ジブリの甘酸っぱい青春恋愛もの
『耳をすませば』は、柊あおいによる青春恋愛漫画が原作。1989年に「りぼん」にて連載後、翌年に単行本化されています。
画像引用元 (Amazon)
宮崎駿が原作をたまたま読んだことで映画製作が始まり、1995年に公開されました。
監督を務めたのは「火垂るの墓」や「おもひでぽろぽろ」のキャラクターデザインや作画を担当していた近藤喜文。
脚本を宮崎駿が担当しました。
ジブリ作品を影から支えてきた近藤にとって、本作は初の長編監督作品となりました。
ここからは『耳をすませば』のあらすじや見どころを紹介します。
図書カードをきっかけに繋がった出会い
読書好きな中学3年生の少女・月島雫は、自分が借りる本の図書カードに「天沢聖司」という名が毎回書かれていることに気づきます。
名前しか知らないその男子は、一体どんな人なんだろう。
彼のことを考えるうちに、彼女はいつしか「天沢聖司」に想いを寄せるようになるのです。
夏休みのある日、地元の図書館に向かっていた彼女は一匹の猫を見つけ、その猫に導かれるように不思議な雑貨店「地球屋」に迷い込んでしまいます。
画像引用元 (Amazon)
その後、店主の孫が「天沢聖司」だと知った雫は、そこから少しずつ交流を深めていくようになるのですが……。
キャッチコピーは「好きなひとが、できました」。
受験という人生の節目を迎えた少年少女が、将来の憧れや不安、そして恋に悩みながら必死に答えを自らの力で見つけていく姿が、繊細に描かれています。
自分の中に眠っていた、あの頃の純粋だった気持ちを蘇らせてくれるジブリの青春作品です。
大人も引き込まれる甘酸っぱい青春
『耳をすませば』は主人公と同年齢の若者だけでなく、大人からの支持も多く集めています。
その理由は、誰もが一度は「こんな青春を送ってみたかった」と思う二人の甘酸っぱい恋模様と、受験という将来への憧れや不安をリアルに描写していることにあります。
「私が学生の時も、こんな風に将来のことで悩んだ」「進路を決められなくて、焦っていた」と当時、一人で悩んでいたことを思い出し、自分と雫を重ねて観てしまうんです。
ただの中学生同士の甘酸っぱい恋愛ものではなく、思春期に必ずぶつかる将来への憧れや不安を描いたからこそ、大人の心にも響く作品になったのでしょう。
画像引用元 (Amazon)
それをより際立たせていたのが、作品の世界観。
作品の中で描かれている街並みは、実際にある東京都多摩市の聖蹟桜ヶ丘駅周辺をモデルにしているため、現実味があります。
本作の登場人物も、実際に私たちの身近にいそうな人物ばかり。
リアルな街並みと登場人物を描くことで、作品の中に現実味を感じられて惹き込まれていくんです。
高橋一生が天沢聖司だった、意外なキャスト陣
これまでに何度も地上波放送をされているのでご存知かもしれませんが『耳をすませば』には、あの有名俳優が声優として出演していました。
それが天沢聖司の声を務めた、当時14歳の高橋一生です。
今の色っぽい低くてダンディーな声からは程遠い、声が変わりをする前の高橋。
今とは違う印象に、驚いた方も多いはずです。
この他にも、雫の母親・朝子役を室井滋。
雫が通う学校の先生・高坂役を高山みなみが演じています。
画像引用元 (Amazon)
主人公の雫の声を担当した本名陽子は「おもひでぽろぽろ」「猫の恩返し」といった別のジブリ作品にも出演しました。
<キャスト一覧>
月島雫:本名陽子(当時16歳)「おもひでぽろぽろ」「猫の恩返し」
天沢聖司:高橋一生(当時14歳)
月島靖也:立花隆
月島朝子:室井滋
月島汐:山下容莉枝
フンベルト・フォン・ジッキンゲン男爵(バロン):露口茂
西司朗:小林桂樹
北:鈴木敏夫
南:井上直久
高坂先生:高山みなみ「魔女の宅急便」
原田夕子:佳山麻衣子
杉村:中島義美
聖司の祖父・西の友人役である南の声を担当した井上直久は、雫が書いたバロンのくれた物語の美術を担当した人物。
画像引用元 (Amazon)
画家でイラストレーターの井上は、架空の世界描いた画集「イバラード」を発表しており、それが雫の物語の中で描かれているのです。
故郷を思うカバー曲は胸に染みる
画像引用元 (Amazon)
『耳をすませば』のOPテーマ曲は、オリビア・ニュートン=ジョンの『Take Me Home,Country Roads』です。
作詞作曲はジョン・デンバー、ビル・ダノフ、タフィー・ナイバートが担当しました。
『Take Me Home,Country Roads』は、もともと作詞作曲を担当したジョン・デンバーの同名曲が原曲で『耳をすませば』ではオリビアがカバーする形で発表されました。
邦題は『故郷へかえりたい』。
故郷に思いを馳せるジョン・デンバーの気持ちが歌われており、彼の代表曲となりました。
決して力強く歌っているわけではないけど、聴く人の心に染みわたる哀愁漂うオリビアの歌声が印象的です。
「耳をすませば」といったら「カントリー・ロード」
画像引用元 (Amazon)
EDテーマ『カントリー・ロード』を歌っているのは、主人公の雫の声を担当した本名陽子。
原曲である『Take Me Home,Country Roads』の日本語訳を、数々のジブリでプロデューサーを務めた鈴木敏夫の娘・鈴木麻実子が、補作詞として宮崎駿が担当。編曲を野見祐二が手掛けました。
本編では、雫が日本語に訳した設定になっています。
歌っていた本名は、当時16歳。
雫とほぼ同じ年代で、まっすぐとした学生らしい歌声が雫のイメージにピッタリです。
本楽曲は、映画が公開されるとさらに注目されました。
現在も地上波放送されると、もう一度聴きたいとランキングが急上昇するほど。
画像引用元 (Amazon)
日本語バージョンでは、様々な楽器が伴奏を担当。
雫と聖司が「地球屋」で手拍子をしながら楽しそうに歌っているシーンは、有名ですよね。
ヴァイオリンやヴィオラ・ダ・ガンバ、アルトリコーダー、ツィンク、タンバリン、リュートと、古楽器が使われています。
EDテーマとなっていますが、おそらく映画を観た方のほとんどは、日本語バージョンの『カントリー・ロード』のほうが印象に強いのではないでしょうか。
10年後の2人を描く実写版「耳をすませば」
画像引用元 (Amazon)
雫と聖司は「お互い夢を叶えるために今は頑張ろう。そして結婚しよう」と誓い合って物語は終わっています。
その後、2人が本当に夢を叶えて結婚しているのかどうか、気になっている方も多いですよね。
じつはその後のストーリーが、実写映画化されているんです。
ストーリーは2人が出会う前の過去と、それから10年後。
大人になった2人の姿が描かれています。
雫をドラマ「シロでもないクロでもない世界で、パンダは笑う。」の清野菜名、聖司を映画「新聞記者」の松坂桃李が演じます。
実写化された雫と聖司の10年後の物語を、ぜひご覧ください。
TEXT あるこ