悩むなんて辛気くさい
コレサワ:私、とことん病まないから。曲を聴いてくれた方から、メンヘラって言われることも結構ありますけど(笑)、私自身は悩んでるなんて辛気くさいって思っちゃうタイプなんですね。
だから、そんなにじめじめした歌詞は出てこないし、書きたいと思っても書けないかもしれない。だからどこか前向きになったり、辛いことにも感謝しちゃったりするんです。でも、どろっどろの歌詞とか書いてみたいですけどね(笑)。呪いみたいな歌、書いてみたい(一同笑)。
──はははは(笑)。自分の身に起こったいろんなことを糧として受け入れる……みたいな意識があるんでしょうか?
コレサワ:あぁ、時間を元に戻すことって出来ないじゃないですか。だから受け入れるしかないなっていう。そういうスタンスなんだと思う。
──あぁ、なるほど。半分、開きなおりに近い。
コレサワ:そうですね。結局、今まで生きて来て、失恋も含めて辛いこともいろいろあったから、今の自分が在ると思うと「なんかいいやん、ありがとう」って思うんです。もしこれが違う環境で生きてきていたら、今、音楽やっているかもわからないし。だから、今まで生きてきた中で受けてきたことに、全部ありがとうって思うんですよね。
理想の男性像?
──3曲目の「恋人失格」はセルフカバー。男性目線での歌詞ですが、これはどういう気持ちで書きました?コレサワ:願望ですね。自分の彼氏にはこういう態度でいて欲しいとか、こういうこと言って欲しいとか。特にお菓子食べてる時に食べ過ぎって言われるよりも、笑ってみていてくれる方がいいなとか。
──実際にこういう人が現れたら、本当に好きになりそう?
コレサワ:あぁ……そういうところって、友達の段階では見れないと思うから、付き合ってみないとわからないですよね(笑)。でもなんか……こう……肌に触れたらわかるというか……。
──あぁ、わかります。肌が触れることを想像できない人とは、いくら気が合っても恋愛対象にならないってパターンあります。あと、ご飯を一緒に食べたりするとわかるかも。
コレサワ:元々もってるパッションっていうか……空気感が合う人がいいな、と。すごく感覚的なんですけど(笑)。
恋心は生きている
──しかし、どうして、人間は恋愛に翻弄されるんでしょうね。頭ではわかっているけど、心がついていかない……みたいな状態が、多々ありますし。コレサワ:ありますよね。恋心って、自分で決められないじゃないですか。好きな人をいきなり嫌いになることなんて出来ないし。恋心も生きてるから。気持ちは生きてるんですよ。だからそれを人間がどうこう出来ることじゃないなと思ってますね。
──なるほどなぁ。自分とは別の生き物だから、自分でコントロール出来ない。それが恋心、か。
コレサワ:そう。だからやっかいだし、こんなに曲が出来ちゃうんだと思うんですよね。その恋心がいつか終わる日も来るし、逆に愛に変わる日も来るから。
──それを断ち切るのか、一緒に生きていくのかって選択して決めることで、前に進めるってことなんだろうね。
コレサワ:断ち切ったり、決断して前に進むってすごく強くないと出来ないと思うんです。だから、聞いてくれる人にとって勇気がわくような曲になったらいいなと思いますよね。
あと、いつの間にか忘れるじゃないですか、辛かった恋も。だからズーンと悲しむことも大事だと思う。そういう中で、次への決断の手助けになるような曲が、7曲入ってるのが、今回の『恋愛スクラップ』かな、と。楽曲もバリエーションに富んでいると思います。
「気持ち」を提供したい
──このアルバム聴いて、失恋するの、怖くないなっていうか。嫌なことじゃないなって思うことが出来たかもしれません。コレサワ:ははは(笑)。良かったです。例えば、最近、ちょっと恋愛から離れてて、失恋もしてないって人も結構いると思うんですね。そういう方が、センチメンタルな気持ちを求めるときもあるかもしれない。
傷つけたり、傷つけられたりをした事がない人や、恋愛したこと無い人もいると思う。そういう人達に、このアルバムで、センチメンタルな気持ちを少しでも提供出来るなら、音楽としていいことだな、幸せなことだな、と思います。
──センチメンタルって、すごく個人的な感情だと思うんです。生きて来た歴史によっても違うし、その時の環境やスタンスによって、センチメンタルを感じるものって、個人個人で本当に違ってくる。そういう個人的な感情を音楽で刺激したいと思う?
コレサワ:例えばコンビニでもどこでも「気持ち」は買えない。でも音楽は、楽しい気持ちとか、センチメンタルな気持ちとか、気持ちを得られるツールだと思っているんです。
例えば、センチメンタルな気持ちになったことが無くても、その音楽を聴いてセンチメンタルな気持ちになったりする。今回のアルバムで言うとセンチメンタルな気持ちを提供できてたらいいなと思います。
──なるほど。そっか、気持ちの共有じゃなくて、気持ちの提供、か。コレサワさんの今回のアルバム聴いて、共感の強要がないのが、すごく個人的には心地よくてフラットに聴くことが出来る作品で、素晴らしいなと思ったんです。
コレサワ:前は共感についてめっちゃ考えたんです。経験したことがある人が聴いた時に共感できる曲を……って思って作ってたんですけど、最近は経験したことが無い人も、経験した気になるような曲の方がいい曲なんじゃないかって思ってきていて。
今回は、失恋したことが無い人でも、失恋したような気持ちになるような曲になったらいいなと思いながら作った部分はありましたね。
──へぇ。それはあまねく人にもっと聴いてもらうためには……って気持ちもあった?
コレサワ:そうですね。コレサワをもっとたくさん人に聴いて欲しいってのはありましたね。今は音楽が好きな人とか、耳が早い人は、コレサワを知って聴いてくれているけど、お茶の間まで広まって欲しいなと思うから。
──2020年3月からスタートするツアーも決まってますね。
コレサワ:バンドで回るツアーなので、今からすごく楽しみで。はっちゃけたポップな内容にしたいなと思ってるんです。弾き語りとは違ったコレサワのライブをたくさんの人に楽しんで欲しいなと思ってます。
TEXT 伊藤亜希
PHOTO 愛香