「世界から猫が消えたなら」とは?
映画『世界から猫が消えたなら』の原作は、川村元気によるLINE連載小説。
川村元気と言えば『電車男』『おおかみこどもの雨と雪』『君の名は。』など、数々のヒット作をプロデュースしてきたプロデューサーとして有名ですよね。
小説『世界から猫が消えたなら』は、2012年10月にマガジンハウスから単行本が刊行されました。
その後、2013年7月20日にラジオドラマが放送され、2014年9月に小学館から文庫版が刊行されています。
また、雪野下ろせによる漫画版が『花とゆめ』(白泉社)にて連載されるなど、メディアミックス化が進みました。
『世界から猫が消えたなら』の主人公は、1匹の猫と共に暮らす男性郵便配達員です。
余命宣告をされた主人公が悪魔と契約し、世界から何かを1つ消すことで1日の命をもらうストーリーとなっています。
映画『世界から猫が消えたなら』は、2016年5月14日より公開され、公開初日2日間で動員14万を超えるヒットとなりました。
何かと引き換えに与えられる命
ある日、ごく平凡な30歳の郵便配達員の「僕」は、仕事の帰宅中に突然倒れます。
医者に「悪性の脳腫瘍」だと宣告され、絶望の底に落ちる「僕」を家で待っていたのは、自分と全く同じ姿をした男でした。
自らを悪魔だと名乗った「僕」そっくりの男は「君は明日死ぬけど、そうならない方法が一つだけある」と「僕」に提案します。
「1日延命するために、対価として世の中にある何かを消していく」と言う悪魔。
身の回りの大切なものと引き換えに一日の命が与えられ、消されたものに関連する記憶や事柄は、すべてなかったことになるのです。
「僕」は生きるために、電話・映画・時計などを消していくのだが…。
切なく優しい物語
「この世界にもし僕がいなくなったら、どうなるんだろう?」という、映画の始まりの独白が、この『世界から猫が消えたなら』を象徴しています。
「生きるとは何なのか」を語るとても切ないストーリーには、涙を誘われずにはいられません。
初恋の女性と再会し、共に過ごした日々を振り返る「僕」の心を想うと、なんとも言えない気持ちになりますよね。
自分が生きてきた証というのは、何気ないものの中に潜んでいます。
それを失って初めて気づくこともあるのでしょう。
自分が関わった、そのひとつひとつがかけがえないもの。
『世界から猫が消えたなら』という題名ですが、この物語は猫が好きな人もそうでない人も関係なく、感動することができますよ。
優しい想いになり、家族や友達など自分の周りにいる人を大切にしたいと感じる、素敵な映画作品です。
豪華な制作陣&キャスト陣
映画『世界から猫が消えたなら』の監督は、CMディレクターとしても知られている永井聡が担当しています。
脚本は、映画『いま、会いにゆきます』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』などを手掛けた岡田惠和が担当。
音楽は、Mr.Childrenの元プロデューサーで、映画『スワロウテイル』で注目を浴びた小林武史が担当しました。
≪キャスト一覧≫
僕 / 悪魔(2役):佐藤健
彼女:宮崎あおい
タツヤ:濱田岳
トムさん:奥野瑛太
ミカ:石井杏奈
原作・監督・脚本・音楽・出演者と、そうそうたるメンバーが名を連ねていますね。
デビュー作『仮面ライダー電王』で、1人6役まで演じてみせた佐藤健の演じ分けは相変わらず見事ですね。
1人2役を見ることができるので、佐藤健ファンにとっても美味しい作品となっています。
主題歌はHARUHIが歌う「ひずみ」
映画『世界から猫が消えたなら』主題歌の『ひずみ』を歌っているのは『HARUHI』。
『ひずみ』は当時16歳のHARUHIのデビュー曲で、プロデュース、作詞・作曲・編曲は、HARUHIの父親である小林武史が担当しています。
子どものような無垢な声と、大人のような深い表現。
女性の繊細さと男性の力強さを合わせ持つ歌声を聴くと、一瞬にして楽曲の世界観に引き込まれます。
『ひずみ』は、悲しいストーリーに希望と安らぎを与えてくれる楽曲です。
この歌まで含めて、この映画は1つの形に完成しているのでしょう。
『ひずみ』のMVには、『世界から猫が消えたなら』の佐藤健とスタッフが大集結しました。
映画のスピンオフ『世界が猫だらけなら』という物語で、映画と同じく監督も永井聡が務め、とても見ごたえのある作品となっていますね。
原作と映画を見比べよう!
『世界から猫が消えたなら』は、原作ではかなり軽くてふざけた感じに描かれていた悪魔が映画ではシリアスになっていたように、原作と映画版では違った部分がたくさんあります。
原作派の人も映画派の人も、新たな目で観たり読んだりすれば、また新たな想いを抱くかもしれませんね。
どちらも素敵な話なので、おすすめですよ。
胸が震える切ない作品をぜひご覧ください。
TEXT 有紀