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名ボカロ曲「パンダヒーロー」は「ボカロ」を歌った曲?その歌詞から導き出されるものに迫る!

大人気アーティスト『米津玄師』が、ボカロP『ハチ』として生んだ名曲『パンダヒーロー』。その楽曲の歌詞がもつ意味に迫った時、新たに見えてきた「パンダヒーロー」を紹介します。

米津玄師が作り上げた「パンダヒーロー」がもつ、言葉の意味とは

▲ハチ MV「パンダヒーロー」HACHI / Panda Hero

2011年にニコニコ動画で公開され、約30時間で再生回数がスピード殿堂入りを果たした驚愕の名曲『パンダヒーロー』。

制作者は大人気アーティスト「米津玄師」。

ボカロP「ハチ」の名にて投稿された楽曲として、今も多くの人々を魅了する楽曲となっています。

今回は『パンダヒーロー』の歌詞がもつ意味に迫ります。

まずは、その楽曲が持つ世界観を見てみましょう。

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廃材にパイプ 錆びた車輪 銘々に狂った 絵画の市
黄色いダーツ盤に 注射の針と ホームベースに 縫糸の手
≪パンダヒーロー 歌詞より抜粋≫
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冒頭から紡がれるのは退廃的な雰囲気をうかがわせる言葉たち。

「狂った絵画の市」「黄色いダーツ盤」「注射の針」などと、無法地帯の絵図が浮かぶような言葉なども並べられています。

米津玄師特有の不協和音じみた歪なメロディーで奏でられる曲調も、この楽曲の世界観をより強めます。

どうやら歌の舞台は、私達が知る現実とは逸脱した混沌な世界のようです。

パンダヒーローは、ダークでアンチなヒーロー?


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お困りならばあいつを呼べ 送電塔が囲むグラウンド
白黒曖昧な正義のヒーロー 左手には金属バット
ノイズだけ吐いて 犬ラジオ フラフラにネオン バニーガール
相場はオピウムの種一粒 奥の方に呑まれていく
≪パンダヒーロー 歌詞より抜粋≫
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混沌世界に現れる「白黒曖昧な正義のヒーロー」こと『パンダヒーロー』。

「パンダ」という名前は、この「白黒曖昧」という部分から来ているのでしょう。

ネット上では、続く歌詞に「オピウム」という有名な麻薬の一種である「アヘン」を示す言葉がある事から、白は薬を打って白くなった肌、黒は薬のせいえ眠れなくなりできたクマ、といった容姿を指しているのではないか、と考察されています。

実際、MV内にも白い肌に目元が黒いパンダヒーローと思われる人物が描かれています。

しかし、本当に容姿のみを現すものなのでしょうか。

「白黒曖昧」という言葉に続くのは「正義」という言葉。

つまり「白黒曖昧」がこの「正義」そのものを示している言葉とも捉えられないでしょうか。

世の中には「ダークヒーロー」「アンチヒーロー」と呼ばれるヒーロー達がいます。

彼らは通常の正義のヒーローとは逸脱した面を持ち、ヒーローでありながら時として「正義」とは言えない行動を起こす、味方=白なのか、敵=黒なのか、曖昧な存在です。

さらにもう一つ、注目をしたい歌詞があります。


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パッパッパラッパパパラパ 狙い 眩む 三遊間
パッパッパラッパパパラパ ここで 登場 ピンチランナー
パッパッパラッパパパラパ つまり 二点 ビハインド
パッパッパラッパパパラパ 上手く行かない感情制限
≪パンダヒーロー 歌詞より抜粋≫
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注目点は、数々の野球用語達。

『パンダヒーロー』の歌詞では、野球の用語が多く使用されています。

パンダヒーローの武器も野球には欠かせない「バット」です。

それを踏まえこのサビを考察すると、「三遊間」で逃げてる間に「パンダヒーロー」がやってきた。

「二点ビバインド」では接続詞の「つまり」がついていることから、ヒーローが現れた事で逆に敗けそうになってる状態にも見えます。

実にダークでアンチヒーローらしい光景です。

そして最後の「上手く行かない感情制限」。

もし本当に彼が「麻薬を使用してるヒーロー」ならば、己の感情が制限できない理由も頷けます。

サビ頭の不可思議な歌詞も、こんがらがった頭の中を示している言葉なのかもしれませんね。

「パンダヒーロー」が示す、この歌が歌の根底にあるもの

荒廃した世界観で活躍するパンダヒーローを歌った歌。

しかし一つだけ、その世界観に溶け込むには少々違和感のある歌詞が存在しています。


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カニバリズムと言葉だけ 歌うアンドロイドと遊んでる
きっと嫌われてんだ 我がヒーロー
きっと望まれてんだ ほらヒーロー
≪パンダヒーロー 歌詞より抜粋≫
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「歌うアンドロイド」という言葉から思い浮かぶものといえば、やはり機械の歌手である「ボーカロイド」でしょう。

もう少し細かく見てみると「と遊んでる」という言葉も付属されており、つまりこの歌詞の中には「ボカロと遊んでる誰か」がいる事になります。

「ボカロと遊ぶ人」と言えば「ボカロP」でしょうか。

しかし歌詞の中に出てきている人物は「ヒーロー」のみ。

この楽曲で「ヒーロー」と言えば、パンダヒーローです。


すると、パンダヒーローとは、ボカロPの事を指しているように見えてきませんか。

実は『パンダヒーロー』が公開された2011年は、ボカロ曲の小説化などの新しい展開が次々とされるようになった年でもあります。

しかし同時に、それまであった「ボカロ」をテーマとして扱っていた作風の楽曲が減り、代わりに「音楽」らしい楽曲が界隈の大半を占めていくように。

歌詞のように、やってきた新時代に嫌われてしまった楽曲と望まれている楽曲、その二つに分かれてしまった状態と言えましょう。

表面上は「音楽」らしい歌の『パンダヒーロー』ですが、歌詞の根底には「ボカロ」の存在が見えます。

まるで新しい作風と、それまでの作風がハイブリッドされたかのような構造です。

そしてそれは、言い変えれば白黒つかずの「曖昧な」楽曲とも言えます。

正しく『パンダヒーロー』と呼ぶべき、白黒曖昧な時代のハイブリットボカロ曲でしょう。


TEXT 勝哉エイミカ

米津玄師 (ヨネヅケンシ) ハチ名義でボカロシーンを席巻し、2012年本名の米津玄師としての活動を開始。 その独特なサウンドメイクをした楽曲の強さと、リアルな言葉の数々は圧倒的で、今の音楽シーンにはない新鮮さを鮮烈に刻み話題に。 2015年リリースの3rdアルバム『Bremen』ではオリコ···

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