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あらすじ
物語は、裕里の姉の未咲が、亡くなるところから始まります。
裕里は葬儀の場で、未咲の娘の鮎美から未咲宛ての同窓会の案内と、未咲が鮎美に残した最後の手紙の存在を告げられます。
未咲の死を知らせるために行った同窓会で、学校のヒロインであり生徒会長だった姉と勘違いされてしまう裕里。
そしてその場で、初恋の相手である鏡史郎と再会することになります。
二人は連絡先を交換し連絡を取り合っていましたが、裕里の夫がそのやりとりを発見してしまい、浮気と勘違いしてスマホを水没させてしまいます。
鏡史郎との連絡手段がなくなってしまった裕里は、未咲のふりをして、手紙を書き続けました。
ところが、その内のひとつの手紙が鮎美に届いてしまったことで、鮎美は鏡史郎と未咲、そして裕里の学生時代の淡い初恋の思い出を辿りだすことになります。
ひょんなことから彼らを繋いだ手紙は、未咲の死の真相、そして過去と現在、心に蓋をしてきたそれぞれの初恋の想いを時空を超えて動かしていきます。
豪華で個性的なキャストが彩る
『四月物語』以来およそ21年ぶりに岩井監督とタッグを組む松たか子が演じるのは、主人公の裕里です。
また裕里の高校生時代と裕里の娘・颯香を演じるのは、昨年『天気の子』のヒロインの声を務めて話題となった森七菜。
裕里の夫を無骨に演じるのは庵野秀明監督。
裕里の息子・瑛斗役として、Dragon Ash降谷建志と女優のMEGUMIの長男・降谷凪が起用され、本作で俳優デビュー。
学校のヒロイン的存在な裕里の姉・遠野未咲の高校生時代と、未咲の娘である鮎美を演じるのは広瀬すず。
福山雅治は、情けなくも一途な小説家・乙坂鏡史郎役で、その高校生時代を演じるのは神木隆之介です。
また本作は『Love Letter』のアンサー映画であることを表すように中山美穂と豊川悦司が再び共演します。
フォークシンガーの小室等やムーンライダーズのボーカルである鈴木慶一など、配役の個性に目を奪われます。
なかでも、広瀬すずと森七菜が魅せる感情の出し方や表情が、作品に大きな奥行きを与えています。二人が雨の中で傘を差して立っている姿は、一枚の絵のようでありとても美しいです。
その姿をフィルム写真に収めたシーンがありますが、監督の自らの撮影となっています。
大抜擢の森七菜から目が離せない
ベテラン陣たちの中でも、瑞々しさを放つのは2016年にデビューした森七菜です。
大ヒットを記録した新海誠監督のアニメーション映画『天気の子』でヒロインの座をオーディションを勝ち抜き、一躍有名になりました。
『天気の子』と本作品の企画・プロデュースを務めた川村元気プロデューサーのインタビューでは「140人の中からダントツで彼女がいい」と岩井監督も絶賛し、本作品のオーディションも満場一致で決定したそうです。
松たか子演じる主人公・裕里の高校生時代と娘・颯香の二役を担った森は、松たかこが出演したドラマなどをチェックし、しゃべり方や特徴的な仕草を取り入れるなどの入念な役作りをしたそうです。
彼女が生まれ持った才能は本作の中でも存分に光り輝き、ナチュラルな演技でアドリブも行うなど、鮮烈な印象を残しています。
令和の名女優の風格も感じさせながら、あどけなくコロコロと表情を変える森七菜に注目してみてくださいね。
小林武史の美しすぎる旋律の調べ
宮崎県の風景や、雨のシーン、手紙を書く時間すべてに小林武史が奏でるピアノがBGMとして使用されており、クラシック性の高い音楽が印象に残ります。
そしてアルバムの最後に収録されているのが、本作品に出演している森七菜が歌う主題歌『カエルノウタ』です。
森七菜の歌手デビューとなる「カエルノウタ」
映画のために監督が書き下ろし、小林武史作曲を担当するという最強の二人が創り上げた『カエルノウタ』。
歌詞の中でも、映画とリンクする内容で鏡史郎に片思いをしながら幸せを願う裕里の視点のようにも感じます。
MVでは、水中でゆらゆらする3匹の白い真ん丸の蛙たちと、白いワンピースで映画で見られることのない表情の森七菜。泳ぐ姿はまるで人魚姫のようです。
彼女の透明感のあるしなやかな歌声が映画のエンドロールで流れ、『カエルノウタ』の世界観にすっと引き込まれます。
▷カエルノウタ
純愛こそが、ファンタジー
令和のこの時代、SNSがあれば簡単に連絡が取れてしまいます。手紙というアナログなツールでの恋愛は想像がつかない方も多いのではないでしょうか?
映画『ラストレター』は誰かを永遠に想い続けることの美しさを感じさせてくれます。観終えた時、大切な初恋の人を思い出すかもしれません。
TEXT 棗キョーコ