儚くも熱く
TVアニメ『炎炎ノ消防隊』の主題歌として書き下ろされた『インフェルノ』。
この作品はある日突如始まった人体自然発火現象によって、全身が炎に包まれ暴れだした怪物「焔ビト」の脅威と戦う、特殊消防隊の命をかけた活躍を描くダークファンタジーである。
「炎」と「命」をテーマに描かれた作品ですが、本曲はその二つの見事に捉えて表現された歌詞になっています。
そんな儚くも熱量を感じる歌詞を見ていきます。
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照らすは闇
僕らは歩き慣れてきた日々も淘汰
夢は安泰な暮らしだが
刺激不足故にタラタラ
≪インフェルノ 歌詞より抜粋≫
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「照らすは闇」というネガティブな一節から歌詞は始まる。
夢ややりたいことはあるが、それをいざ実行するキッカケもタイミングもなく、先延ばしにして何も出来ずにただ無駄に時間を浪費してしまっている現状。
ここまで生きて得た経験すら上手く扱えず、光が見えない生活の中にいてどうしようもない状況が歌われています。
永遠なんて無いから
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照らすは熄み
僕らの歩き慣れていた道はどこだ
時はたまに癪だが
温もりに包まれ只
≪インフェルノ 歌詞より抜粋≫
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「熄み」とは火が消えることであり、何もなくなってしまった事を意味している。
タラタラと過ごしているといつの間にか、照らされていた闇さえもなくなり、気がつけば過去も未来も見えずに何も動けなくなってしまう状況が訪れてしまう。
そういった誰しも陥ってしまう可能性を、ここで提示しているのです。
時間は戻らない。
無駄に過ごせば、その残酷さに裏切られることは多々あるが、一秒一秒を大切に生きれば、過ごした中で得た時間は全て糧になっていくことが唄われていることがわかります。
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永遠は無いんだと 無いんだと云フ
それもまたイイねと笑ってみる
≪インフェルノ 歌詞より抜粋≫
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「永遠は無いんだ」という事実は全ての事に当てはまる。
その現実を一番感じるのが、「命」についてだといえるでしょう。
いずれ来る自分の終わりを考えると、どうしようもない恐怖に襲われる。
ですが、その終わりがあるからこそ、限られた時間で何かを成そうという想いが生まれます。
終わりを受け入れて笑って精一杯生きようとする心が、自分の人生に意味を与えることができるのです。
命の火が消えるまで
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音が出る玩具も
痛みを飛ばす魔法も
全部僕にとっての宝物
永遠は無いんだと 無いんだと云フ
僕らは命の火が消えるその日まで歩いてゆく
≪インフェルノ 歌詞より抜粋≫
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幼き頃の遊んだ玩具も、怪我をした痛み、そしてそれを癒してもらった優しさも、全て自分を形成し続ける宝物といえます。
その宝物があるからこそ、それを失わないよう命を続けていく使命感にもなっていく。
命はいずれ終わる。ちょっとしたキッカケで簡単に消えてしまう。
自分ではどうすることもできない不幸によって、奪われる、また自ら奪ってしまうかもしれません。
それはまるで灯された火のように、消える時は呆気なく儚いものなのです。
だからこそ、その火が出来るだけ消えないように炎といえる程、大きく燃やす必要があります。
命の火を大きく燃やす為に必要なものは、生きようとする強い意志であり、その意志は守り続けたい過去の思い出と、未来への夢によって育まれるといっていいでしょう。
儚い運命を纏う命だからこそ、自らが生きる意味を自らに与えて、常に強く燃え上がらせるべきなのです。
この楽曲のタイトルの『インフェルノ』には「地獄」と「業火」という二つの意味があります。
いつだって地獄のような残酷さをはらんだ世界を生きる私たちは、いつ命の火が消えてもおかしくありません。
そしてどれだけ気をつけても、やがて必ず終わりはやってきます。
だからこそ、いつだって命の火を業火のように燃え上がらせて、消える最後まで自分らしく精一杯生きるべきなのである。
という意味が、タイトルには込められているのでしょう。
そしその熱い意味が、歌詞の最後まで刻まれており、歌われています。
この曲は、全ての人に与えられた儚い命の火が消える最後まで、その火を全力で焚きつけて炎にしてくれる熱量に溢れた一曲といえるでしょう。
TEXT 京極亮友
【Mrs. GREEN APPLE PROFILE】 大森元貴 (Vo/Gt) 若井滉斗 (Gt) 藤澤涼架 (Key) 2013年結成。2015年EMI Recordsからミニアルバム「Variety」でメジャーデビュー。 以来、毎年1枚のオリジナルアルバムリリースと着実なライブ活動を続け、2019年12月から行われた初の全国アリーナツアー「エデ···