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神はサイコロを振らない「夜永唄」のヒットは2020年の必然だった?

2015年に福岡県で誕生した4人組のロックバンド、神はサイコロを振らない。2019年にリリースされたミニアルバム『ラムダに対する見解』に収録されている『夜永唄』が、2020年春にヒットチャートを賑わせている理由と歌詞の意味を考察します。

SNS時代が生んだ「バイラルヒット」

新進気鋭のバンド、神はサイコロを振らない。

彼らのバラード『夜永唄』が2020年春、音楽配信サイトでランキング上位に出現した理由は、音楽の楽しみ方に変化があったからではないでしょうか。

▲神はサイコロを振らない - 「夜永唄」 【Official Lyric Video】

定額制音楽サービスが普及し、SNSからブレイクするアーティストも増加している近年。

TikTokから火がつき、音楽配信サイトのSpotifyバイラルチャートトップ5に入った『夜永唄』は、そんなSNS時代が生んだ「バイラルヒット」と言えますよね。

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どうして心ごと奪われてでもまだ
冷たいあなたを抱き寄せたいよ
≪夜永唄 歌詞より抜粋≫
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レコードの逆回転音を思わせるイントロから始まります。

それは、時間を巻き戻す音のようにも聴こえてきます。

遡った時間の先に見えてきたのは、愛した人の美しい姿。

「心ごと奪われて」とは、最初は彼女の美貌に惹かれたけれど、その後すっかり心まで奪われるほど愛してしまったという意味ではないでしょうか。

そして「冷たいあなた」では、二人の関係性の温度差を現しているような気がします。

「夜永唄」の幻想的な世界

この楽曲の魅力は、感情の抑制と高揚を表現するダイナミックなサウンド、美しい比喩を用いた歌詞が生み出す幻想的な世界ではないでしょうか。


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金木犀の香りが薄れてゆくように
秋が終わり消えていったあなた
≪夜永唄 歌詞より抜粋≫
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去って行った彼女の姿を「金木犀の香り」で表現した、とても美しい歌詞ですよね。

秋に咲く金木犀の甘い香りには、どこか切なさを感じる人が多いそうです。

それは、公園や校庭に咲いていた金木犀の香りが子供時代の記憶を呼び起こすからかも知れません。

金木犀は「夏の終わり」や「子供時代の終わり」など、一つの時代の「終わり」を思わせる花なのでしょう。


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花びらに似た指先を
静かに撫でながら過ごした夜が
また繰り返されてゆく
≪夜永唄 歌詞より抜粋≫
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金木犀に続き女性を「花」で表現しています。

女性のしなやかな白い指先を花びらに例えるエロティシズムには、耽美な純文学のような美的センスが感じられますよね。

時代と重なり合った「夜永唄」

リリースから1年弱が過ぎた2020年春に『夜永唄』が注目された理由には、やはり新型コロナウィルスによる外出自粛が大きく影響していると言われています。

特に若者世代に人気のTikTokに、この曲をBGMにした切ない恋物語やギターの弾き語り動画の投稿が急増しました。


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こうして心ごと閉じ込めて
あなたが弱り切った僕から離れないように
≪夜永唄 歌詞より抜粋≫
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学校は休校に入り、仕事は出勤日が減り、急激に時間に余裕ができた若者たち。

その中で、失った恋人のことを思い出す人も多かったでしょう。

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あなたに逢えば二人はもう
友達に戻れないと分かっていた
≪夜永唄 歌詞より抜粋≫
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もともとは友達だった二人が付き合うようになり、別れた今は友達にすら戻れない。


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この目や耳や鼻や口や身体中の五感
全てはあなたの為にあるように
≪夜永唄 歌詞より抜粋≫
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今でも街中で似た人を見かけたり、一緒に聴いた音楽が流れてくれば反応してしまう。

そんなことを考えながら、眠れない夜を過ごす若者たちの心情に『夜永唄』の歌詞が刺さったのかも知れません。

また、公式サイトで「美しき音のカオス」と表現される世界観が、出口の見えない漠然とした不安感を抱く若者たちの共感を呼んだのではないでしょうか。

「神はサイコロを振らない」とは


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何度願っても触れる事さえ叶わない
枯れ果てたはずの涙がまた零れて
≪夜永唄 歌詞より抜粋≫
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失った恋人への想いを綴ったこの曲は、恋人の死をも思わせる喪失感を響かせてエンディングを迎えます。

バンド名の「神はサイコロを振らない」とは、物理学者アインシュタインの名言。

「自然界の物事には必ず何らかの法則がある」と考えるアインシュタインが、偶然に結果を左右される「量子力学」を批判した言葉だと言われています。

2020年のこの世界的な困難にも、偶然ではなく何らかの「理(ことわり)」があるのならば『夜永唄』のヒットも、2020年の必然だったのかも知れません。

この先、中止になった公演が再開されていくことを願いながら、神はサイコロを振らないの活躍に注目していきましょう。


TEXT 岡倉綾子

ボーカル柳田周作、ギター吉田喜一、ベース桐木岳貢、ドラム黒川亮介からなる福岡発4人組ロックバンド。 2015年結成以降、ライブシーンのど真ん中で経験値を積み上げる中、2020年「夜永唄」がバイラルヒットし、7月に1st Digital SG「泡沫花火」でメジャーシーンへ進出。 11月には1st Digita···

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