「緋」ってどんな色?キーワードが巧みに隠された歌詞
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引き金を引いた途端立ち現わる白く空虚な時よ
掻き乱せ目眩ませ煙に巻け 果て無き闇の洗礼
重たい敵意込められた弾がほら緋く通ずる前に
掻い潜れ飛び違う弾を避け 道無き道を駆けて
≪永遠の不在証明 歌詞より抜粋≫
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こんな一節で始まるのが2020年に大望の復活を遂げた伝説のバンド、東京事変の新曲『永遠の不在証明』です。
同年公開予定の映画『名探偵コナン 緋色の弾丸』の主題歌にも抜擢され、テレビやラジオで耳にする機会も少なくありませんね。
作詞を担当した椎名林檎が紡ぐのは、映画のテーマに合わせたクールでハードボイルドな歌詞の世界。
映画のタイトルに繋がる「弾」「緋(あか)く」といったキーワードを見事に歌詞の中に落とし込む手腕はとても鮮やかです。
「緋」とはどのような色なのでしょうか。実はスカーレットのような鮮やかな赤を指す言葉だそうです。
美しくも危険な雰囲気を漂わせる色彩表現は、楽曲のオトナっぽい魅力を後押ししていますね。
言葉は時に危険な武器になり得る?
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追い付きたい突き止めたい その真相最高機密
さあ隠し通せよ一層実は全部真っ黒だろうけど
嘘を吐く方選び台本書き続けるか釈明しようか
加害者にはいつでも誰でもなれる仮令考えず共
御座形な言葉も凶器となる 果敢無き人の尊厳
≪永遠の不在証明 歌詞より抜粋≫
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次の一節はこのように続きます。
「最高機密」が実は「真っ黒」という、いかにも『名探偵コナン』らしい雰囲気の言葉で楽曲を盛り上げていきます。
「嘘を吐く方選び台本書き続ける」という表現は、自らの保身のために重大な真実を隠し通し続けるようなずる賢い人を描写したものでしょうか。
続く一節では「加害者には誰でもなれる」と歌われています。
真実から目を背け、それを隠そうと嘘をつけばあなたも立派な加害者になってしまう。言葉が持つ危うさ、というテーマを見事に描き切っていますね。
現代人に重いテーマを投げかける!
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そう
世界平和をきっと皆願っている待ち望んでいる
白か黒か謎か宇宙の仕組みは未だ解明されない
今沢山の生命が又出会っては活かし合っている
≪永遠の不在証明 歌詞より抜粋≫
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楽曲が盛り上がる終盤にかけて、こんな言葉が歌われます。
ここでは「世界平和」という壮大なキーワードを持ち出して、聴き手の注意力をぐっと引きつけています。歌詞にもある通り、世界中の誰しもが考え、問題意識を持っているが故でしょう。
未だに世界をどう動かしていけばいいのか、人類はその答えにたどり着くことはできていません。
それは世界情勢を見ても、あるいは身の回りの個人的なやりとりを見ても、人間という生物がこれから一体どこへ向かうのかは想像もつかないでしょう。
そんな人々を繋ぐのは「言葉」です。
嘘を吐きあって騙し合うも、真実を共有しあって助け合うも、全てはいち個人の「言葉」に委ねられています。
SNSに少し目をやれば、励ましや称賛の言葉とともに罵倒などの攻撃的な言葉も目に飛び込んできます。このままではいけないと、そんな思いを密かに込めているようにも感じられるでしょう。
世界をつないでいく「言葉」の始まりは、あなたの身の回りで行われています。
時には悪い気が起きてしまうこともあるかもしれません。
そんな時にも自分なりの正義を持って「真実」を貫けるような誠実な人間でいることが、やがて「平和」へとつながっていく。そんな大きなメッセージが歌詞に込められているのかもしれませんね。
TEXT ヨギ イチロウ