研摩し続けながら人生はこれからも続いていく。
大人になり、物事を無難にこなして虚無感を感じているのであれば、時には“嫌なヤツ”になってでも幼い頃の自分に戻ってみるのも良いかもしれません。
幼い頃の自分と向き合ってみると、さらなる成長のチャンスがあるかもしれない、そんなことを『風』が教えてくれているように思います。
TEXT みなみかわ