南無阿弥陀仏、じゃないよ!
「南無阿部陀仏」というバンドをご存知だろうか。
さらっと流し読みをしてはいけない。「なむ“あべ”だぶつ」と読むのである。
リーダーの阿部(Ba)を中心に結成された、東京練馬を起点に活動するパンクバンドである・・・が、驚くべきことに彼らはなんと現役の高校生。
高校入学と同時に音楽を始めたという阿部を中心に、4人の男子高校生により結成された。
そんなフレッシュなキャリアが話題を呼び、現在人気沸騰中なのである。
これまでもジョージロックやTEENS ROCK FESTIVAL等、全国の軽音コンテストで名を知らしめてきた。
2019年8月には「未確認フェスティバル2019」K-ONステージにも出演。
12月には日本テレビ系『バズリズム02』の「あの人ランキング」においてMV『若者よ、耳を貸せ』が取り上げられ、なんと初登場第一位を獲得し、その破天荒な音楽性がお茶の間にも認知されるきっかけとなった。
自分達の音楽を「練馬発大混乱ロックンロール!!!略してネリマダイコンROCK!!!」と謳う彼ら。
正直よく分からないが、その勢いには屈服する。
初のアルバム「若者よ、耳を貸せ」
そんな若さゆえの勢いとエネルギーに満ちている彼らが、2020年1月1日に1st Ⅾijital EP『若者よ、耳を貸せ』をリリースする。
すでに各所で話題を集めており、期待が高まる彼らの初作品。
特に表題曲である『若者よ、耳を貸せ』は、インディーズ活動支援アプリ『eggs』にてデイリー&ウィークリー再生回数No.1を獲得した自信作だ。
11月に先行解禁されたMVにより期待は高まるばかり。
YouTubeのコメント欄を見ると、南無阿部陀仏と同じ高校生世代からの支持率は圧倒的だ。
「かっこいい」「勇気づけられる」「若くて熱くて最高」という称賛の言葉からは、南無阿部陀仏だからこそ彼らに伝えられたメッセージがあるのではと感じられる。
さて、タイトルチューン『若者よ、耳を貸せ』の歌詞はどんなものだろうか。
きっと「大人」にも響くはず
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見えない景色に飛び込むことは
意外と簡単な事で
最後はね、自分を信じるか信じないか
見えない景色に飛び込むことは
新たな一歩を踏み出せるのさ
なぁ、聞いてくれよ
僕、少し大人になったよ
≪若者よ、耳を貸せ 歌詞より抜粋≫
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アカペラから始まる楽曲は、どこか懐かしい草創期のパンクロックを思わせる。
私のようなアラサー世代の頭にもガツンと響く、熱い歌声だ。
この歌詞を見てふと、自分が高校生の頃に見ていた景色はどんなものだったろうと考える。
今思うとまったく大した景色では無いのだが、当時はそれがやたらと絶望的に見えていた気がする。
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なぁ、聞いてくれよ
何が怖いのか
なぁ、聞いてくれよ
大人っていうのは、どういうものか
≪若者よ、耳を貸せ 歌詞より抜粋≫
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10代特有の不安や恐怖、疑問、怒り。どんな大人も経験したはずなのに、何故そう思っていたのかはよく分からない。
というか、そんな感情に苛まれていたことさえあまり覚えていなかったりする。
それほどに刹那的な心だ。だからこそ、誰もが知る感情のはずなのに、当事者だけの尋常でない孤独感がある。
彼らには、それを忘れた者が大人に見えているのだろうか。
それとも、見えない景色へスマートに飛び込めるカッコいい存在と思ってくれているだろうか。
少し分からなくなってきた。何故なら、「大人というのは、どういうものか」を私は知らないのだ。
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不安が募るこの今で
必死に食らいつくので、精一杯
精一杯、精一杯、食らいつく
いま、羽ばたくんじゃないかな
見えない景色に飛び込むことは
意外と簡単な事で
最後はね、自分を信じるか信じないか
見えない景色に飛び込むことは
新たな一歩を踏み出せるのさ
なぁ、聞いてくれよ
僕、少し大人になったよ
≪若者よ、耳を貸せ 歌詞より抜粋≫
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様々な感情がぐちゃぐちゃと入り交じる若い心。
押し潰されそうになりながらも、懸命に生きようとしている。
おそらく、リアルタイムで青春を生きる世代には、強くたくましい応援歌に聴こえる。
対して、既にそれを乗り越えた大人達は、若き日の自分を思い出しハッとするのだ。
若い心だからこそ描けた正義や理想。大人になってしまうと忘れがちなものはたくさんある。
新しい出会いや発見、挑戦が連続する10代。彼らは自らそれに体当たりすることで成長し、新たな道が開けると確信できたのだろう。
少し大人になったという南無阿部陀仏。きっとこれから急速に大人の階段を上っていく。
一つ忠告するならば、階段は上り出すとあっという間だ。大切に噛み締めながら、一歩ずつ進んでほしい。
今後も発展を続けるであろう彼らは、一体何を見せてくれるだろうか。
4人の高校生がどんな大人になっていくのか、そっと見守りたい。
TEXT 島田たま子