10代の頃の自分と現代の問題を重ね合わせた歌詞
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牛乳飲んだら少し背が伸びた
誰かが飼い殺したって街がうるさいよ
ちょっぴり周りが見えないのかな
あたしロリついてばかりいる
≪毎日がニュース 歌詞より抜粋≫
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曲の出だしは、まだ10代の子どもと思われる少女の語りから始まります。
「ちょっぴり周りが見えないのかな」と悩んでいる様子は、少し不穏な印象です。
10月11日に配信公開された『毎日がニュース』は、Youtube公式チャンネルの動画ページでは、生き辛さを感じている現代の少年や少女の心境をストレートに描いたと説明されています。
公式のリリックビデオを再生すると、iPhoneで作られたという映像・歌詞とともに女子高生らしき制服を着た少女が歩く姿が終始映し出されます。
中学・高校時代にいじめや引きこもりを経験したギターボーカルの子が、学校問題を主な原因として10代の自殺者が増加している現状に対して書いたメッセージのように感じます。
インスタやSNSで作られる「キャラクター」
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道義的な事を言っていいね稼いで
加工前の世界から可愛くなる
1盛れる角度 報道してくんで
いい子ちゃんキャラ守っていくからね
≪毎日がニュース 歌詞より抜粋≫
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サビでは、若者の間で流行っているインスタの自撮りに揶揄しているのか「いいね」や「盛れる」などといった単語が登場します。
最初の「道義的な事を言って」と最後の「いい子ちゃんキャラ守っていくからね」という歌詞が、周りから期待されるキャラクター性を押し付けられ、そこから逃げ出すことも出来ない、現代のSNSに振り回される高校生の何とも言えない悲しさを漂わせます。
こんな世界では死んだほうがまし?
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救いなきこの世界をみんな裁いて
大好きが腐ってく成虫期
こっから飛び降りて死んだっていい
やっと終わりに近づいて嬉しいね
≪毎日がニュース 歌詞より抜粋≫
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そして二番では「飛び降りて死んだって良い」と直接的に自殺を表現しています。
「やっと終わりに近づいて嬉しいね」という歌詞から、つらい人生を生きるより死んだほうがましだと考えるほど追い詰められていることが伝わってきます。
こんなにも誤魔化しのない突き刺すような歌詞は、実際に経験した人にしか言えない言葉でしょう。
また、成虫期というのは、成長期と掛けているのでしょうか?
「大好きが腐ってく」という表現が、好きなことも何もかも興味を無くしてしまっているような、鬱々とした状態を感じます。
結成10周年を迎えても未だ劣らない音楽性
『毎日がニュース』の公開直後、Spotifyの視聴回数に応じてイベントを行うというキャンペーンが行われました。
Twitterで興味を持ったフォロワーや熱心なファンにより、視聴回数は目標の5万回再生を突破。
視聴回数の特典で行われたスペシャルライブは2時間に渡って開催され、セットリストの曲数が多くて豪華だとツイートや動画のコメントでは盛り上がりました。
2018年に結成10周年を迎え、少し落ち着いてきたといわれる神聖かまってちゃんですが、その尖った音楽性、どこか懐かしさを感じるメロディ、まっすぐ訴えかけるような歌詞の切れ味は未だに衰えません。
来年、2020年1月8日には10番目のアルバム『児童カルテ』がリリースされるという情報が発表されています。
彼らがこれから一体どんなメッセージを投げかけるのか、今後も目が外せません。
TEXT 空野カケル