大倉忠義書き下ろしの等身大の詞
『My Story』の注目すべきは、何と言ってもメンバーの大倉忠義・安田章大が作詞作曲を手がけている点だ。
これまでにも関ジャニ∞は、メンバー自身が楽曲作りに携わることが多々あった。
それでも、5人になったこのタイミングで作られたことにこそ意味があるだろう。
さらに、この楽曲はメンバーへの呼びかけにもなっている。
大倉忠義の目を通してメンバーがどう映っているのか、関ジャニ∞はどんなグループなのか、リアルな言葉で綴られた貴重な楽曲なのだ。
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また会えたね
いつも顏を見ろとなぜか涙が溢れる
君との時間 かけがえのないこの瞬間
楽しんでいこう
≪My Story 歌詞より抜粋≫
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大倉と共に楽曲を手がけた安田いわく「また会えたね」という歌詞は、メンバーへのものでもあり、ファンに対するものでもある。
「君との時間」「かけがえのないこの瞬間」それはまさしくライブで、関ジャニメンバーとファンが一体となる瞬間だ。
限られた時間の一瞬一瞬を楽しもうというメッセージは、メンバーとの絆を確かめあっているようでもあり、ファンに語り掛けているようにも聞こえる。
ライブという、ファンと同じ時間を共有できる時間を大切にしてきた関ジャニらしい歌詞だ。
メンバーへの思い
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気がつけばこんなに時間が経ってたんだね いつも笑ってきたね
くしゃっと笑うその笑顏
だいすきだよ
≪My Story 歌詞より抜粋≫
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『My Story』では、大倉から見たメンバーの姿も如実に描かれている。
「くしゃっと笑う笑顔」という歌詞からは、メンバーへの深い愛を感じる。
笑っている顔が好きで、そのメンバー特有の笑い顔が好きだというのは、メンバーの仲がいいことの証明だ。
笑顔といえば「ゲラ」と言われるほどよく笑う大倉忠義の顔が浮かぶが、大倉目線で書かれている歌詞ということを考えると、八重歯がチャームポイントの村上信五に向けたメッセージだろう。
彼の豪快な笑いや爽快なツッコミは見ていて気持ちがいい。
何事も笑い飛ばすパワフルさが、浮き沈みが激しく苦労の絶えなかったグループを支えて来たのだろう。
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いつも楽しい君もホントは悲しいんだね?
その空気が嫌いで おちゃらけてるのをみんな知ってるよ
≪My Story 歌詞より抜粋≫
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いつもおちゃらけているメンバー、丸山に向けたメッセージも大倉らしい。
関ジャ二の元気印でありギャグ担当でありながら、実は意外と気にしいな彼。空気を敏感に読み取り、辛い時こそ明るく振る舞う…。
そんなこともメンバーはお見通しで、その上で乗っかり、イジる。まさに愛されキャラなのだ。
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不器用で口数少なくても 大事な時には誰よりも話してくれた
背中合わせでも同じ道を見つめてたね
≪My Story 歌詞より抜粋≫
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いつも明るく、関ジャニ∞を引っ張っている最年長メンバー・横山裕に向けたメッセージも、まさにメンバーならではだ。
MCやバラエティ番組ではおしゃべりなイメージが強い横山だが、実はシャイで無口。そんな性格だからこそ、大事な時にしっかりと話ができたことで、大倉は仲間として信頼を寄せているのだろう。
メンバーは常に横一列に並んでいるわけではなかったかもしれない。しかし、歩く歩幅も、考えも、その時々で違いはあれど、見ている方向が同じだからやってこられた。そんなメッセージを感じられる歌詞が印象深い。
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気がつけばこんなところまできたんだね ずっと唄ってたね
君の歌声が僕らの心を震わせた
≪My Story 歌詞より抜粋≫
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あのメンバーも登場?
2番では、関ジャニ∞のメインボーカルを長らく務めてきた渋谷すばるへのメッセージが歌われている。
はっきりと誰に向けたメッセージなのかを伝えなくとも、ファンが聴けばすぐに分かる歌詞に、胸が熱くなる。
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いつも優しい君は人のことばかり
つまづくと手を取って 立ち止まり スピード緩めて
傷ついて苦しんできたね
≪My Story 歌詞より抜粋≫
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関ジャニ∞で一番優しいと言われるメンバー・安田章大へのメッセージも深い絆を感じるものだ。
自分のことよりも他人への思いやりで動く安田は、気を遣い過ぎて疲れてしまった時期もあるようだ。
それほどまでに他人を気遣える安田だから、誰かがつまづいたり立ち止まったりすれば一緒に立ち止まって、そっと手を差し伸べてくれる。
どんな時でも一緒に歩んでくれる、安田の人柄がうかがえる。
その分、傷つくこともたくさんあったのだろう。そんな姿もちゃんと見てきたメンバーだからこそ、この歌詞が温かい。
安田とはまったく違うタイプながら、優れた観察眼で常に周囲を広く見ている大倉らしい視点だ。
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虚勢張って 強がってるけれど 大事な時には一緒に泣いてくれた
雄弁な君が何も話せなかったよね
≪My Story 歌詞より抜粋≫
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同い年の安田が歌う印象的な歌詞は、おそらく錦戸亮に宛てられたものだろう。
今年9月にグループを脱退した彼は、強気でストイックな性格だ。
頭が良く現実主義で、クールさと熱さを持った彼は、今回の脱退で批判を集めることも度々ある。
タブー視されがちな元メンバーにもスポットを当て、ずっと見てきたからこそ分かるよさを表現している。
今このタイミングで言葉にして表現しているからこそ、聴く人の胸に刺さる歌詞だ。
過去も今も、すべてを背負って
『My Story』では、大倉から見たメンバーの姿がリアルに描かれている。
それは、ステージやテレビなどの表舞台では見せない姿だ。それでもファンには、うなずける部分が多くあるだろう。
そんなメンバーのありのままの魅力を歌いながら、サビで描かれるのは叶わなかった夢や、思い描いていたものとは違った未来だ。
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幸せの定義なんて人それぞれだけど
それでも 今 僕らはここにいる
夢を見て過ごした
思い描いた未来とは少し違っても
今まで過ごしてきた時間に嘘はない
はしゃいで転んで笑って泣いて
泥だらけの僕らの物語
≪My Story 歌詞より抜粋≫
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7人の関ジャニ∞が未来永劫続いていくと信じていたメンバーやファンにとって、渋谷と錦戸の相次ぐ脱退は予期せぬ事態だったはず。
まさか、15周年を6人で迎え、その後は5人でグループを背負っていくことになるとは、誰が考えただろうか。
生涯付き合っていくと信じていたメンバーが1人欠け、2人欠け、残されたメンバーもグループの進退を真剣に考えた一年になった。
「幸せの定義なんて人それぞれ」という歌詞が非常に大倉らしい。
一緒にいても、メンバー1人1人、違う物差しで物事を見ていて、価値を見いだすものも違う。大切なのは、それでも同じ道を歩めるかどうかだ。
"考え方の違いはあってもいい。ただ一緒に、歩幅を合わせて歩んで行ければいい。"そんな思いが垣間見える歌詞だ。
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この青春の日々 もう何もいらない
それでもただ君がいればいい
夢を見て過ごした
あの時はもう戻らないけれど
今は今ですごくすごく幸せなんだよ
はしゃいで転んで笑って泣いて
傷だらけの僕らの物語
≪My Story 歌詞より抜粋≫
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関ジャニ∞は恵まれたグループではなかったことは、メンバーの口からも度々語られている。
下積みが長く、いつデビューできるかも分からなかったジュニア時代を経て、ようやく手にしたデビューはアイドルらしからぬ演歌。その後も、パッと売れずに地道な努力が続いた。
そんな中で育んできたメンバー同士の絆は、5人になった今でも変わっていない。そしてそれは、現メンバーに限らず、脱退したメンバーに対しても言えることだ。
「夢を見て過ごしたあの時はもう戻らないけれど」という歌詞の通り、過ぎた青春の時間は戻らないし、己の道を選んだメンバーが戻ってくるわけでもない。
それでも「今まで過ごしてきた時間に嘘はない」というように、7人で夢を掴もうと走り抜けた時間がなくなることはないのだ。
脱退をきっかけに、関ジャニ∞を巡ってあらゆる憶測が飛び交った。メンバーの不仲を書かれたこともあった。そうした曖昧な情報への明確な答えがここにある。
"誰が何と言おうと俺らの時間に嘘はなかった"そう言い切れる大倉忠義が何ともかっこいい。
関ジャニ∞はかっこいいだけのグループではない。お笑い集団ともいえるほどに楽しいことが大好きで笑いが絶えない。失敗も悔しい思いもたくさんして、涙もこぼしてきたグループだ。
「泥にまみれ、傷だらけになっても前を目指す」ような人間くさい姿こそが関ジャニ∞であり、彼らを唯一無二の存在たらしめている。
別れの先にある「未来」
----------------関ジャニ∞は、これまで3人のメンバーが脱退している。デビューして間もなく脱退を余儀なくされた内博貴をはじめ、メインボーカルの渋谷すばる、錦戸亮の脱退。
出会い別れ繰り返して
願い 語り 叶わなくて
でも 朝がおとずれる
出会い別れ繰り返して
願い 語り 叶わなくて
でも 連れて行くよ またあの場所に
≪My Story 歌詞より抜粋≫
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去年から今年にかけては、7人の関ジャニ∞を信じていたファンにとって辛い年となった。
8人で見た夢を、7人で追いかけ、その夢が叶う前に5人が取り残された。
一度は歩みを止めかけた5人が再び顔を上げ、関ジャニ∞の第二章を歩み出した。その決断には、目には見えないいくつもの苦悩と覚悟があったことだろう。
それでも再び5人で「あの場所」へ、ファンを連れて行く、メンバーで立つと決めたことに感謝したい。
「あの場所に」とソロで歌う安田の、透明感のある歌声が印象的で、心に残る。"僕らはこんなところで終わったりしない"と、高らかに宣言したようにも聞こえる歌詞だ。
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夢を見て過ごした
思い描いた未来とは少し違っても
手を繋いで歩いてきたこの道
色んな光で照らしてくれたから
愛しいここにまた来られた
終わらない物語
≪My Story 歌詞より抜粋≫
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長年守ってきた7人の関ジャニ∞ではいられなくなっても、繋いだ手だけは離さなかった5人。
それが7人でも6人でも常に前だけを見て、全力で走り続けてきた彼らの物語は、ここへきて形を変えた。
過去の関ジャニ∞もメンバーも捨てることなく、封印することなく、今の関ジャニ∞を作っている大切なかけらだ。
大きな悲しみを前に、思わず目を背けたくなるファンに、"大丈夫"と、そっと背中を押すような温かさに溢れている。
これまでも、関ジャニ∞はファンへの感謝を何度も言葉にしてきた。「連れてきてもらった」というような言い方も何度もしてきている。それが彼らのスタンスであり、考え方なのだろう。
「色んな光で照らしてくれたから愛しいここにまた来られた」という歌詞には、ファンやスタッフが、関ジャニ∞を取り巻く関係者が、手を差し伸べてくれたことへの感謝が滲んでいる。
自分たちの力だけでは決して上り詰められない場所。そこへ連れて行ってくれるのは、ファンをはじめとする、関ジャニ∞を愛してくれる人たちの愛に他ならない。
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一緒に笑って泣いて歩いていこう
ありがとう。いつもありがとう。
ここまで連れてきてくれて。
ありがとう。
≪My Story 歌詞より抜粋≫
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だから「ここまで連れてきてくれて。ありがとう。」なのだ。
「一緒に泣いて笑って歩いていこう」という歌詞は、ファンに向けた愛のメッセージだ。メンバーだけでなく、ファンも関ジャニ∞の一部だと考える彼ららしい歌詞といえる。
こんなにまっすぐ「ありがとう」と言われたら、ファンはもう、黙って応援するしかない。だから関ジャニ∞は、どこまでも最強で最高なのだ。
これからの関ジャニ∞に期待大
関ジャニ∞は現在、47都道府県を巡るツアーを開催中だ。そんな中でリリースされたニューシングル『友よ』は、オリコンランキングで1位を取得し、上々の滑り出しを飾った。
ジャニーズは元々、CDを出す際に、初回限定版や通常盤で収録内容を変えている。
『友よ』も、表題曲『友よ』の他にMVやメイキング映像を収録した初回盤、『My Story』と『Faaaaal in love』が収録された通常盤、47ツアーオフィシャル"BOY"Tシャツ付き盤と豪華な内容だ。
加えて、5人でバーベキューをしながらトークを繰り広げる『5人のドキュメント ぼちぼち大切な夜』が収録されたセブン-イレブン盤も発売されている。
こちらの映像で、新体制の関ジャニ∞への思いを赤裸々に語る5人の貴重な姿は、わざわざCDを手に入れてまで見る価値がある。
『友よ』で見せてくれた新しい景色は、関ジャニ∞がまだまだやれることをファンに示している。
勢いを失わない関ジャニ∞の姿は、メンバーが減ったことを決してマイナスにはしない、彼らの覚悟と熱が惹き寄せたものだ。
5人になって、ますます楽しみになってきた関ジャニ∞。
"きれいじゃなくてもいい、泥臭くても、関ジャニ∞が見せてくれる夢になら付き合いたい"そんな風にファンに思わせる彼らは、まさしく最強で最高のグループなのだ。
TEXT 岡野ケイ
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