響く女性の情念
JUJUの『この夜を止めてよ』は、その歌詞やメロディから、女性の情念が痛いほど伝わってくる曲。
歌詞はEXILEの『Ti Amo』を作詞した松尾潔、曲はMISIAの『Everything』を作曲した松本敏明と、いずれも実力のある大物が手掛けている。
菅野美穂主演のドラマ「ギルティ 悪魔と契約した女」の主題歌として作られたこの曲。
冤罪の罪を晴らすために復讐の鬼となった主人公が、刑事と恋に落ちるというストーリーと重なる歌詞になっている。
この人のことを、好きになってはいけない。
頭ではそう分かっていても、それでも惹かれてしまうことがある。
幸せな未来を望めない恋愛、その渦中の女性の願いが、タイトルにもなっている「この夜を止めて」というセリフには込められている。
この夜を止めてよ
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「愛してる」っていうあなたの言葉は 「さよなら」よりも哀しい
これ以上 何も言わなくていい だから この夜を止めてよ
≪この夜を止めてよ 歌詞より抜粋≫
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先のない恋愛のなかで、「愛してる」という言葉は「さよなら」よりも哀しく響く。
くるしい。もうやめてほしい。いますぐこの夜を止めて。
そう思ってしまうほど、この歌の女性の憂いは、我慢の限界にきているのだ。
女性の悲痛な叫びが「この夜を止めて」という言葉のひとつめの意味。
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おなじ色の夢みていたいのに ちがう道に離れてく
出会いのときを選べないのなら せめて この夜を止めてよ
≪この夜を止めてよ 歌詞より抜粋≫
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ずっとあなたと一緒にいたいのに、という思いを「同じ色の夢みていたいのに」という印象的なフレーズで表現している。
"夢"という単語の持つ、いつかは醒めてしまうというイメージが、儚い恋愛の顛末をよく表している。
出会うのがもう少し早かったら…。
そう思っても、出会いのときは選べるものではない。
ならば、せめてこの夜でふたりの時が止まってほしい。
女性の切なくも儚い望みが、「この夜を止めて」のもうひとつの意味。
痛みが伝わるJUJUの歌声
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あまい過去の記憶なんて わたしは惜しくない
かたちのある未来なんか しがみつきたくはない
≪この夜を止めてよ 歌詞より抜粋≫
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過去は惜しくない。未来にも、しがみつきたくない。
この歌詞の部分がよりいっそう、「この夜で止まってほしい」という「今」を限定する結果になっている。
わかれたくない、もっとずっと一緒にいたい…。
JUJUの切ない歌声から、女性の哀しい叫びがきこえてくるようだ。
曲全体から、相手のことを愛している気持ちが、痛いほどに伝わってくる。
印象的なMV
▲この夜を止めてよ / MV
この曲のミュージックビデオは、かなり印象的だ。
恋人に電話で別れを告げられた女性が地下通路に降りると、そこにはふたりの思い出の写真がどこまでも壁に貼られている。
ひとつひとつを歩きながら眺める女性。しあわせだったふたりが閉じ込められた画面を、ひたすらに見つめる。
最後、女性は耐えられなくなり、走り出してしまう。
恋人との別れは、深い悲しみをともなう。
その悲しみの淵でもがく女性の情念を、丹念に描き出した名曲である
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TEXT 緑の瞳