魅惑の歌謡ロックを体現する圧倒的センス
9mm Parabellum Bulletは、ギター・ボーカルの菅原卓郎、ギター滝善充、ベース中村和彦、ドラムかみじょうちひろの4人組で2004年に結成されたロックバンドです。
結成後はインディーズでの活動を通して着々と実力を伸ばしていき、口コミを中心にじわじわと人気を広げていきました。
そして2007年にシングル『Discommunication e.p.』の発売とともにメジャーデビュー。
そのハードかつ独自の世界観を持ったサウンドに魅了された音楽ファンを中心に、一躍話題のバンドとして注目を集めました。
2009年にはワンマンライブを武道館で開催するほどの人気バンドに成長し、現在の邦ロックを語る上で欠かせないバンドのひとつとなりました。
その後も独自のスタイルを貫く姿勢と共に精力的に活動を続け、2020年現在デビュー13周年を迎えてもなお、大型ロックフェスの定番アーティストとして第一線を走り続けています。
楽曲の魅力は、なんといってもメンバーそれぞれの個性を詰め込んだハードなサウンドメイキング。
ロックだけど冷たい。音像の中に確かなスピリットを感じつつも、鋭い印象を与える「サムライ」のようなサウンドが特徴です。
その日本らしいバンドサウンドは、ナンバーガール、ASIAN KUNG-FU GENERATIONといったバンドと並んで、邦ロック的サウンドスタイルを形作り、現在の音楽シーンにも多大な影響を与えています。
また超絶テクニックを持つギター・滝善充を中心に構成されたアレンジも聴きどころの一つ。
一切揺るぎのないマイナー調の楽曲に、歌謡曲のエッセンスやロシアンテイストを盛り込んだギターアレンジは「ダサかっこいい」とファンからも評価されています。
パンクやメタルといったジャンルにほのかなルーツを感じる独自の雰囲気は、「歌謡ロック」や「歌謡メタル」と呼ばれているそうです。
そんな9mmサウンドの独自性は様々なミュージシャンにも注目され、2010年発売のシングル『命ノゼンマイ』のカップリングとして発表された山本リンダの大ヒット曲『どうにもとまらない』のカバーも大変話題を呼びました。
歌謡曲×ロックの一大コラボレーションは山本リンダ本人も絶賛。
2017年開催のロックフェス『JAPAN JAM2017』では、9mmのステージに山本リンダが出演するスペシャルセッションが実現。
世代を超えたコラボレーションに会場は大盛り上がりを見せました。
大胆なアレンジが楽しめる、オススメの3曲
同世代のバンドと一線を画す独自のサウンドが人気の9mm Parabellum Bullet。ヒット曲から隠れた名曲まで、オススメの3曲を紹介します。
まさに歌謡ロックを体現する1曲、「ハートに火をつけて」
2012年にシングルとして発売された『ハートに火をつけて』。
リズムの裏拍を強調したスカの要素を取り入れつつ、どこか泥臭く、歌謡のエッセンスを大胆に取り入れた楽曲です。
スピード感あふれるロックナンバーを得意とする9mm。
こちらの曲も思わず踊り出してしまいそうなノリのいい4つ打ちが印象的で、フェスやライブ等では必ず盛り上がる一曲としてセットリストの定番となっています。
歪みが抑えられ、フレーズを丁寧になぞることに徹しているギターサウンドも魅力の一つ。
まるで歌っているようなソロのメロディには、ギターで思わず口ずさんでしまうフレーズを奏でてきた、かつての歌謡曲やポップスを思い出しますね。
9mmに染まる90秒、アニメ主題歌にもなった「インフェルノ」
2016年にシングルが発売された『インフェルノ』。
アニメ『ベルセルク』の主題歌としてタイアップを果たした楽曲でもあります。
驚きなのはその曲の長さ。アニメのオープニングに合わせ、総演奏時間はなんと90秒。
短い時間の中に9mmらしいハードさと熱いメッセージが存分に詰め込まれた一曲となっています。
滝善充によるイントロのタッピングギターで幕を開けるこの曲には、彼らがもう一つのルーツに掲げるメタルなどの影響が感じられます。
「動」と「静」を表現するアレンジに注目。「Answer And Answer」
2013年にシングルとして発売された『Answer And Answer』。
怒涛の勢いで攻めまくるスタイルが多い9mmの楽曲ですが、こちらは一転して「静」の感覚を伴い、空間を感じさせるような抑揚が印象的なアレンジを楽しむことができます。
聴きどころはギターの音色を短く抑えるブリッジミュートの効いたBメロ部分。
瞬発的な爆発力だけでなく、長年の活動で培った彼ら4人のリズムとグルーブを堪能することができます。
邦楽ロックを牽引する4人の今後に期待
独自のサウンドと秀逸なアレンジセンスで人気を集める9mm Parabellum Bullet。
破壊的なライブパフォーマンスや勢いのあるビートの裏に隠れているのは、彼ら4人が持つ確かなルーツとそれを表現してみせるテクニック。
一貫したテーマ性の中で変幻自在な世界観を見せてくれるそのサウンドは、現在も邦楽ロックに大きな影響を与え続けています。
精力的に活動を続ける彼らの新たなステージに目が離せませんね。
TEXT ヨギ イチロウ
2004年3月横浜にて結成。 2枚のミニアルバムをインディーズレーベルからリリースした後、2007年Debut Disc『Discommunication e.p.』でメジャーデビュー。 パンク・メタル・エモ・ハードコア・J-POPなどあらゆるジャンルを呑み込んだ独特な音楽性と、爆発的なライブパフォーマンスで 日本ロック···