君のように美しく咲き誇る花の姿
----------------思い出す度に温もりで包み込んでくれる君の声。
思い出した 声の温もりに
振り返れば 息をするように
花は咲いた 夜明け前 空は急いだ
≪Sakura 歌詞より抜粋≫
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夜明け前、主人公である「僕」は大切な人の姿を花に重ねて、まるで君が息をするかのように生き生きと咲いているようだと感じていた。
”君を亡くした”という現実を受け止め切れない僕。こんな孤独で辛い日々なら意味なく過ぎ去って欲しい、と思うような気持ちに反して、大切な人を失った世界の時の流れは驚く程にゆっくりと流れるのだろう。
まるで、この中で長く苦しんでいろというかのように。
しかし、そんな自分の心の世界など無視して、現実の時間の流れはいつも通り一定に過ぎ去っていってしまうのだ。
長い夜に1人苦しむ僕であったが、こんな日でも構わず夜空は足早に朝へと向かっていく。
『Sakura』の冒頭では、現実と空想の中で矛盾する残酷な時の流れが見事に描かれている。
時の流れと進む僕の想い
----------------あれほど綺麗に咲き誇っていた花も、やがて散りゆく季節になってしまった。
So let me high 花びらが舞って 麗しく
新たな季節へ ここから踏み出した
Don't say goodbye 光を繋いで 会いに行く
だから確かめるよ
≪Sakura 歌詞より抜粋≫
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時が経っても、空高く舞う花びらの姿は、やはり君のように麗しく見えた。
それでも、「新たな季節へここから踏み出した」という歌詞からは、時の流れと共に主人公の気持ちも前へ進んでいることが読み取れるだろう。
しかし、”進む”ということは、君がいない世界を1人で生きるということではない。
「Don’t say goodbye」とあるように、さよならを言って新たな道を生きるではなく、「光を繋いで会いに行く」のだ。
それは、君の存在を僕の中から消すのではなく、その記憶と共に歩んで行くということ。
そして、君といた日々と変わらぬ自分を持ち続けていれば、きっとまた君に会うことが出来るということなのだろう。
主人公はそう思えたからこそ、君のために、そして自分のために、あの頃と同じような自分で前を向いて進んで行こうと思えたのだ。
最大の悲しみの先にあるそれぞれの未来
----------------大切な人を失うということは、誰もが経験せざるを得ない人生最大の悲しみである。
例えば かけがえない ただ一人が いるのなら
傷つく事は何も怖くないさ 生きていく
なぜだろう? この世界は 光と影が寄り添って
願い 夢 孤独まで 巡り会わせ
いつか 僕らが世界を変えていくなら
またどこかで生まれていく
与えられた現在を 託された未来へ
そして 明日も何かを探し続けて
何度だって脱ぎ捨てる
始まりを告げて いつまでも いつまでも この心に響け
≪Sakura 歌詞より抜粋≫
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君がいない未来に何の意味があるというのか、という気持ちで前に進むことを恐れてしまうこともあるかもしれない。
しかし、「例えばかけがえのないただ一人がいるのなら 傷つくことは何もないさ 生きていく」という歌詞のように、君という存在が自分にとって「かけがえのない人」だという事実があり続ける限り、傷つく必要はないのだ。
残酷にも、この世界は全てが「巡り合わせ」で出来ている。
願いや夢が実現するのも、孤独に苦しむのも、突然訪れる運命のイタズラによって人生はがらっと変わってしまうのだ。
そんな世界を今の私たちは受け止めていくしかない。
ただ、「いつか僕らが世界を変えていくなら」単なる巡り合わせではなく、必然的に出会うことが出来るはずだ。
だからこそ、「与えられたいま」を生きるのではなく、「託された未来へ」生きることを僕は誓った。
ただ時の経過を待つのではなく、君との望みと共に前へ進める強さを持った主人公には、もう何も怖いものはないだろう。
このように、嵐『Sakura』は、誰もが経験する人生の悲しみを、時の流れと共に新たな未来へと導いてくれる1曲なのである。
TEXT もりしま