Nulbarichのアンビバレントな魅力
「Nulbarichってどんな音楽?」と聞かれたら、「オシャレな人が聴く音楽」と答える人は多いのではないでしょうか。
ブラックミュージックをベースにした彼らのグルーヴィなポップミュージックは、流行に敏感な若者が集う場所にピッタリの雰囲気ですよね。
英語の中に日本語がセンスよくちりばめられた歌詞もまた「Nulbarich=オシャレ」というイメージを強くしているのかも知れません。
JQの軽やかなボーカルにのせた英語歌詞で始まる『Look Up』も、オシャレな空気が溢れ出すような曲ですが、その歌詞をよく聴いてみればとてもストレートな励ましの言葉ということに気がつくでしょう。
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Baby baby baby tell me why you look so down
Do you do you do you need someone to dry your eyes
この先に待つのはdark or bright
まず思うがままにJust give it a try
≪Look Up 歌詞より抜粋≫
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このフレーズも
「なぜそんなに落ち込んでいるの?君の涙を乾かす誰かが必要かい?この先は闇か光か分からないけど、まずは自由にやってみて」
という意味ですよね。
Nulbarichというバンド名には「Null(何もない)」けど「Rich(満たされている)」というアンビバレント(相反する)な意味が込められているそうです。
最先端のサウンドと普遍的な歌詞の融合もまた、Nulbarichのアンビバレントな魅力の一つなのではないでしょうか。
「2ND GALAXY」から見た夜明け
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色褪せてくmemory
振り返らずwe go
Celebrate today because
≪Look Up 歌詞より抜粋≫
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「思い出は色褪せて行くから過去を振り向かずに今日を祝福しよう」と暗闇の中を模索する人へ向けてのNulbarichの励ましの言葉は続きます。
そして次のフレーズがこの曲の中で最もドラマティックなシーンかも知れません。
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It's a new dawn
A new day
A new chance for something
≪Look Up 歌詞より抜粋≫
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「それは新しい夜明け、新しい1日、新たなチャンス」
今この瞬間から始まる未来への希望を歌ったこの歌詞からは、暗闇から太陽が地球を照らし出し、海や山を照らし、そして都会の高層ビルに朝日が登って行く風景が見えてくるようです。
この曲が収められたミニアルバムの『2ND GALAXY』(もう一つの宇宙)というタイトルを象徴するような壮大な歌詞ですよね。
オシャレは人生の必須アイテム
「Look Up」には「見上げる」「元気を出す」「良くなる」といった意味があります。
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Look up
意味なんてno need
Look up
手を伸ばして掴むnew day
≪Look Up 歌詞より抜粋≫
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「元気を出して、意味なんか考えずに、元気を出して、新しい日を自力で掴もう」と歌うこの歌詞は、「オシャレ」とは繋がらない力強い言葉のようにも思えます。
それを洗練された楽曲の「オシャレ」というフィルターにかける事で、重力から解き放たれた言葉たちが空気のように自然と聴く人の心に入って行く、それがNulbarichの音楽の大きな魅力でしょう。
『Look Up』は俳優の清原翔を始め、ファッション関係者が出演する都会の若者の日常を描いたMVが公開されて話題になりました。
オシャレ過ぎるこのMVを再生して「自分とは縁遠い世界」と感じる方も多いかも知れませんが、例えば新しい靴を買う、髪型を変える、それだけでもじゅうぶん「オシャレ」ですよね。
そしてオシャレをすれば不思議と元気が出て前向きになれる。
それが「オシャレ」が持つ力。
聴くだけで自分がオシャレ人間になったような気分にしてくれるNulbarichの音楽もまた同じ力を持っています。
その目に見えないエモーショナルな力こそ「Null(何もない)」けど「Rich(満たされている)」なのではないでしょうか。
TEXT 岡倉綾子