「失敗」から始まる物語
松雪泰子主演のドラマ『ミス・ジコチョー〜天才・天ノ教授の捜査ファイル〜』は、「失敗学」を研究する天才工学者・天ノ真奈子が「事故調査委員会」に招かれ、「失敗学」を駆使して事故の真相を明らかにしていく物語です。
ドラマの主題歌を担当する事になった【ALEXANDROS】の川上洋平は、この「失敗学」をテーマにしたストーリーの面白さに魅了されたとインタビュー記事で語っています。
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Wake up
Saturday in a park
踊り明かしたLast Night
どうして
こんな所で
眠り落ちていたみたい
≪あまりにも素敵な夜だから 歌詞より抜粋≫
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そして書き下ろしたこの曲も、一つの失敗体験から始まります。
金曜の夜にオールナイトで遊んだ翌朝、公園のベンチで目が覚めた…この状況、身に覚えがある方もいらっしゃいますよね。
「Shakedown 1994」の意味とは?
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Shakedown
1994
お道化疲れてHad a fight
どうして?
私はただ
笑っていたいだけなのに
≪あまりにも素敵な夜だから 歌詞より抜粋≫
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「Shakedown 1994」というフレーズは、1990年代のアメリカを代表するバンドThe Smashing Pumpkins(以下スマパン)のヒット曲『1979』から着想を得て書かれているそうです。
『1979』が収録されているスマパンのアルバム『メロンコリーそして終りのない悲しみ』の歌詞カードでは「shakedown 1979」は「1979年の徹底捜索」と訳されています。
向こう見ずなティーンエイジャーの姿を叙情的に描いたこの曲の内容からすると「やりたい事を全部やってみた1979年」というイメージでしょうか。
そう考えれば、『あまりにも素敵な夜だから』で描かれている、飲みすぎて公園で寝たり、つい喧嘩をしてしまう若者の姿にも「Shakedown 1994」という言葉がピッタリくるような気がします。
ところで川上洋平はなぜ年代を「1994」にしたのでしょうか?
もしかすると『1979』を書いたスマパンのビリー・コーガンが1979年当時は12歳なので、1982年生まれの川上洋平自身が12歳だった1994年を選んだのかも知れません。
スマパンは川上洋平に大きな影響を与えた洋楽アーティストの一つだったのでしょう。
川上洋平が伝えたい想い
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"Time's up"
9-5pm
ぬるま湯みたいなHigh Five
どうした?
私はまだ
こんなとこで終われない
≪あまりにも素敵な夜だから 歌詞より抜粋≫
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自由に生きて来た若者にも、ついに就職して9時から5時の退屈な日々を送る日がやって来ました。
そんな若者の心の中には、“本当の自分はこれじゃない”という想いがくすぶっているものではないでしょうか。
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瞬きほどの命だから
怯えてるのつまんなくなって
過ち恥じる暇あるなら
No, No, No, Don't waste your time
ありのままで足掻いて
≪あまりにも素敵な夜だから 歌詞より抜粋≫
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人の一生は、生まれる前の暗闇と死後の暗闇の間に光る一瞬の輝きに過ぎないのかも知れません。
だからもし心に燃える情熱があるのなら、失敗を恐れて人生の貴重な時間を無駄にしないで欲しいと、川上洋平は伝えようとしているような気がします。
川上洋平ならではの説得力
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間違って/間違って/間違って重ねた
あたり散らした傷は
間違った/間違った/間違ったところで
傷のまま変わらないけど
≪あまりにも素敵な夜だから 歌詞より抜粋≫
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自分が望む道を歩む時、間違った道を選ぶ事もあるでしょう。そして、その失敗から受けた傷が完全に消える事はないかも知れません。
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あまりにも素敵な夜だから
このまま、踊り果てるよ
≪あまりにも素敵な夜だから 歌詞より抜粋≫
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そんな時は全て忘れて素敵な音楽で一晩中踊り明かそう。明日になればきっと違う道が拓けて来るだろう。
ファンキーなリズムに乗せたこの曲の歌詞は、デビュー当時既に20代後半、試行錯誤を繰り返した遅咲きの川上洋平だからこそ描けた世界観なのでしょう。
TEXT 岡倉綾子
[Alexandros]ー東日本ではアレキ、西日本ではドロス。 まるでマクドとマック論争のようにファンの間で愛称が二分される。 2010年インディーズレーベルRX-RECORDSから1stアルバム「Where‘s My Potato?」でデビュー。 リリース後はロックシーンやメディアに大きな衝撃を与え、瞬く間にその名···