曲から始まるタイムスリップ
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赤になって 立ち止まった
帰り道聞いていたプレイリストのシャッフルが
僕の体震わせたの
青になっても 動き出せない
3分30秒のタイムカプセルが
開いて 君を思い出す
≪3分30秒のタイムカプセル 歌詞より抜粋≫
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歩きながら音楽を聴くという習慣を持つ人は多くいるだろう。
スマホで手軽に音楽が聴けるようになり、昔以上に音楽を聴くことが、日常の仕草に溶け込むようになった。
通勤の合間、昼休み、休日の散歩、ちょっとした時間の隙間で、音楽の世界に浸ることができる。
音楽には感情も乗せやすい。あの日聴いた曲、あの人が好きだった曲。
音楽を聴くこと。
それはまさにタイムカプセルなのだ。
過ぎ去った日々を甦らせる曲
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たわいもない事でLINE
スタンプやり合い
眠くても話し込んだり
おでこくっつけて笑ったり
≪3分30秒のタイムカプセル 歌詞より抜粋≫
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付き合っていた頃は、何気ないことで連絡を取りあっていた2人。
メールではなく「LINE」「スタンプ」というところが今の時代を感じさせる。
好きな人と一緒にいれば、眠気なんて気にならない。
1分1秒でも一緒にいたくて、次の日はつい寝不足になったり、恋人のことばかり考えたりするものだろう。
2人が過ごした時間は、どこにでもある平凡なカップルそのものだ。
そんな何気ない日常が愛おしく、堪らなく大切なものであったことに、失ってから気づくのが切ない。
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愛していた
愛されてた
当たり前だと思ってた
何気ない仕草 君の香りも
もしかしたら
聞かなかったら
思い出す事もない
何でもない日々が幸せなんだろう
≪3分30秒のタイムカプセル 歌詞より抜粋≫
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悲しくて忘れていたのか、忘れてしまうほど長い時が流れたのかは分からない。
しかし、たしかにあの日、あの瞬間、2人は愛し合っていたのだと、今さらながら思い出すのだ。
ずっと忘れていた愛しい人との思い出が、匂いが、3分30秒の曲を聴いただけで鮮やかに甦る。
胸の奥に閉じ込めていた記憶が、曲によって呼び起こされるところが感慨深い。
等身大の恋人
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「おやすみ」のTEL
「そっちが切って」
毎晩どちらも譲れなくなって
ジャンケンして決めてたな
僕ら いつも 何時だって
会いたくなれば すぐに部屋着のままで
急いで家に向かったな
≪3分30秒のタイムカプセル 歌詞より抜粋≫
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2人はどうやら、背伸びをしたカップルではなかったようだ。
部屋着で会いに行けるほど気楽な関係で、でも会いに行かずにはいられないほどに惹かれ合っていた。
恋人同士なら、電話で話すことも多いだろう。
でもその電話を切れなくて、互いに押し付け合う。
これもまた、2人仲のよさを表している。
いつまでも声を聴いていたいからこそ、自分から電話を切るのはためらわれる。
その気持ちは互いに同じで、結局いつまでも切れないのだ。
2人が電話口で笑い合う様が目に浮かぶ、とてもリアルで等身大のカップル像が親しみやすい。
叶わなかった、2人の未来
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若かった2人 「一生一緒」だなんて何度も語り
ぶつかり合い 気まずくなる日々 今だったら違ったのか?
≪3分30秒のタイムカプセル 歌詞より抜粋≫
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付き合っていた頃から、どれくらいの時が流れたのかはわからないが、きっとそれなりの年齢になったのだろう。
まだあの頃は若かった…と振り返れば、それは苦い思い出だ。
未来のことなど知りもせず、一生一緒だなんて、夢のような言葉を口にして。
そんな未来を描いていたからこそ、叶わなかった時に辛いのだ。
その痛みを知りもせず、別れなど来るとも知らずに愛し合った日々が痛々しく、堪らなく愛おしい。
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会いたいけど
会いたくない
行ったり来たりしてるよ
何気ない今日と 輝いた過去
元気なのか?
綺麗になったか?
今の僕はどうなのかな?
何でもない日々に 今口ずさんでる
≪3分30秒のタイムカプセル 歌詞より抜粋≫
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「会いたいけど会いたくない」という歌詞が、失恋の傷を抱えた複雑な心情を上手く表現している。
大切だった人は、心の中で当時の姿のまま輝いているものだ。
今も元気にしているのか、幸せなのか、好きな人はいるのか、結婚してはいるのか…。
気になることは山ほどあるだろう。
思い出のメロディーを口ずさみながら遠い日の彼女を思う時間は、どこまでもセンチメンタルだ。
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愛していた
愛されてた
当たり前だと思ってた
色褪せない日々が僕に笑うの
スゲェ笑ったり
胸が泣いたり
街の色、高さ変わっても
何でもない今日も彩ってくんだろう
≪3分30秒のタイムカプセル 歌詞より抜粋≫
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愛することが、愛されることが当たり前だったあの頃。
今の自分とは比べものにならないくらい煌めいていた自分を思い返し、幸せだった日々を思い出し、胸が痛む。
それでも、感傷に浸ることをやめられないのは、その日々が堪らなく大切な宝物だからだろう。
もう2度と戻らないからこそ、いつまでも浸っていたいのだ。
あの日に帰ったような気持ちになっている内は、少しだけ幸せな気分になれるのかもしれない。
そして、過去から力をもらって、少し痛む胸を抱えながら、また歩き出す。
そうやって人生を紡いでいくのだろう。
遊助の等身大の歌詞は、どこにでもいそうなカップルの、どこにでもありそうな失恋を歌っているからこそ、聴く人の心に響くのだ。
この冬は、失くしてしまった大切な思い出と戯れてみるのもいいかもしれない。
TEXT 岡野ケイ