1. 歌詞検索UtaTen
  2. コラム&特集
  3. J-POP
  4. ポルノグラフィティ

ポルノグラフィティ「アゲハ蝶」が20年近くも愛され続ける理由

『アゲハ蝶』は、2001年にリリースされたポルノグラフィティ・6枚目のシングルです。その曲名に込められた意味を探りつつ、ポルノグラフィティが持つ独特の音楽性とその魅力を紐解きます。

詩的な世界に描かれる人生観

▲ポルノグラフィティ 『アゲハ蝶(short ver.)』 / Porno Graffitti 『Agehachou(Short Ver.)』

『アゲハ蝶』は、ポルノグラフィティの楽曲の中でも、特に詩的センスが輝く一曲です。

ラテン調のメロディーとノスタルジックな雰囲気。

アゲハ蝶のジャケットが印象的で、記憶に残っている人も多いかもしれません。

作詞はギタリストの新藤晴一。ポルノグラフィティの持つ、唯一無二の世界観を作り上げてきた人だといえます。

まずは、『アゲハ蝶』を象徴するサビの歌詞からみていきましょう。

----------------
ヒラリヒラリと舞い遊ぶように
姿見せたアゲハ蝶
夏の夜の真ん中 月の下
喜びとしてのイエロー 憂いを帯びたブルーに
世の果てに似ている漆黒の羽
≪アゲハ蝶 歌詞より抜粋≫
----------------

夏の夜、まるで誘いかけるかのようにヒラヒラと姿を見せるアゲハ蝶は、聴き手を曲の世界へと誘います。

「夏の夜の真ん中 月の下」という表現がクセ者で、聴く人の耳に残る、引っかかりのある言い方を選んでいる点が見事。

「夏の夜の真ん中」というのは、アゲハ蝶が飛んでいる位置を示しているのか、それとも主人公「僕」の心の真ん中に、強烈に焼きついた何かを示しているのでしょうか?

歌い出しの短い歌詞だけで、夜空を舞う美しいアゲハ蝶の姿が、鮮やかに浮かんできます。

「旅人」が意味するものは?


----------------
旅人に尋ねてみた どこまで行くのかと いつになれば終えるのかと
旅人は答えた 終わりなどはないさ 終わらせることはできるけど
≪アゲハ蝶 歌詞より抜粋≫
----------------

『アゲハ蝶』には旅人が登場します。

「僕」の問いかけに対して「終わりなどはないさ終わらせることはできるけど」という答えが秀逸です。

ゴールがなく、終わらせようと思えばいつでも終えられるもの。それはまさに人生ではないでしょうか?

誰もが歩んでいく「人生」というものへの一つの答えを提示したような歌詞が印象的です。

----------------
そう…じゃあ お気をつけてと見送ったのはずっと前で
ここに未だ還らない
彼が僕自身だと気付いたのは
今更になってだった
≪アゲハ蝶 歌詞より抜粋≫
----------------

見送ったはずの旅人が、実は自分自身であったことに気づきます。

旅人を「お気をつけて」と見送ったつもりでも、自分自身も旅人だということに、その時は気づけなかったのです。

さまようことを他人事だと思っていたら、自分自身もそうだった・・・。

すべての人が”人生において、道なき道を歩む旅人”なのでしょう。

そのことに気づく頃には、もう遅いのかもしれません。

詩人=恋に翻弄される自分自身


旅人=自分であると気づいた「僕」は、一体何のためにさまよっているのでしょうか?

その答えが、2番の歌詞に色濃く描かれています。

----------------
詩人がたったひとひらの言の葉に込めた 意味をついに知ることはない
そう それは友に できるならあなたに届けばいいと思う
≪アゲハ蝶 歌詞より抜粋≫
----------------

ここで歌われる「詩人」とは「僕」のことでしょう。

吐き出した言葉の中に込めた思いは、本人しか知り得ません。

“それでも、ただあなただけに届いてくれたら・・・”

切なる思いを募らせる相手はきっと、人知れず思いを寄せる大切な女性です。


----------------
もしこれが戯曲なら なんてひどいストーリーだろう
進むことも戻ることもできずに
ただひとり舞台に立っているだけなのだから
≪アゲハ蝶 歌詞より抜粋≫
----------------

実らぬ恋を戯曲にたとえるところも、晴一のセンスの素晴らしさが光ります。

あまりにも残酷な戯曲だと思える程に、胸の内に秘めた思いは届くことなく、悲しい一人舞台を繰り広げるばかり。

脚本家がいるなら文句の一つも言えるでしょうが、これは戯曲ではありません。現実の恋です。

恨む相手を探しても見つからない虚しさが、「僕」の胸を締め付けるのでしょう。

----------------
あなたが望むのなら この身など
いつでも差し出していい
降り注ぐ火の粉の盾になろう
ただそこに一握り残った僕の想いを
すくい上げて心の隅において
≪アゲハ蝶 歌詞より抜粋≫
----------------

“思いが届かないのならばせめて、大切な人を守りたい。そのためなら命さえ惜しくない”

どこまでも純粋な思いが、聴く人の心に刺さります。

“もしも身体が朽ちてしまっても、そこに残った思いの欠片を、愛しい人が受け止めてくれたら・・・

あなたを愛する男がいたということを知ってくれたら・・・”

恋を叶えることよりも、相手の幸せをひたむきに願う。まさに、究極の愛ではないでしょうか?

アゲハ蝶が導き出す恋の行方は?


----------------
あなたに逢えた それだけでよかった
世界に光が満ちた
夢で逢えるだけでよかったのに
愛されたいと願ってしまった
世界が表情を変えた
世の果てでは空と海が交じる
世の果てでは空と海が交じる
≪アゲハ蝶 歌詞より抜粋≫
----------------

初めは、出会えただけで幸せだった恋が、「愛されたい」と願ってしまったことで、世界が一変します。

愛されるという見返りを求めてしまったばかりに、「僕」は果てしない悲しみの底へと突き落とされるのです。

----------------
荒野に咲いたアゲハ蝶
揺らぐその景色の向こう
近づくことはできないオアシス
冷たい水をください
できたら愛してください
僕の肩で羽を休めておくれ
≪アゲハ蝶 歌詞より抜粋≫
----------------

「荒野に咲いたアゲハ蝶」「近づくことはできないオアシス」という歌詞から、彼女が高嶺の花であり、絶対に手に入らない存在であることが分かります。

だからこそ愛していけなかった、ましてや、愛されたいなどと願ってはいけなかったのです。

「荒野」「揺らぐ景色」「オアシス」というワードから、「僕」が置かれた状況はまさに砂漠なのでしょう。

視界も揺らぐ砂漠で、オアシスで命の水を口にすることもできず、力尽きてしまうのです。

それでもせめて、最期の瞬間には大切な人に側にいてほしいと、願ってやみません。

「僕の肩で羽を休めておくれ」という歌詞に、最後の望みが込められているようで、切なさがこみ上げます。

長きにわたり愛される秘訣


『アゲハ蝶』に登場するアゲハ蝶は、日本でよくみかける種類ではありません。

黄色、黒、青と、歌詞に登場する羽の色を持つアゲハ蝶は、セラムタイマイという外国の蝶だといわれています。

「喜びとしてのイエロー」「憂いを帯びたブルー」「世の果てに似ている漆黒の羽」という歌詞の通り恋をした時の高揚感、叶わぬ恋だと知った時の絶望、それでも死の間際まで愛を求め続ける姿を、見事にアゲハ蝶の羽で表現しているのです。

世の果てにも似た漆黒の羽を持つアゲハ蝶が、誘いかけるかのように舞う夏の夜。何とも美しく、妖艶で、不穏な始まり方ですね。

決して愛してはならない人を愛してしまったばかりに、永遠に報われない恋をさまよい続ける男の憐れさを、ラテン調のメロディーと美しい歌詞で、一篇の詩のように描き出した新藤晴一。

さらに、歌詞の世界に魂を吹き込み、一度聴いたら忘れられない強烈な印象を与える岡野昭仁のボーカル。

『アゲハ蝶』が、発売から20年近く経った今もなお愛され続けるのには、こうした理由があるのでしょう。

今こそ、ポルノグラフィティの名曲中の名曲を、改めて聴き直してみてはいかがでしょうか?


TEXT 岡野ケイ

▷ポルノグラフィティ 配信URL ▷ポルノグラフィティ オフィシャルHP ▷ポルノグラフィティ LINE公式アカウント(LINE ID:@pornograffitti) ▷ポルノグラフィティ Twitter ▷ポルノグラフィティ Facebook ▷ポルノグラフィティ YouTube Channel ▷ポルノグラフィティオフィシャルInstagram

この特集へのレビュー

この特集へのレビューを書いてみませんか?

この特集へのレビューを投稿

  • ※レビューは全角500文字以内で入力してください。
  • ※誹謗中傷はご遠慮ください。
  • ※ひとつの特集に1回のみ投稿できます。
  • ※投稿の編集・削除はできません。
UtaTenはreCAPTCHAで保護されています
プライバシー - 利用契約