紅白歌合戦から始まった「ふるさと」
----------------
夕暮れせまる空に
雲の汽車見つけた
なつかしい匂いの町に
帰りたくなる
≪ふるさと 歌詞より抜粋≫
----------------
仕事や買い物からの帰り道、ふと見上げた夕焼け空に汽車のように連なる雲を見つけた。
日が落ちるまで遊んでいた子供の頃の記憶とともに懐かしい実家の匂いが蘇り、無性に故郷に帰りたくなった。
そんな経験はありませんか?
大人になれば誰もが経験するような情景から、嵐の『ふるさと』は始まります。
----------------
ひたむきに時を重ね
想いをつむぐ人たち
ひとりひとりの笑顔が
いま 僕のそばに
≪ふるさと 歌詞より抜粋≫
----------------
『ふるさと』は、嵐が初めて白組の司会を務めた「第61回NHK紅白歌合戦」での企画「僕たちのふるさとニッポン」のために作られた曲です。
この企画で嵐は、メンバーそれぞれが日本を各地を訪れ、そこに暮らす人々と触れ合いました。
「ひたむきに時を重ね 想いをつむぐ人たち」というフレーズには、各地で出会った伝統や文化を守りながら一途に生きている人々への、5人の想いが込められているのかも知れません。
作詞はあの人気キャラの生みの親
『ふるさと』の作詞は、熊本県のPRマスコットとして大人気の「くまモン」をプロデュースした放送作家、小山薫堂(こやま くんどう)が手がけました。
小山薫堂の出身地、熊本県天草市は2018年にユネスコ世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に登録された海と自然に恵まれた美しい町です。
----------------
巡りあいたい人がそこにいる
やさしさ広げて待っている
山も風も海の色も
いちばん素直になれる場所
≪ふるさと 歌詞より抜粋≫
----------------
この歌詞からは、激動の歴史を経て今は穏やかな時間が流れている天草の町と、そこに暮らす純粋な人々に対する小山薫堂の愛が伝わって来るような気がしますよね。
NHK全国学校音楽コンクールへ
『ふるさと』は、2013年第80回NHK全国学校音楽コンクール小学校の部の課題曲に選ばれ、新たに2番の歌詞が書き下ろされました。
----------------
朝焼け色の空に
またたく星ひとつ
小さな光が照らす
大いなる勇気
≪ふるさと 歌詞より抜粋≫
----------------
明けていく朝焼け空の中で瞬く星を探すように、どんな時も諦めずに希望を見つけよう、それが勇気なんだよ、とこの歌詞は意味しているのかも知れません。
----------------
雨降る日があるから虹が出る
苦しみぬくから強くなる
≪ふるさと 歌詞より抜粋≫
----------------
雨が降るからこそ美しい虹が生まれる、それは苦しみがあるからこそ強くなれる、苦しみを乗り越えてこそ優しい人間になれるんだよ、という意味にも聴こえてきますね。
----------------
進む道も夢の地図も
すべては心の中にある
≪ふるさと 歌詞より抜粋≫
----------------
進むべき道を描いた夢の地図はいつも心の中にある、そこが君の「ふるさと」。
道に迷ったら心の中の「ふるさと」に戻って何度でもやり直そう、心の「ふるさと」にはいつでも帰る事が出来るのだからと、この曲は教えてくれているのではないでしょうか。
----------------
助けあえる友との思い出を
いつまでも大切にしたい
≪ふるさと 歌詞より抜粋≫
----------------
子供達へのメッセージとして書かれたこの歌詞は、嵐自身のデビューからの歩みにも重なるような気がします。
嵐が歌うからこそ響く「ふるさと」
2011年に起きた東日本大震災から、嵐は『ふるさと』を被災地の復興を願う曲としても歌い続けて来ました。この曲が人々の心を動かす理由は、穏やかなメロディと美しい歌詞だけでなく、嵐の心のこもった歌唱にあるのではないでしょうか。
大野智をはじめ歌唱力には定評がある嵐ですが、その魅力が最大限に発揮されるのは5人の歌声が調和した時だと思います。
----------------
やさしさ広げて待っている
≪ふるさと 歌詞より抜粋≫
----------------
聴く人の心をホッとさせる安定感のある優しいハーモニー。
嵐が「国民的アイドル」と呼ばれる理由は、和を大切にする日本の心を5人から感じるからだと思います。
嵐が「ここはふるさと」と歌えばみんなの気持ちが一つになれる。
その力が、2019年の天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典での堂々とした歌唱へと繋がって行ったのではないでしょうか。
TEXT 岡倉綾子