「乙女解剖」とは何を指しているのか
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乙女解剖であそぼうよ
ドキドキしたいじゃんか誰だって
恥をしたい 痛いくらいが良いんだって知った
あの夜から
≪乙女解剖 歌詞より抜粋≫
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「乙女解剖」で遊びたいと思われる少女は、あの夜に痛いのがちょうどいいということを知りました。
ではその「乙女解剖」とは何なのでしょうか?そのままの意味で考えると乙女を解剖すると事件性を感じますが、その意味で捉えるには軽率にも思えます。
ドキドキできるということを考えると恋愛関係の可能性もでてきますよね。
恋をしていた少女は、あの夜に予想もしていなかったことが起こり、恋愛は痛いくらいがちょうどいいということを知ります。
ここでの痛いは、肉体的ではなく精神的な痛みなのではないでしょうか。
彼氏だと思って付き合っていた相手が浮気していることを知ってしまい傷つき痛みを覚えます。
しかしその傷がありながらも関係を断つことは出来ず「私はそれでもこの人のことが好きだから」とずるずると関係を続けてしまいます。
相手が自分を裏切っていることを知りながらも付き合い続けているため、心に負った傷は癒えません。
裏切りも終わることはなく、知ってしまう度に更に傷ついていきます。
ばらばらに裂かれるような心の痛みを解剖に例え、心に傷を負いながらも続けている恋愛を「乙女解剖」と言っているのではないでしょうか。
一方通行の思いと仮面同士の関係
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こんばんは、今平気かな?
特に言いたいこともないんだけど
もうあれやこれや浮かぶ「いいな」
君が居なくちゃどれでもないや
仮面同士でイチャついてら
≪乙女解剖 歌詞より抜粋≫
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MVと合わせてみると、少女の思いがほぼ一方通行になっているということを窺うことができます。
「今平気かな?」と少女は受話器を握り話していますが、用件は受話器を握ることなく、ただ独り言のように喋っています。
この描写は、少女自身が自分の伝えたいことは届かないということを既に察しているということではないでしょうか。
話は聞いてもらえるものの、肝心の内容は聞き流される。だから受話器を握ることはなく「言いたいことも無いんだけど」と自嘲気味に続けます。
大好きな相手としてみたいことがあるのに、その願いは叶わず一人でしてみるもののつまらいという思いがあるようです。
「仮面同士」は匿名を仮面に例え、お互い本名を知らない匿名同士=仮面同士の付き合いと言っているのではないでしょうか。
この説を裏付ける表現が後半にでてきます。
「いきたくない」に隠れた心情とは
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乙女解剖であそぼうよ
本当の名前でほら呼び合って
「いきたくない」 そう言えばいいんだった
楽になれるかな
≪乙女解剖 歌詞より抜粋≫
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先に考察した「仮面同士」=匿名同士という説は、ここで濃厚になります。
本当の名前で呼び合ってということは、お互い本当の名前で呼び合うような関係ではなかったのではないでしょうか。
ネットで知り合い実際に会った少女は、相手のことが好きになります。
恐らく相手は遊びだったのか、最初こそは好き同士だったものの直ぐに冷めてしまったのか、少女から距離をとろうとそっけなく接します。ですが少女が諦めることはありませんでした。
2人とも本名は、教えていたのかもしれません。
しかし本当の名前で呼び合いたいと願う少女でしたが、相手が少女の名前を呼ぶことはありませんでした。
そして少女は「いきたくない」と言えばよかったんだと悟ります。
「いきたくない」がひらがななのが気になりますよね。この歌詞は2回でてきますが、1回目と2回目で「いきたくない」の意味が違うのではないでしょうか?
1回目の「いきたくない」の前のフレーズは「この好きから逃げたいな」とあります。
好きから逃げたいということは、相手に抱く恋心が自分自身を苦しめていることに嫌気がさしていたのかもしれません。
相手に会っても自分が苦しくなるだけだから、もう好きじゃなくなりたい。
会いに「行きたくない」ということではないでしょうか。
2回目の前のフレーズは「確かめよう 期待外れ最高潮だった」となっています。
まだ振り向いてくれるかもしれないという淡い期待から、ずるずると関係を続けていたものの、その期待も裏切られてしまい少女は絶望します。
僅かな望みも絶たれた少女は、生きる意味も見失い、楽になりたい「生きたくない」と思ったのではないでしょうか。
数々の名曲を作り、ボカロファンの間で知らない人は居ないであろうほどの知名度を誇るボカロP、DECO*27による『乙女解剖』。
キャッチーなメロディーと歌詞、曲を彩る美麗なMVは、今でも多くの人を魅了し続けています。
一度見て聴いただけでは考察が難しいこの楽曲。
この考察を見て確かにそうかもしれないと思った人やそうでない人も聴きかえしてみてはいかがでしょうか。
TEXT Noah