「僕」の後悔の始まり
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本能が狂い始める 追い詰められたハツカネズミ
今、絶望の淵に立って 踏切へと飛び出した
≪少女レイ 歌詞より抜粋≫
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ハツカネズミは、ペットとして飼われるだけでなく実験などでも使われるネズミです。
これは何か実験のようなひどいことをしていた暗喩ではないでしょうか。
「実験」に耐えられなくなったネズミは絶望し、生きたいという本能に逆らって踏み切りに飛び出します。
MVの一枚絵と照らし合わせて考えると、ハツカネズミは半透明の少女であり、絶望して自ら命を絶ったのでしょう。
自ら命を絶った少女に何が起きたのか
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本性が暴れ始める 九月のスタート 告げるチャイム
次の標的に置かれた花瓶 仕掛けたのは僕だった
そう 君が悪いんだよ 僕だけを見ててよ
そう 君の苦しみ 助けが欲しいだろ
≪少女レイ 歌詞より抜粋≫
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サビから2人はお揃いのキーホルダーをつけるほど仲が良かったと考えることが出来ますが、歌詞で「僕」と表記されている少女は、自ら命を絶った少女「君」に恋心を抱いていました。
それは歌詞のところどころに出てくる「口吻」や「愛し合えたら」という言葉から予想することが出来ます。
秘めようとした恋心でしたが9月になってその思いが悪い方向に爆発してしまいます。独占欲から好きな相手をいじめの標的にしたのです。
クラスのいじめの標的にすればきっと唯一の親友である自分に助けを求め、そして自分に依存してくれる。そう思ったのでしょう。
しかしその作戦は失敗。それどころか「君」を自殺に追い込む結果となってしまいます。
届かなくなった少女の願い
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フラッシュバック・蝉の声・二度とは帰らぬ君
永遠に千切れてく お揃いのキーホルダー
夏が消し去った 白い肌の少女に
哀しい程 とり憑かれて仕舞いたい
透明な君は 僕を指差してた―。
≪少女レイ 歌詞より抜粋≫
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夏が消し去ったということは、夏に自殺してしまったのでしょう。もしかしたら自ら命を絶つ瞬間を見てしまったのかもしれません。
そのときの蝉の声と君の姿が頭によぎり、いくら嘆いても帰ってこない現実を受け入れられません。
お揃いのキーホルダーが千切れたというのは、恐らく2人の絆を表しており、軽い気持ちではじめたいじめが死別にまで発展し、どうにもできないほどばらばらになってしまったことを表しているのではないでしょうか。
自分が自殺するきっかけを作ってしまった「君」に憑りつかれたい。そう願っていたら君が半透明の姿で自分を指差している。
果たしてそれは願いが生んだ幻覚なのか、本当に見えた「君」の幽霊「少女レイ」なのかも分からないまま終わります。
この楽曲を一文で言い表すなら「夏を舞台に歪んだ愛が生んだ負の連鎖」が似合います。
独りよがりな独占欲で好きな相手を傷つけ、あまつさえ自殺に追い込んでしまう。
「僕」の自業自得といえばそれまでかもしれませんが、同性だからこそ言いにくい思いが堰を切ったように溢れ出してしまったのでしょう。
夏らしい風が吹き抜けるような爽やかさがありながらも、どろどろとした歌詞のアンバランスさが世界観をより一層惹きたてている『少女レイ』。
爽やかで暗いものの湿っぽくない、今までのボカロ曲ではあまり無かった独特の雰囲気を持った曲でもあります。
これを機にもう一度聴いてみてはいかがでしょうか?
TEXT Noah