「Still...」のタイトルに迫る
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「いつか…」君が言った 忘れそうなその言葉を思い出していた
道の上で季節を呼ぶ 風が止まる
そして君の声で我に返る いつもの暮らしは続いている
何もかもが輝いてたあの日から
≪Still... 歌詞より抜粋≫
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春風のように爽やかなイントロと、切ない歌詞で幕を開けるこの曲は、嵐が2007年9月5日にリリースしたシングル『Happiness』のカップリング曲である『Still...』です。
この曲は、ファンによる人気投票でセットリストが決まる「アラフェス」で、カップリング部門にて第1位を獲得しました。
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扉を閉ざしたら 消えてしまいそうなことばかりだ
素直になれなくて去って行った儚い毎日
≪Still... 歌詞より抜粋≫
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ファンの中でも、名曲として根強い人気のある『Still...』は、疾走感のある曲調が心地よく、旅立ちや別れのつらさを歌いながらも、どこか前向きな気持ちにさせてくれます。
また『Still...』というタイトルはとてもシンプルですよね。
しかし「Still」という単語には「まだ」以外にも様々な意味が存在します。
別れを憂う想いの複雑さを「Still」の意味と共に紐解いていきましょう。
“未だ”の「Still...」
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たぶんあの時僕らは歩き出したんだ 互いに違う道を
いつかあの想いが輝き放つ時まで
≪Still... 歌詞より抜粋≫
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『Still...』は旅立ち、別れを経験した「僕」の目線で進んでいきます。
「あの時」という言葉から、別れはついさっき起こった出来事ではなく、気付いたら遠く離れてしまっていたような、戻ることのできない過去の出来事なのでしょう。
夢に向かってガムシャラに走ってる時に、ふと後ろを振り返ると「君」がいなくなっていた。そんな切なさが滲み出ているように感じます。
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ずっと隠していた秘密だって 君だけには伝えて来たんだ
どんな時も僕の全て たぶんまだ…
騒がしい街並 すれ違っていく名も知らない人
みんなそう大切な誰かがいて胸を焦がしてる
≪Still... 歌詞より抜粋≫
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大切な人との別れを歌っている歌詞の中で、唯一このフレーズが「僕」のネガティヴな思いを吐き出しています。
「たぶんまだ・・・」に続く言葉が、歌にならないまま消えていくのは「僕」がつらい思いや寂しい思いを飲み込んで前を向こうとしている現れかもしれません。
“なお”の「Still...」
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抱えた物の多さに潰れそうなその時には 思い出して
ずっと繋いできた その手は嘘じゃないから
戻れるはずもない日が愛おしいよ でも明日も僕達を待っている
何処へだってまだ行ける
≪Still... 歌詞より抜粋≫
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「僕」が大切な「君」の存在で前を向けたように「君」も「僕」を思い出して前をむいて欲しい。
この思いは「愛」や「好き」といった言葉を伴っていなくても、最大限のラブソングであるように感じます。
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君は君 夢 でっかく描いて
僕はここから成功を願ってる
「待ってるだけじゃ明日はないから
動いた ここじゃ始まらないから」
≪Still... 歌詞より抜粋≫
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恋愛を歌った曲ではなくても、大切な「君」に向けて「愛」を贈る。普遍的な愛を歌った曲であることが、多くのファンに愛される理由なのでしょう。
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先の見えない暗い道路も
それが例え迂回路でも
いまは少し二人とも
つらい表情 しまっておこう
これは別れではない 出逢いたちとのまた新たな始まり
ただ 僕はなおあなたに逢いたい
また…
いつか笑ってまた再会 そう絶対
≪Still... 歌詞より抜粋≫
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「まだ」という言葉が、ここでは「また」に変わっています。未来を見つめて「君」なしで歩いて行こうと決意した思いと、“それでもなお”「君」に会いたいという思い。
どちらも抱えたまま前向きに進んでいくという気持ちが伺えます。
“思い出の一枚”の「Still...」
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たぶんあの時僕らは歩き出したんだ 互いに違う道を
いつか二人会った意味が分かる時まで
車輪が回り出したら 旅は始まってしまうから
もうはぐれないように 過去をそっと抱きしめる
≪Still... 歌詞より抜粋≫
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もう戻れない過去のことを、悔やんだり思い出したりしながら、それでも「僕」は「旅」をしていきます。
人間らしい葛藤が描かれながら、聴き終えたときには清々しいような気持ちにもなることができるのではないでしょうか。
「僕」が歩いていく旅先で心細くなったときにふと思い出す「君」の存在は、「僕」にとって、大切にしまっているスチール写真(still pistures)のようなものなのかもしれません。
卒業、別れ、旅立ち、出会い…
春はきっと、多くの人にとって、旅の始まりとなる季節だと思います。
『Still...』は春風にも似た爽やかなメロディで、多くの人に前を向くための「愛」をくれる名曲です。
TEXT DĀ