シティポップブームの立役者 Suchmos
2018年には横浜アリーナでのワンマンライブ「Suchmos THE LIVE YOKOHAMA」を大成功させ、同じ年のNHK紅白歌合戦にも出場を果たすなど国民的な人気を誇るバンド、『Suchmos』。
紅白の大舞台で『VOLT-AGE』を披露した際にボーカルのYONCEが「臭くて汚ねぇライブハウスから来ました」と言った通り、キラキラしたオシャレサウンドで大人気の彼らのバックグラウンドには、全国各地のライブ会場でオーディエンスを揺らしまくった確かな演奏力と音楽性があります。
結成、そして独自のサウンドで大ヒット
2019年現在のメンバーは湘南・茅ヶ崎生まれのYONCE(Vo)、同郷の幼なじみのTAIKING(Gt)、HSU(Ba)、OK(Dr)、KCEE(DJ)、TAIHEI(Key)の6人。アメリカ人ジャズミュージシャンのルイ・アームストロングの愛称「サッチモ」がバンド名の由来であるというエピソードはSuchmosファンの間でも有名です。
2016年にCM曲として使用された『STAY TUNE』が話題を呼び、圧倒的な音楽性の高さから音楽ファンをすぐさま虜に。
続けて翌年に発売した2枚目のオリジナルアルバム『THE KIDS』が第59回日本レコード大賞最優秀アルバム賞を受賞するなど全国的にその名を轟かせ、ここ数年のトレンドである日本製のオシャレな音楽“シティポップ”ムーブメントにおいて最も重要視されるバンドとなりました。
爆発的な人気の上昇とともにファンも急増。
音楽ライブの会場としては超特大の横浜アリーナで開催されたワンマンライブもチケットはSOLD OUT。
音楽ファンからのみならず国民的な支持を得るモンスターバンドへと成長しました。
圧倒的キラーチューン、その後
『THE KIDS』は2010年代らしい都会サウンドの圧倒的な完成度を見せつけたアルバム。ロックやポップス、ジャズといった様々なジャンルのエッセンスを盛り込んだ11の収録曲は多様なジャンルの音楽ファンに衝撃を与えました。
当然彼らの新たなるキラーチューンを期待する声は高まり、その後の動向を誰もが注目していました。
そんな『STAY TUNE』以後のSuchmosを語る上で外せない一曲といえば、やはり2018年にシングルとして発売され、NHKの2018年度サッカーテーマソングに選ばれた『VOLT-AGE』でしょう。
シティポップの要素は鳴りを潜めており、彼らの中にあるスピリットをそのまま選手たちの闘志に投影させたような楽曲。
ギラギラ燃えるようなロックな一曲に仕上がっています。
大胆な方向転換を見せたこの曲はファンにも衝撃を与え、その新しいサウンドに戸惑いつつもじわじわと虜になっていく人が多かったようです。
最先端を走るSuchmosに続け!今聴いておくべきオススメ3曲
オシャレなシティポップサウンドでその名を轟かせたSuchmosの楽曲はその後、自らのルーツのひとつであるロックや、陶酔感を伴ったサイケデリックなサウンドへと舵を切っていきました。
その変化を知ることで彼らが今後日本の音楽シーンでどう勝負していくのか、というビジョンが見えてくるかもしれません。
今聴いておくべきSuchmos、これを聴けば「今」のSuchmosがわかる!そんな3曲を紹介します。
今なお輝くアンセム「MINT」
まずは大ヒットアルバム『THE KIDS』より『STAY TUNE』と並ぶSuchmosの代表曲である『MINT』。
シングルとしても発売され、非常に人気の高い一曲です。
YouTubeには横浜でのライブ映像が公開されています。
注目ポイントは歌詞に合わせ「コーラ」を掲げた会場のファンを見つけ、指をさして微笑むYONCEの姿。
ファンも、そしてSuchmos自身も大切にしている、お互いにとってのアンセムとなっている一曲です。
これが次世代のSuchmos「WATER」
最新アルバム『THE ANYMAL』に収録されている『WATER』はまさに今現在Suchmosが目指すビジョンを詰め込んだようなサウンドとなっています。
気だるい雰囲気のボーカル、リバーブのかかった陶酔感あふれるギター。
アコースティックな編成で構築されたこの曲は、今まで見てきたSuchmosとは明らかに違う雰囲気を持っています。
彼らが今やりたい音楽、それはアルバム全編を通して語られている通り、明確にサイケデリック・ロックの香りを受け継ぐものといえます。
メンバーが伝えたいサウンドの集大成「In The Zoo」
『THE ANYMAL』収録の『In The Zoo』。
こちらもまるで過去のSuchmosからの決別を静かに宣言するような徹底的なサイケデリックロック。
エレクトリックピアノやDJプレイによるサンプリング音源での演奏といった、デジタルな要素が極限まで排除されたサウンドとなっています。
聴きどころは、なんといっても終盤にかけての盛り上がり。
あえて一定のテンポを決めずにメンバー自らのグルーヴ感とテンポで進んでいく曲の構成となっており、序盤のスローなテンポでため込んだ感情を静かに爆発させるような終盤の力強さあふれる展開は、彼らのロックミュージックに対するリスペクトや闘志を反映しているかのようです。
完成されたサウンドも、彼らにとっては「通過点」
これまで劇的な変化を辿ってきたSuchmos。
多くの人が抱くSuchmosの姿からはかけ離れているように見えるかもしれません。
しかし彼らには、今現在の姿こそが俺たちだ、と言わんばかりの自信と強力なビジョンがあるように感じられます。
彼らの音楽に対する姿勢は、アルバム『THE ANYMAL』発売の際に謳われたキャッチフレーズからも感じられます。
「変わりつづける。変わらずにいるために。」
俺たち6人がSuchmosであり続けるためには、決して過去の成功をなぞることはしない。
やりたいことをやらなければ、それは俺たちの、Suchmosの音楽ではないのだから。そんなメッセージが読み取れる一文です。
彼らのマインドを知ることで、思い切った方向転換を遂げたサウンドにも自然と理由が見えてくるかもしれません。
そして、新たなサウンドを完成させたSuchmosにとって『THE ANYMAL』は終着点ではなく、ただの「通過点」。
現在進行形で進化を続けるSuchmos、次は一体どんな世界を見せてくれるのか。これからも目が離せません。
TEXT ヨギ イチロウ