迫力と感動が胸に迫る映画「永遠の0」
作家・百田尚樹が史実を元に描き、団塊の世代を中心に幅広い層に注目された小説『永遠の0(ゼロ)』。
そのストーリーに映像による迫力や美しさを加えた映画版も、高い人気を博しました。
第38回日本アカデミー賞では、最優秀作品賞をはじめとし多数の賞を受賞する高評価。
観る人を惹きつけ魅了した映画『永遠の0』を、あらすじから見どころまでたっぷり紹介します。
臆病者と呼ばれた本当の祖父の半生とは
2004年、弁護士を目指しながらも司法浪人として自堕落な生活を送る佐伯健太郎は、祖母・松乃の葬式に参列していました。
そこで、祖父・賢一郎から驚くべき事実を聞かされます。実は賢一郎は松乃の再婚相手で、本当の祖父ではないと言うのです。
初めて聞かされた事実にショックを受ける健太郎でしたが、フリーライターをしている姉・慶子に誘われ、本当の祖父である宮部久蔵のことを取材することに。
そのことを報告すると、賢一郎からも「是非調べて欲しい。お前たちのために」と頼まれます。
宮部久蔵は、松乃との結婚から4年後に太平洋戦争で特攻により亡くなりました。
遺書もなく、詳しいことが何も分からなかったため、健太郎たちは戦友会を通して当時の戦友から宮部久蔵についての話を聞くことにします。
しかし戦友らは皆、一様に「宮部久蔵は臆病者」「空を逃げ回っていた」と語りました。
あまりに悪い内容ばかりで、取材を中止することを決める健太郎。
ところが、最後に取材した入院中の井崎は、これまで聞いた人物像とは全く違う「宮部久蔵は凄腕のパイロットだった」という話を聞かせてくれました。
その話から健太郎は、宮部久蔵が妻と生まれたばかりの娘・清子の元に生きて帰るため、極端に死を恐れていたことを知ります。
そんな久蔵がなぜ特攻へ志願し死ぬことになったのか。その真実を知る時、きっと生き方を考えさせられる名作映画です。
豪華キャストによる生きた演技に注目!
『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズで知られる山崎貴監督がメガホンを取った本作。
ベテランから若き実力派まで集めたキャストの豪華さは、公開前から多くのメディアで取り上げられたほどでした。
本作の主人公である宮部久蔵役を演じたのは、V6の岡田准一。
今や演技もアクションも巧みになし俳優業でも成功していますが、重く難しい役どころに大きなプレッシャーを抱えながら演じたそうです。
その結果、仕草や表情から想いが滲み出る繊細な演技で、多くの人を魅了しました。
宮部久蔵について取材する孫の佐伯健太郎役は、三浦春馬が熱演。
自分のルーツをたどる役に合わせてセリフの語尾を変えたり、自身の撮影がない時にも現場に足を運んで見学したりと、真摯な姿勢で役と向き合い演じ切りました。
さらに、健太郎たち一家を見つめ続けた賢一郎役には夏八木勲、病床で取材を受ける井崎役には橋爪功をキャスティング。
戦時中パートを描く上で欠かせない現代パートに多くのベテラン俳優を起用することで、より戦時中パートが活きてストーリーに深みが増しています。
勢いある映像と愛にあふれるストーリー
映画『永遠の0』の見どころを語る上で欠かせないのは、ダイナミックな戦闘シーン。
山崎貴監督の代名詞と言えるVFXを駆使して再現された零戦や空母・赤城は、かなり緻密でリアルに表現されています。
自身が零戦に乗っているかのような臨場感は戦争を追体験する感覚があり、登場人物や当時のパイロットたちの想いを鮮明に捉えることに繋がるでしょう。
そして、スポットライトが当てられた宮部久蔵という人物の生き様と信条に、心を揺さぶられます。
「臆病者」と揶揄されながらも、常に家族を想い生きることにこだわった宮部久蔵。
平和な現代において、当たり前にある命の尊さや命を繋ぐことの重要性を改めて教えてくれます。
最期の瞬間まで信条を貫き通した宮部久蔵の半生を、迫力ある映像と共にじっくり味わってみてくたさい。
切なくも美しい主題歌「蛍」
映画『永遠の0』を描く彩る主題歌は、サザンオールスターズの『蛍』。
サザンオールスターズが映画の主題歌を手掛けるのは23年ぶりのこと。
映画の制作サイドから熱烈なオファーを受けると共に、桑田佳祐が映画の内容に深く共感したことから、タイアップが実現しました。
『蛍』は、終始穏やかなオーケストラの演奏が美しく、自然と耳に残ります。
そして、サビにかけて静かに熱が高まっていくメロディが、切なさの中にもぶれない強さを感じさせる壮大なバラードです。
映画のために書き下ろした歌詞は、『永遠の0』の世界観に寄り添いながらも、震災で大切な人を失った人々の心情にも通ずる普遍的な平和への祈りが込められています。
オーケストラの音色に桑田佳祐の情感豊かな歌唱が交わり、歌詞に込められた想いが心に深く染み渡るでしょう。
PVでは、水墨画や日本の現風景を思わせる背景に、蛍を模した無数の灯りが浮かび上がる様子が印象的です。
失われていくものは多くても、時を経ても残り受け継がれていくものも確かにあることを感じさせてくれます。
映画のエンディングで『蛍』が流れると、多くの観客の涙を誘いました。この映画の結末にふさわしい希望ある楽曲です。
映画「永遠の0」は深い愛の物語!
映画『永遠の0』は、戦争に翻弄されつつも激動の時代を懸命に生きた日本人を力強く描いた作品です。
終戦から半世紀以上が経過した今、戦争を体験した世代は非常に少なくなっています。
毎年ニュースで取り上げられるものの、遠い過去の出来事でありどこか他人事のように思えてしまうことも事実です。
この映画は、戦争の歴史を今よりも少し身近に感じさせると共に、時代を経ても変わらない生きることの意味や尊さを、観る人の心に訴えかけてきます。
人と愛の強さを描いた映画『永遠の0』は、人生を見つめ直すきっかけをくれるでしょう。
TEXT MarSali
1978年6月25日にシングル『勝手にシンドバッド』でデビュー。 1979年『いとしのエリー』の大ヒットをきっかけに、日本を代表するロックグループとして名実ともに評価を受ける。 以降数々の記録と記憶に残る作品を世に送り続け、時代とともに新たなアプローチで常に音楽界をリードする国民的ロ···