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大人気ボカロ曲シリーズ、一旦の終幕!「敗北の少年」が綴る物語とは。

一つの世界を軸に壮大な物語を展開する楽曲シリーズを制作したボカロP「Kemu」。シリーズの一旦の終幕を告げる為に生み出された楽曲『敗北の少年』に詰められた物語に迫った時、新しいタイトルの解釈が見えてきました。歌詞の意味を徹底解剖します!

「敗北の少年」は「夢に敗北」した少年

疾走感と中毒性あふれるバンドサウンドの楽曲を生み出す事で、爆発的人気を持つボカロP「Kemu」。

彼の人気曲の一つである『敗北の少年』は、彼を中心に結成されたサークル「Kemu Voxx」から生み出された壮大な世界観を持った楽曲シリーズの、一旦の終演を告げる楽曲です。

はたして、幕おろしを務めた楽曲『敗北の少年』にはどんな物語が詰め込まれているのか。

その物語を考察してみましょう。




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ぶつかって 逃げ込んで
僕はいつしか ここに立ってた
誰もが憧れる ヒーローに
なりたくて でもなれなくて
これぐらいじゃ 届かないこと
分かっていたのに
≪敗北の少年 歌詞より抜粋≫
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楽曲内の一人称が「僕」である事から、この楽曲そのものが1人の少年の視点で綴られている事がわかります。この「僕」がタイトルの『敗北の少年』なのでしょう。

続く歌詞では、そんな彼の現状と思われる歌詞が綴られています。

どうやら少年には「誰もが憧れるヒーロー」になりたいという夢があったようですが、それを叶えられなかったようです。

出だしの「ぶつかって逃げ込んで」とは、その夢に破れた様を描いているように感じます。

「いつしかここに立っていた」というのは、いつの間にか夢に「敗北」し、気が付いたら自分が思っていたものと違う形になってしまっていた、という事なのでしょう。

その反面、彼自身は「これぐらいじゃ届かないこと」を「分かっていた」とも歌っています。

つまり彼は、自分の夢が叶えられるものではない事を理解していたということです。

それでも夢を追いかける事を選んだ結果が、この「敗北」なのでしょう。

そんな『敗北の少年』の前にある奇跡が起きます。

その奇跡とはなんなのか。続く歌詞を見てみましょう。

現れた「奇跡」に少年が返した言葉とは


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耳鳴りが こだまして
僕に 奇跡が問いかけるんだ
「君の夢 憧れたヒーローに
今すぐ させてあげよう」
≪敗北の少年 歌詞より抜粋≫
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まるでなんでも叶えられる神様のような言葉で、少年に問いかけてくる「奇跡」。

その正体は、Kemu Voxxの楽曲全シリーズに共通して出てくるキャラクター「マキ」だと思われます。

ピンク色の髪をした彼女は、シリーズ内のMVに度々登場しており、今回の『敗北の少年』のMVでも登場しています。

マキはKemu Voxxの世界において重要なキャラクターであり、これまでの楽曲の主役達の願いを叶えてきました。

楽曲で起きる事件のほとんどが、彼女の力によるものである程です。

この楽曲でもマキは、少年の夢を叶えてあげようとしています。

しかしそんな彼女に少年が返した言葉は、次のような歌詞でした。


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飴みたいに 差し伸べられたって
嬉しくないんだ
≪敗北の少年 歌詞より抜粋≫
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これは今までの楽曲の主役達にはなかった反応です。

マキの心情は語られてはいませんが、きっと驚いた事でしょう。

なぜ少年は、マキの申し出を断ったのでしょうか。

その答えを探る為にも次は物語の盛り上がりどころ、サビに注目してみましょう。

「敗北の少年」は敗北から「這い上がる」少年の物語

『敗北の少年』のサビの歌詞は毎回違った内容を歌っていますが、1つだけ、共通して登場するフレーズがあります。


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こんなよるに意味があるなら
僕らは 地を這う
≪敗北の少年 歌詞より抜粋≫
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「こんな夜」とは、少年が「夢」に敗北している今の事を指しているのだと思われます。

「夢」とは本来、夜の眠り中で見るもの。しかし間違えて夢から覚めてしまえば、そこにあるのは暗い夜に包まれた現実のみ。

『敗北の少年』は「夢」に敗北した少年なので「憧れ」という幻想に近い「夢」から覚め暗い現実を突きつけられていると表現してるように取れなくもありません。

しかし、少年は「僕らは地を這う」と歌っています。

つまり這ってでもまだ「夢」への道を進んでいるという事です。

さらに「こんな夜」に対して「意味があるなら」と続く歌詞。

それはつまり、こんな敗北の状態の自分でもまだ夢を叶える為の力となると信じている、という意味なのではないでしょうか。

可能性を信じている内は自分の力で這い上がりたいという彼の意思がそこに込められているのでしょう。

また大サビでは「意味」の部分が新しい言葉に変化しています。


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敗北の少年 現実を謳え
僕らは泥を這いつくばるもの
こんな夜も 愛しいから
僕らは地を這う
ただ地を這う
≪敗北の少年 歌詞より抜粋≫
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これまでは少年の願望が歌われていましたが、その最後で「愛しい」と自分の現状への思いを綴ったものへと変化していることがわかるでしょう。

またサビの始まりでは「謳え」という言葉も歌われています。「謳う」の意味は「褒めたたえる」。

つまり少年が、自分の「敗北」を褒めたたえていると捉えられるのです。

這いつくばってでも夢を目指す姿は、他者から見たら滑稽な姿に見えるものかもしれません。

しかし少年自身はそんな自分を愛おしく思っており、故に這ってでもまだ進みたいと思っているのです。

そしていつか自分の力でこの「敗北」から抜けだした時、それは「謳う」という言葉に見合うだけの「誇り」に姿を変える事でしょう。



となれば『敗北の少年』というタイトルは、「夢に敗北した少年の話」という意味だけではなく「敗北から這い上がる少年の話」という意味を持ったものにも見えてきませんか。

今まではマキの力に振り回されるだけだった物語達。

しかし彼女の力に頼らずに自らの力で進む事を選んだこの物語は、Kemu Voxxの楽曲シリーズの一旦の終幕を告げるにふさわしい展開の楽曲と言えましょう。


TEXT 勝哉エイミカ

この特集へのレビュー

女性

名無しのA

2021/05/18 06:19

最終幕じゃなかったけどね(*´∇`)
わかりやすかったです!!
ありがとうございました…!

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