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『わたしは光をにぎっている』の胸打つストーリー
両親を亡くし、祖母と暮らす澪。
祖母が入院したことから、亡き父親の親友が住む東京で暮らすことになります。
澪は、下町の片隅の銭湯で仕事を見つけようとスーパーの面接を受け働きだします。
しかし、コミュニケーションが取るの苦手でが、人の気持ちを察する事も自分の思いを伝える事も出来なかったため、スーパーのバイトを早々に辞めてしまいます。
のんびりした長野での暮らしとは違い、心が折れてしまった澪は落ち込んでしまいます。
そんなある朝、澪の1番の理解者である祖母から澪のもとへ電話が。
東京の生活に馴染むことが出来ていないことを知った祖母は澪に「目の前のできることから、ひとつずつ」と伝えた。
その言葉を胸に自分にできることはなんだろうと澪は考えます。
そして、父の親友である京介が銭湯の掃除をしているのを見て何も言わず掃除の手伝いをし始めるのです。
京介もぶっきらぼうながら澪に銭湯の仕事を教えていきます。
不器用な二人の周りには、温かなお客さんたちが集まります。
気がつけば笑顔が増えていく澪、東京の生活に馴染みはじめた澪の暮らしには何が起きるのでしょうか。
物語を彩る個性派キャストの紹介
不器用で、人に馴染めない少女っぽさを残した主演の澪を演じるのは、テレビドラマ『この世界の片隅に』でヒロインのすずを演じた松本穂香。
言葉少なく無表情な澪という難しい役をふとした目線や動きなどの愛おしく表現しています。
居候をする澪の亡き父親の親友で銭湯を切り盛りする京介役は映画『めがね』に出演する名脇役の光石研。
ぶっきらぼうで無口な京介は、澪のことを娘のように大切思っている父親的存在です。
また、バンド『黒猫チェルシー』のボーカル渡辺大知が映画を撮る夢を追いかけて、そのまま東京に住み着いた緒方銀次役で出演しています。
銭湯に通うサッパリした性格の琴演じる徳永えりと不倫相手役・井関役の忍成修吾のキャラクターが独特で笑いを誘います。
おとなしすぎる澪と元気で多弁な銀次もお互い淡い恋心を抱きあうところもみどころの一つです。
監督は詩人としても活動する中川龍太郎監督
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監督・脚本は若手映画監督・中川龍太郎が担当。
高校生の時に、やなせたかし主宰「詩とファンタジー」で最年少で年間優秀賞を受賞した詩人でもあります。
中川龍太郎自身の実体験を踏まえて描かれた2017年公開の『四月の永い夢』で各賞を受賞。
2020年2月には作家・宮下奈都の小説デビュー作『静かな雨』を仲野太賀・元乃木坂46の衛藤美彩のダブル主演での公開が決まっています。
今回の作品も、スタジオジブリの鈴木敏夫や詩人・谷川俊太郎など著名人にも高く評価されています。
詩人でもある中川龍太郎の脚本というだけあり、言葉一つひとつが心に残ります。
印象的なのは取り壊しが決定した銭湯で澪が「しゃんと終わらせる」と言う台詞。
詩人・山村暮鳥の詩も本作品の「わたしは光をにぎっている」の表題となっています。また劇中に澪が朗読するシーンもたくさんあります。
また、ドローンを使用しての上からの撮影は壮大。
フィルムカメラで実際に商店街で働く人達を撮った映像は中川龍太郎自身の映画と人間に対する愛が散りばめられています。
主題歌はカネコアヤノの『光の方へ』
主題歌は、今注目の女性シンガーソングライターのカネコアヤノ。
バンドセットや弾き語りで活動し、チケットはソールドアウトになることも多く、数々の音楽フェスにも出演しています。
2019年9月にリリースされた、フルアルバム『燦々』に収録されている「光の方へ」。
この曲は中川龍太郎監督自らがオファーをして、カネコアヤノが本作のために書き下ろした楽曲です。
レコーディング中風景のMVで高らかに歌いあげる姿が印象的です。
エンディングとして流れる彼女の歌は本作を格段に盛り上げてくれます。
カネコアヤノ自身も、主人公の澪と似た性格をしており、音楽活動をするまでは内気な性格でした。
しかし、その見た目の可愛らしさに反したロックな一面を持ち、ライブパフォーマンスでは圧倒されます。
主人公・澪に強く共感した彼女だから描ける世界観であり「光の方へ」に導いてくれるのでしょう。
美しい描写と光の意味するもの
都会で見つけた光。それを崩すように起きる再開発の波。
不器用な澪がやって構築した居場所が無くなってしまいます。
これから、澪や住んでいる人達はどこに向かうのか。
東京オリンピックに向けて再開発されていく街はどうなってしまうのでしょうか。
普遍的な長野の美しく凛とした湖や山、東京の変わりゆく廃退的な街並み。
たくさんの風景のシーンが美しい本作品。
『わたしは光をにぎっている』は映画館でぜひ鑑賞してください。
▷『わたしは光をにぎっている』公式サイト
TEXT 棗キョーコ