恋の定義はなんですか?
----------------
あー、恋の定義がわかんない
まずスキって基準もわかんない
要は、恋してるときが恋らしい
客観? 主観? エビデンスプリーズ!
≪チューリングラブ feat. Sou 歌詞より抜粋≫
----------------
この曲に登場するのは、様々な実験をしてきた理系の男女。物事には根拠を必要とし、正確な結果を求めてしまう2人ですが、とある現象の証明には少し苦戦しているようです。
その現象というのが「恋」。
みんな簡単に「恋をした!」とは言うけれど、その基準や根拠は果たして何なのでしょうか。
恋をした際に生まれる「スキ」という得体の知れない感情さえも基準がないのだから、上手く説明することも明確に判断することも出来ないのです。
この2人と同じような心境を、私たちは初恋の時に抱いていたのではないでしょうか。
今までに経験したことのない感情を持ったからといって、これが恋だと思って良いのか、周囲に「その感情が恋だ」と言われて初めて理解した人もいるでしょう。
しかし、歌詞の中に「客観?主観?エビデンスプリーズ!」とあるように、恋をしている状態と判断するのは誰か、証拠や根拠はどこにあるのかは全く分からないのです。
2人で導く”この気持ちの求め方”
----------------
「3次元(立体)における 2点 AB 間の距離を求めよ。」
的な感じだと思ってたのに
座標も公式も見当たらないし
参考資料にも載っていないから
君と生み出してみせたいじゃん
3次元(世界)におけるこの気持ちの求め方
≪チューリングラブ feat. Sou 歌詞より抜粋≫
----------------
「3次元(立体)における2点のAB間の距離を求めよ。」という文章を見たことがある人は多いのではないでしょうか。
これは、数学で頻繁に出題される定番の問題で、定理に基づいて証明していけば解答を導きだすことができます。
2人は「恋」もこの問題と同じようにして証明できるのではないかと考えますが「恋」には2人の距離を示す座標も、一般的な法則を示す公式も見当たらないのです。
さらには参考資料も存在しません。
そんな煮詰まった2人がたどり着いた一つの答えが、自分たちで実験して証明すること。
「君と生み出して見せたいじゃん」と歌詞から読み取れるのは、2人の関係性を示したい!というお互いの思い。
それこそが既に「恋」をしている状態であるのかもしれないですね。
方程式のない2人の最適解とは
----------------
チューリングラブ 見つめあったったってキリないメロウ
ワットイズラブ いま 123 で証そうか
言葉で生み出すクエスチョン(クエスチョン!)
ハートで高鳴るアンサー(アンサー!)
測ったって不確定性 ぼくらの BPM
チューリングラブ 宙に舞ったってその因果も
フォーリンラブ いまは XYZ まで解りそうだ
確かめさせてピタゴラス(ピタゴラス!)
確かにさせてリーマン(リーマン!)
予測済み可変性 いま触れてみる
さあ証明しよう(証明しよう)間違いのないように
≪チューリングラブ feat. Sou 歌詞より抜粋≫
----------------
計算を行う自動機械の「チューリングマシン」というものがあるように「チューリングラブ」も、愛を計算する形式的なモデルのようなもの。
しかし、実際には「恋」も「愛」も、根拠や公式のない立証不可なものですよね。
「BPM」というのは一般的には音楽におけるテンポを表すものですが、ここでは人間の心拍数を指しており、胸がドキドキすることが「恋」の1つの指標だとしています。
ですが、数値的な基準があるわけではないので測っても不確定であると歌っているのです。
それでも、2人は有名な数学者の名前を挙げ、さらなる可能性を証明しようと試みますが、2人の関係性も分からぬままこの曲は終わってしまいます。
結局、最適な解答を導き出すことは難しかったのでしょう。
しかし、これこそが「チューリングラブ」で歌いたいことではないでしょうか。
「恋」というものは目に見えない、言葉にも表すことのできない複雑な現象。
だからこそ、唯一無二の正解は存在せず、十人十色の答えができて当然なのです。
そういったこともまた、恋愛の難しさであり面白さなのでしょう。
常によく分からない感情に惑わされ、悩みがつきないからこそ恋愛は、公式や模範解答を求めたくなりますが、正解がないからこそ2人だけの最適な解答を見つけられると考えることも出来ます。
ナナヲアカリの「チューリングラブ」は、そんな計算では解けない非科学的な人間の感情を歌った、新感覚の実験的ラブソングなのでしょう。
TEXT もりしま