実は恐ろしい背景が?「乙女解剖」とは
2019年1月に、ボーカロイド界の前線を走り続けていると言っても過言ではないボカロP・DECO*27が投稿した初音ミクオリジナル曲の『乙女解剖』。
漫画のようなモノクロのMVはサビで美麗なカラーイラストに切り替わり、その色鮮やかな演出は聴くだけではなく観ても惹きつけられるものになっています。
相手からの愛情は冷めてしまったけれど、それでもまだ愛されたいと願う女の子の歌にも見えますが、MVに一瞬写る遺体袋のような袋や崩れていく骨、立ち入り禁止のテープなどの事件現場を想像させる光景や終始女の子以外の人影がほとんど見えなかったり不穏な雰囲気を漂わせています。
ラストにはサビで描かれていた鬼灯と共に、女の子が目を閉じた状態で遺体袋のようなものに入れられ、誰かの手がファスナーを閉め曲が終わります。
『乙女解剖』というそのままの意味で考えたら恐ろしいタイトルや、歌詞には普通の恋愛を歌った歌であれば出てこないであろう「狂気」「楽になれるかな」などの言葉に不穏なMVも合わさって意味深なストーリーを感じさせます。
囁かれている解釈 「殺人鬼に恋をした自殺願望のある女の子」
MVに登場する骨、遺体袋、事件現場と『乙女解剖』というタイトルから考えられた解釈がこちら。
歌詞の中で「本当の名前で呼び合って」とあることから本名を知らずに会っている関係である、と2人の関係性を想像しています。
ネットで知り合って会うようになったものの相手は殺人鬼で女の子はターゲットとして接してたというミステリーやホラーでありそうな設定です。
実際に会って女の子は殺人鬼を好きになってしまいます。
しかしその好意は女の子のことをターゲットとしか見ていない殺人鬼からしたらただ鬱陶しいだけで、女の子の思いは叶うことがありません。
そのことに薄々女の子も気付いていたのか、それとも好きな相手が殺人鬼と気付いていてか「いきたくない」と言えば死んで楽になることができたと後悔しているようにサビで見えます。
「いきたくない」=「生きたくない」そう好意を寄せていた殺人鬼に言ったのか、女の子は殺人鬼に殺され解体、もとい「解剖」されたのではないか、というのがこの解釈です。
囁かれている解釈 「ループしている女の子」
事件現場や自殺する寸前を思わせる描写や遺体袋を閉める手が女の子のもののようにも見えることなどから浮上したのがこの解釈。
一番の間奏部分での立ち入り禁止のテープが貼られた事件現場のようなシーンはよく見たらチョーク・アウトラインが引かれています。
その中には車に轢かれたような形、浴槽、電車のホームらしき場所に落ちたヒール、最後は恐らく川の中にラインが引かれているのが見えます。
そしてMVの中では車の通りが多い道路、風呂場、電車のホーム、河原と全て間奏部分でその場所に女の子が行っています。
最後のサビではその説を裏づけ、更に自殺であると解釈できる描写が入ります。
「いきたくない」から浴槽を貯めた上で手首を切るためか袖を捲くろうとしているところ、川の中に足を踏み入れようとしているところ、トラックが目前に迫っているところ、駅のホーム下に落ちようとしているところと続き、そのあとにその女の子を見つめる骸骨のカットが一瞬入ります。
川の中に進んでいこうとする女の子の水面に骸骨が写っている、ということはその骸骨は女の子自身であり、かつて今までのループで自殺してきた女の子なのではないでしょうか?
女の子には好きな相手がいた。もしかしたら「君が別の人を好きになる夢を見た」と歌っているため付き合っていたのかもしれません。
しかし歌詞を見る限り上手くはいっておらず、付き合っている相手からしたら遊びだったのでしょう。
「あの夜」に相手の本心を知ってしまい自殺をします。
しかし相手のことが諦めきれずにループしてなんとか相手の気を引こうとするものの上手くいかない女の子は4回以上の時を繰り返します。
何度ループしても届かない思いに最後「いきたくない」そう思った女の子は自殺を選び、今までループを繰り返してきた女の子自身の手によって遺体袋のファスナーが閉められるシーンで幕を閉じます。
「乙女解剖」の製作者DECO*27
DECO*27は今まで『モザイクロール』『弱虫モンブラン』『愛言葉』『毒占欲』『ヒバナ』など多数の再生数ミリオンを達成した楽曲を生み出したボカロPです。
今まで作ってきたボカロ曲はほとんどニコニコ動画でのランキングに入ったり、YouTubeで「あなたへのおすすめ」でピックアップされることも珍しくないため、ボカロファンでDECO*27を聞いたことがない、という人を探す方が難しいかもしれません。
男女の純粋な恋愛、というより複雑だったり拗らせていたりとどこか歪んだ生々しい恋愛関係を歌った楽曲が多く、今回の『乙女解剖』も同じように思いが届かず苦しんでいる女の子の歌になっています。
「乙女解剖」オススメの歌ってみたを紹介
陰も感じる『乙女解剖』はその魅力で歌ってみたも多く投稿されています。そんな歌ってみたの中でも特にオススメしたいものを厳選しました。今回はニコニコ動画の頃から人気を誇っていた歌い手たちによる歌ってみたです。その人気を裏付けるほどの歌唱力を持っているのでぜひ聴いてみてください。
りぶ
爽やかな好青年、といった印象の歌声が特徴的なりぶ。歌唱力も凄まじく、ニコニコ動画では広く名を知られた歌い手です。癖がなく、変に力を入れているわけでもないのに平坦ではない歌い方は、りぶならではの色気も感じられる歌ってみたになっています。
96猫
女性でありながらも男性のようなかっこいい歌声を使う「両声類」としてニコニコ動画でブレイクした96猫。
低音の安定した歌声と高音の綺麗な歌声や唐突に入れられる女性らしい声が『乙女解剖』の複雑な恋愛関係や不安定な心情を表しているようにも思えます。
男性でも聴きやすく、ドキッとしたい、そんな歌ってみたが聴きたい人にオススメです。
luz
甘くも色気を感じる歌声で、ユニット「Royal Scandal」のボーカルでもあるluz。
その特徴的な歌声と歌い方は『乙女解剖』で作り出される生々しい関係だったり物語性といういものを助長しています。
ときに囁くような歌い方も織り交ぜ、女性ならば虜になるのではないでしょうか?
『乙女解剖』の持つあやしい雰囲気をもっと味わいたいのならばこの歌ってみたがオススメです。
「乙女解剖」貴方はどう見る?
頭に残る中毒性と様々な解釈の余地で聴いた人を虜にする『乙女解剖』。
今回紹介した解釈以外にも勿論様々な解釈がされています。
その中でしっくりきた解釈があればそのことを考えながらMVと共に聴きかえしてみたり、無ければ自分でも解釈を考えながら聴いてみたりしても面白いかもしれません。
自分にぴったりな解釈を発見したら次はいろんな歌ってみたを聴いて回ってみるのもオススメです。
もしかしたら新しい考え方が生まれたり、自分の好きな歌声や歌い方をする歌い手を見つけることができるかもしれませんよ。
TEXT Noah