この世界観は唯一無二!映画「千と千尋の神隠し」の魅力
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2001年に公開され、海外でも高い評価を受けるジブリ映画『千と千尋の神隠し』。
本作が日本で打ち出した308億円という累計興行収入は、約20年経つ今も破られていません。
歴史的大ヒットを記録した『千と千尋の神隠し』の魅力について、詳しくご紹介しましょう。
トンネルの先にある不思議な世界
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10歳の少女・荻野千尋は、両親とともに車で引っ越し先へと向かっていました。
しかし、途中で道に迷っていたところ、目の前に突如古びたトンネルが現れます。
トンネルの不穏な雰囲気に先へ進むことを嫌がる少女に反し、興味をかき立てられた両親はどんどん進んでいきます。
少女は1人で残ることもできず、母親にしがみついてトンネルをくぐりました。
トンネルの先に待っていたのは、別世界のような不思議な街並み。立ち並ぶ飲食店のカウンターには美味しそうな料理が並んでいるものの、どの店も無人です。
少女の両親はその状況をいいことに、無断で料理に手をつけ、何かに憑りつかれたように無心で食べ漁ります。
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やがて街には明かりが灯り始め、得体の知れない者が動き出しました。
いつの間にか豚に変わってしまった両親に恐怖を感じ、どうにか逃げた千尋も指先から消えてしまいそうになります。
そんな少女を助けてくれたのは、同じ年頃の少年・ハク。
ハクは、この世界で生きるためには仕事を持つ必要であることを少女に教えます。
そして「油屋」という神々が疲れを癒すために訪れる湯屋で働くようにと助言。
少女は少年から聞いた通りに窯爺を訪ね、仕事の契約をしてもらうために油屋の主人である湯婆婆の元へ連れて行かれます。
1人で湯婆婆の前に出された少女は、名前を奪われて「千」という名で油屋で働くことに。
奇妙な世界に迷い込んだ少女は、果たして両親とともに元の世界へ帰ることができるのか、不思議な冒険が始まります。
実力派俳優たちの声の演技がすごい!
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『千と千尋の神隠し』には、多くの個性的なキャラクターが登場します。
このキャラクターたちがとても魅力的に映るのは、声を当てた俳優陣の高い演技力も大きな理由の1つでしょう。
千尋役を演じたのは、女優・柊瑠美。すでに女優として活躍していた柊瑠美は、今作が初の声優作品でしたが、難しい少女の微妙な心の変化を見事に表現して評価されました。
謎の少年・ハク役を演じたのは、声優・入野自由。13歳の時にオーディションでハク役を射止め、当時声変わりをしたばかりだったという声で魅力的に演じました。
湯婆婆と銭婆の双子の姉妹役を演じたのは、女優・夏木マリ。インパクトのある役どころかつ性格が全く異なる二役を演じ分け、強烈な印象を残しました。
湯婆婆の息子で巨大な赤ちゃんの坊役を演じたのは、俳優・神木隆之介。
いまやアニメ映画の声優としても引っ張りだこですが、当時8歳で配役された坊の声の演技ですでに存在感を放っています。
このようにあえてプロの声優を多用せず、俳優をキャスティングすることで知られる宮崎駿監督。
映画『千と千尋の神隠し』でもセリフが少ない役に大物俳優を起用するなど、意外なキャストが名を連ねています。
独特な風景の中に見る少女の成長物語
映画『千と千尋の神隠し』が観る人を引き込むのは、異国のような風景に非日常感があるから。
千尋が駆け抜けた街並みも、見下ろした油屋の雰囲気も独特で、多くの人が見入ったのではないでしょうか。
その景色は、ファンの間で台湾の九份(きゅうふん)と似ていると話題になりました。
九份は、真っ赤な提灯と石畳の階段が伸びるノスタルジックな風景で知られる小さな街。
明かりが灯る幻想的な夜の景色は、まさに『千と千尋の神隠し』の世界観と酷似しています。
和と洋を織り交ぜた色彩豊かでどこか懐かしい景色に、インパクトの強いキャラクター。
映画『千と千尋の神隠し』では印象的なシーンが多く、一瞬も見逃せな細やかな映像美に心が奪われます。
さらに、10歳の千尋が油屋での仕事や周囲との関わりによって成長していく様子も、大きな見どころです。
当初はまともに挨拶もできない状態だった少女も、少しずつ仕事に慣れて機敏に行動できるようになります。
驚くような場面に何度も直面しますが、次第に顔つきも変わり、精神的にも成長していることを感じるでしょう。
千尋と同世代の子どもたち、子どもを持つ親の世代、子どもの頃に映画を観た若い世代。
少女の成長の姿は誰にとっても感慨深く、同じ毎日を生きる中でそっと背中を押してくれるはずです。
心に寄り添う優しい主題歌「いつも何度でも」
映画『千と千尋の神隠し』では、心地良い音楽も印象に残ります。その代表格が、木村弓が歌う主題歌『いつも何度でも』。
実はこの曲は『千と千尋の神隠し』のために作られた曲ではありません。
ジブリ映画のファンで、宮崎駿監督にCD付きのファンレターまで送った木村弓。
直々に伝えられた企画途中の「煙突描きのリン」という作品からイメージを膨らませ、宮崎駿監督に送った曲が『いつも何度でも』でした。
結局「煙突描きのリン」は幻の作品となりましたが、次作として制作された『千と千尋の神隠し』での起用が決まったのです。
『いつも何度でも』は、ハープの優しいメロディと木村弓のゆらぎをもつ繊細な歌声が、美しいハーモニーとなって心に沁み込んでいきます。
そして歌詞は、変わらない現実の中でも必ず希望が見つかることを教えてくれるでしょう。
深い意味を持つこの曲が『千と千尋の神隠し』をイメージした映像とともに流れるエンドロールは、胸がいっぱいになるような余韻を与えてくれます。
テーマソング「いのちの名前」も必見
映画『千と千尋の神隠し』では主題歌の『いつも何度でも』の印象が強いですが、テーマソングとして起用された木村弓の『いのちの名前』も感動的。
より映画の内容に沿った歌詞で、世界観が豊かに表現されています。
作曲は、ジブリ作品でおなじみとなっている久石譲。
ピアノの伴奏を中心にしっとりとした静かなメロディが続く演奏と、儚さの中にも芯の強さを感じる歌声が見事に交わります。
夏の景色を描いた歌詞はとても穏やかで、『千と千尋の神隠し』の情景にあるノスタルジックな雰囲気とマッチ。
映画を観終わった後に聞くと、ストーリーとリンクする内容に胸が熱くなります。
映画「千と千尋の神隠し」は生きる力をくれる名作
日本のみならず、世界中で愛されるジブリ映画『千と千尋の神隠し』。
懐かしさと非日常感のある異国情緒あふれる風景と、奮闘する少女の成長物語が魅力の映画です。
新しい環境に飛び込んだり、理不尽にも思える状況で自分を保つことは、いくつになっても難しいもの。
しかし前を向いて進むとき、多くの人によって自分が支えられていることに気づくのではないでしょうか。
映画『千と千尋の神隠し』は、頑張る人の心を包み、明日を生きる力をくれる作品。
疲れを感じたり独りぼっちに思えるときには、ぜひこの映画を観て肩の荷を降ろしてください。
TEXT MarSali