歴史を変えたデビューアルバムのタイトル曲
1999年3月10日、宇多田ヒカルのデビューアルバム「First Love」がリリースされました。すでに、デビュー曲「Automatic」がチャートを席巻していたこともあり「First Love」は、リリース前から大きな話題となっていました。
最終的には800万枚以上のセールスを記録しました。
この記録は今も破られていない、日本国内のアルバムセールス数となっています。
そんなデビューアルバムのタイトル曲でもある「First Love」。
当時若干16歳の少女が歌うラブソングは、セールスの数字以上の衝撃を与えるものでした。
歌詞を見ていきましょう。
切ない恋愛の終わり
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最後のキスは
タバコの flavorがした
ニガくてせつない香り
明日の今頃には
あなたはどこにいるんだろう
誰を想ってるんだろう
≪First Love 歌詞より抜粋≫
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「First Love」はタイトルの通り、初恋について歌った曲です。
その恋はすでに終わってしまい、振り返る形で書かれています。
「最後のキスはタバコのflavor(香り)がした」ということから、相手の男性は喫煙者だったことがわかります。
その相手はすでに主人公の隣にはいません。
別れた相手を思い出し、恋が終わった後の切ない心情が描かれています。
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You are always gonna be my love
いつか誰かとまた恋に落ちても
I'll remember to love
You taught me how
You are always gonna be the one
今はまだ悲しい love song
新しい歌 うたえるまで
≪First Love 歌詞より抜粋≫
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英語の部分を和訳していきましょう。「You are always gonna be my love」は「あなたはいつも私の恋人」という意味です。
そして「I'll remember to love you taught me how」は「あなたが私に教えてくれた愛し方を忘れない」という意味になります。
この歌詞の意味から、あなたとは別れてしまったけれど、あなたを愛した日々は忘れないということ伝えたいのでしょう。
初めて人を愛した経験や思い出は、誰を愛したとしても消えることはないのだと思います。
別れた痛みはまだ生々しく、振り返っても悲しい気持ちになります。
新しい歌を歌うというのは、新しい恋に向かって前に進むという意味でしょう。
そうなるには、まだもう少し時間がかかりそうだという思いが感じられます。
消えない恋の痛み
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立ち止まる時間が
動き出そうとしてる
忘れたくないことばかり
明日の今頃には
わたしはきっと泣いている
あなたを想ってるんだろう
≪First Love 歌詞より抜粋≫
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破れた初恋の痛みでふさぎ込んでいた主人公。
しかし、いつまでも立ち止まっているわけにはいかず、動き出そうとします。
それでも、忘れられない思い出が次々とフラッシュバックしてくるのです。
明日も私はあなたを想って泣いている。そんな姿が思い浮かんでくるのです。
前に進まなくてはいけないことはわかっていても、一歩が踏み出せない。
失恋の痛みに苦しむ葛藤がリアルに描かれていると思います。
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You will always be inside my heart
いつも あなただけの場所があるから
I hope that I have a place in your heart too
Now and forever you are still the one
今はまだ悲しい love song
新しい歌 うたえるまで
≪First Love 歌詞より抜粋≫
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「You will always be inside my heart」は「あなたはいつも私の心の中にいる」という意味です。
別れても、その存在を心から消すことはできません。
「I hope that I have a place in your heart too」は「あなたの心の中にも私の場所があればいいのに」という意味です。
私の中にあなたがいるように、あなたの心にも私がいてほしいという切実な願い。
しかし残念ながらそれは叶わぬ願いでしょう。
主人公も、あなたへの想いを振り切らなければ前に進めないことはわかっています。
しかし、今はまだ新しいラブソングを歌うことはできないのです。
それほど、この初恋は彼女の中で大きなものだったのでしょう。
16歳の少女が歌ったラブソングの衝撃
誰の中にも「初恋」の記憶はあると思います。
しかし、それをこれだけドラマチックに、大人のラブソングとして描き切った曲はそうは無いと思います。
驚くべきことは、この曲を書いた宇多田ヒカルが当時若干16歳の少女だったことです。
「First Love」の内容が宇多田ヒカルの実体験なのか、想像の物語なのかはわかりません。
どちらにしても16歳の少女が、これだけリアルに恋愛の心情を描いたことは衝撃でした。
大人の作家が書いたラブソングを歌う10代の歌手が大半だった中で、自分の言葉でリアルに恋愛の痛みを歌う16歳が現れたのです。
新しい世代のアーティストが現れたことを、多くのファンが実感したことでしょう。
宇多田ヒカルは、自らの才能でその後のJ-POPの流れを変えるほどの衝撃を与えたのです。
TEXT まぐろ