“第二章”は青春ラブストーリー
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夜の空を飾る綺麗な花
街の声をぎゅっと光が包み込む
音の無い二人だけの世界で聞こえた言葉は
「好きだよ」
≪あの夢をなぞって 歌詞より抜粋≫
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小説・イラスト投稿サイト「monogatary.com」から登場した小説を、音楽と映像で具現化する活動を行ってきたYOASOBI。
彼らが、”第二章”と銘打って発表した曲が『あの夢をなぞって』です。
原作となったのは、小説「夢の雫と星の花」。未来を予知できる力を持つ少女と幼なじみの恋愛模様が描かれたストーリー。
小説の雰囲気を丁寧になぞって作られた『あの夢をなぞって』の世界を紐解いていきます。
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夢の中で見えた未来のこと
夏の夜、君と、並ぶ影が二つ
最後の花火が空に昇って消えたら
それを合図に
≪あの夢をなぞって 歌詞より抜粋≫
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ある夏の花火大会の日。
幼なじみの一宮に告白されるという予知夢を見た楓は、予知夢の通りに進む現実に、心臓の鼓動を高鳴らせていきます。
夢で見た通りの景色を思い浮かべて、待ち焦がれる心情が描かれています。
夢に翻弄される二人を描く
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いつも通りの朝に
いつも通りの君の姿
思わず目を逸らしてしまったのは
どうやったって忘れられない君の言葉
今もずっと響いてるから
≪あの夢をなぞって 歌詞より抜粋≫
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物語が進むに連れて楓が持つ予知夢を見る能力と同じように、一宮も予知夢を見ていたことが分かってきます。
なんと、彼も花火大会の日に楓に告白される夢を見ていたのです。
この歌詞は、お互いを思い合っていながら幼なじみという関係が邪魔をして、素直になれない甘酸っぱい二人のやりとりが鮮明に想像できるフレーズです。
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夜を抜けて夢の先へ
辿り着きたい未来へ
本当に?あの夢に、本当に?って今も
不安になってしまうけどきっと
≪あの夢をなぞって 歌詞より抜粋≫
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予知夢が外れたら未来を見据える能力は消えてしまうという制約を抱えて、二人の距離は近付いていきます。
『あの夢をなぞって』のサビは、ファンタジー的な要素もありながら、リアリティのある心情の変化を、セリフのように描く歌詞が特徴です。
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今を抜けて明日の先へ
二人だけの場所へ
もうちょっと
どうか変わらないで
もうちょっと
君からの言葉
あの未来で待っているよ
≪あの夢をなぞって 歌詞より抜粋≫
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二人が見た予知夢は「告白される」という内容でした。
しかし、幼なじみという関係が変わった先の未来に期待をしながら、少し怖がるような心情がうかがえます。
『あの未来』というフレーズは「告白される」その先まで想像させる力を持っているようにも感じます。
「好きだよ」を告げたのは…
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誰も知らない
二人だけの夜
待ち焦がれていた景色と重なる
夏の空に未来と今繋がる様に開く花火
君とここでほらあの夢をなぞる
≪あの夢をなぞって 歌詞より抜粋≫
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二人はお互いに、“あの夢をなぞる”ために奔走します。並んで花火を眺める二人が見た景色と夢が重なり合っていく様子を丁寧に描いた歌詞は、聴いているだけでストーリーが思い浮かぶようです。
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見上げた空を飾る光が今照らした横顔
そうずっとこの景色のために
そうきっとほら二つの未来が
今重なり合う
≪あの夢をなぞって 歌詞より抜粋≫
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楓の心情を描きながら、同時に一宮の心情を描く巧みな歌詞。技術的な巧みさだけでなく、物語が進むに連れて重なり合っていく二人の気持ちまで表現しているように感じます。
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今を抜けて明日の先で
また出会えた君へ
もうちょっと
どうか終わらないで
もうちょっと
ほら最後の花火が今
二人を包む
≪あの夢をなぞって 歌詞より抜粋≫
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最後の花火が開いたあと、二人の関係性がどう変わってしまうのか。
緊迫感を感じさせる歌詞は『あの夢をなぞって』が小説に書き下ろされた楽曲である由縁かもしれません。
楽曲に合わせて、小説『夢の雫と星の花』のストーリーを描いたMVも相まって、小説の世界観が魅力的に映るのかもしれません。
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音の無い世界に響いた
「好きだよ」
≪あの夢をなぞって 歌詞より抜粋≫
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「好きだよ」の言葉を告げたのは、どちらなのか。二人の関係性はどうなっていくのか。
小説を読む前に『あの夢をなぞって』を聴けば、そんなドキドキを味わうことができます。
そして、小説を読んだ後にこの曲を聴けば、歌詞の一つ一つに二人の想いを重ねて、より感情移入して聴くことができます。
そんなふうに「ストーリーを楽しむ」という音楽の聴き方は、YOASOBIが新しい音楽の在り方を確立させたのかもしれません。
第二章である『あの夢をなぞって』は、聴くだけで青春に戻れる力を持っている楽曲となっているのです。
あなたもこの曲と一緒に青春時代にタイムスリップしてみてはいかかですか。
TEXT DĀ