得意のメッセージソングで聴き手を引き込む
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依然 ただ呆然
「明日が君の最後の夕食です。」
世界を綴った数式ですら
解読不能が命と言うそうだ
粗雑に昨日を費やしたその身
今日に祈るは滑稽
≪最終宣告 歌詞より抜粋≫
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こんな一節で始まるのがまふまふの最新曲『最終宣告』。専門学校のテレビCMに起用され、大きな話題を呼んでいます。
まふまふは当初ネット系クリエイターとして活動を開始し、今や若い世代を中心に全国的な知名度を獲得するアーティストへと成長。
今回の楽曲も、彼らしい魅力がたっぷり詰まったメッセージソングに仕上がっています。
幕開けを飾るのは衝撃的なセリフ。
「最後の夕食」という宣告に対して「呆然」とする主人公の姿が描かれます。
過去にも、生と死を真っ直ぐに見つめたシリアスなメッセージソングを数多く発表しているまふまふ。
「粗雑に昨日を費やした」という表現には、命あることの価値を軽んじてはならないという彼なりのメッセージが隠れているように感じられます。
また、自身が手掛けるボーカルユニット「After the Rain」として発表した同名の楽曲を思わせる「解読不能」というキーワードが、ファン心をくすぐる楽しい仕掛けになっています。
序盤にして一気に曲の世界に引き込まれますね。
残酷な対比を痛烈に描くサビの歌詞
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どうだい? どうだい?
死にたがりばっかりだ
救われぬ惨状に牙を剥くような
病状になりました
最終宣告だ 踊れやショータイム
生まれ落ちた故にワンサイドゲーム
≪最終宣告 歌詞より抜粋≫
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毎日のように耳に飛び込んで、減ることのない悲惨なニュース。
現代の若者を取り巻く苦しい環境から生まれる感情を、痛々しいほどに素直な表現で「死にたがりばっかり」と表現して見せます。
不自然なオブラートに包むことなく、伝えたい気持ちを真っ直ぐに伝える。
まふまふらしい表現がはっきりと現れているパートではないでしょうか。
「惨状」「病状」と心地よい韻を踏みつつ迎えるサビで、楽曲最大の見せ場であるキーワード「最終宣告」が登場します。
背水の陣ともいうべき最後の通告を受け、対照的にむなしく「踊る」さまが感情の激しさをより鮮明に描写しています。
続いて登場する「ワンサイドゲーム」とは、圧倒的な力の差がある一方的な試合のこと。
最終宣告を告げる側と、告げられる側。この世に生まれ落ちた時点で決まってしまう残酷な対比が、クールなリリックの中に織り交ぜられています。
絶望を希望に変える、まふまふの力強さ
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人間誰だって行く先は終点
好き勝手やるだけが解答
せいぜいリーパーに追われ続けてでも
言葉を言え
最終宣告だ 君は言い残した
生きると言え
≪最終宣告 歌詞より抜粋≫
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膨大な熱量を持った楽曲を締めくくるのはこんな一節。
「誰だって行き着く先は終点」という一見ネガティブな結論から、発想を転換し「好き勝手やるだけ」と力強い跳躍を見せています。
そして最後の一文は「生きると言え」。
これは歌詞に登場する人物の言葉でもあり、ほかでもないまふまふ自身のメッセージだと捉えることができるでしょう。
「最終宣告」を受けたと感じるほどに、辛く、苦しい状況に置かれたとしても。
ワンサイドゲームのように理不尽な展開が自分に待ち受けていようとも。
この世に生まれ落ちたからには生きることを諦めてはいけない。
最後まであらがわなくてはならない、というパワフルなメッセージが浮かび上がってきます。
『最終宣告』に一貫して漂う生と死のモチーフ。
現代人が陥りやすいネガティブな思考を巧みに楽曲のテーマに折り込みつつも、決して希望を捨てさせない力強さがまふまふの歌詞には存在しています。
生きる力を与えてくれる歌詞の魅力が、まふまふの人気を後押ししているのかもしれませんね。
TEXT ヨギ イチロウ