理想と現実の狭間で
表題曲の『素晴らしき嘘』が現在放送中のドラマ「知らなくていいコト」の主題歌に決まり、まさにノリに乗っているflumpool。
そんな彼らから、この冬をとびっきり熱くする、どこまでもまっすぐで爽やかな応援歌が届きました。
TVアニメ『あひるの空』のOPテーマ『ネバーマインド』です。
『あひるの空』の主人公、車谷空(くるまたにそら)は、バスケへの情熱はあるものの、身長が低く、バスケには不向きな体でした。
そんな空が、九頭龍高校に入学するところから物語は始まります。
通称クズ高と呼ばれ、バスケ部と名前が付きながらも実質機能停止状態の部活でもがく空が、クズ高のバスケ部を再生していく姿は、まさに青春ストーリー。
そんな少年たちを爽やかな歌声で後押しする『ネバーマインド』。さっそく歌詞に込められた意味を読み解いていきましょう。
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鏡に背中向けて 歩むほどに遠ざかる夢よ
まっすぐ君と向き合いたい
できない自分へと 「ネバーマインド」
≪ネバーマインド 歌詞より抜粋≫
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歌い出しの、「鏡に背中向けて歩む」という歌詞が印象的です。
鏡は自分の姿を映すもの。その鏡がなりたい理想の自分を映し出しているとするならば、背中を向けて歩むほどに夢から遠ざかるのは無理のないことです。
理想に背を向けて、なりたい自分と正反対の方にばかり転んでしまう情けない自分。
そんな自分に辟易する姿が目に浮かびます。
傷だらけになって追いかける夢
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流れ作業で分別てゆく夢
(向き?不向き?いわば論外?)
声もなく消えてった本音
(ため息すら出ない)
他人のせいにしたって終われない
目の前に切り立った 今
≪ネバーマインド 歌詞より抜粋≫
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やりたいことを向き、不向きで選り分けていく世界は、まさに流れ作業です。
目指している夢が自分にとって不向きどころか論外であることに気づき、思わずこぼれるため息。
できないことを誰かのせいにして諦めることは簡単です。
しかし、それでも諦めきれない夢があります。
ならば、最後に決断を下すのは自分しかいません。
「他人のせいにしたって終われない」という歌詞からは、“負けてたまるか!”そんな心の叫びが聞こえてくるようです。
僅かな可能性を信じる強さ
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目の前に切り立った 今
「越えたい」と心が叫んでる
できない理由を探すなら 誰でもできるさ
壁に刻み込んだ落書きと 「ネバーマインド」
いま 明日へと弾め
≪ネバーマインド 歌詞より抜粋≫
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“目の前にこの上ない壁が立ちはだかっても、超えがたい崖があっても、それを飛び越えたいという強い意志があればできないことなんてない。”
サビの歌詞には、そんな強い意志を感じます。
できない理由を探して諦めることはいつでもできます。
それよりも弱さに向き合って乗り越えることで、その先には見たこともない新しい自分の覚醒が待っているのではないでしょうか
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不甲斐ない今日が無意味に捨てられる
(結果至上主義の社会)
ゼロに潜在んだ無限の伸びしろ
(忍ばせてる期待)
自分というストーリー 終わらせない
≪ネバーマインド 歌詞より抜粋≫
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現実は厳しいもので、結果ばかりが求められます。
そんな中でも「ゼロに潜在んだ無限ののびしろ」を信じる姿勢が眩しいですね。
1番の自分の夢を不向きだからという理由で遠ざけていた姿勢から一変、目の前にある可能性を逃すまいとする暑苦しいまでの情熱と、僅かな可能性を信じて突き進む強さを感じます。
向き合うことで見出す本当の強さ
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けなされて苦笑うだけの
「らしさ」なんて誇りたくはない
目をそむけ理想並べても 遠ざかってく現実
長い暗闇の先 灯る光信じて
散り散りになった 約束の切れ端
さぁ 繋ぎあわせて
≪ネバーマインド 歌詞より抜粋≫
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“理想の自分ばかり目指して夢から遠ざかるより、今は光の見えない現実でも、その先にある希望を信じて進む方がいい。”
それはまさに、クズ高と呼ばれ、すでに部活として機能していなかったバスケ部の中で奮闘する空の姿と重なります。
低身長というハンデにも負けず、バスケへの情熱を燃やし続ける空が、仲間たちと歩んでいく青春ストーリー。
それこそがまさに「ネバーマインド」の世界なのでしょう。
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鏡の前の君よ 無理に笑顔作らなくていい
その素顔と向き合うとき 瞳に宿る熱
≪ネバーマインド 歌詞より抜粋≫
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鏡に背を向けていた自分が「素顔と向き合う時」に初めて、本当の自分を取り戻すことができるのかもしれません。
取り繕うのをやめて、素直に自分の弱さと向き合えるからこそ、夢への1歩を踏み出せるのです。
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目の前に切り立った 今
「超えたい」と心が叫んでる
できない理由に埋もれてる 微かな可能性
あがき走ったその先 まだ知らない自分と出逢う
壁に刻み込んだ落書きと 「ネバーマインド」
いま 明日へと弾め
≪ネバーマインド 歌詞より抜粋≫
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「できない」と決めつけていた言い訳の中に、ほんの僅かな可能性が隠れていることに気づくことができたら、人は変わることができます。
今まで何度も諦めて、背を向けてきた夢に、ようやく正面からぶつかっていく姿は、たとえ傷だらけでも美しいものです。
清々しい青春の物語にぴったりな、flumpoolからのエール。ぜひ、アニメ映像と一緒に聴いて欲しい楽曲です。
TEXT 岡野ケイ