MONGOL800の名曲にインスパイアされた感動の物語
2019年公開の映画『小さな恋のうた』は、沖縄の高校生たちが音楽とバンドを通じて成長していく青春映画です。
沖縄の人気ロックバンドのMONGOL800が2001年にリリーズした、平成を代表する同名楽曲がモチーフとなっています。
当初は映画化の予定はなく、メンバーを昔から知っている企画プロデューサーの山城竹識が、MONGOL800のいくつかの楽曲をドラマ化しようと計画したことから始まったプロジェクトだったそうです。
脚本は、短編アニメーション『つみきのいえ』で米アカデミー賞を受賞した平田研也が担当。
監督は、映画『羊と鋼の森』や『雪の華』と音楽をテーマにした作品を務めた橋本光二郎が担当しています。
沖縄での取材を重ねて8年の構想を経て完成した本作は、音楽が持つパワーを伝える映画となっています。
楽曲を飛び越えて新たな魅力を生み出した、本作のあらすじや見どころを紹介しましょう。
バンドを通して成長する沖縄の高校生たち
舞台は、沖縄の小さな町。
米軍基地が据えられ、1枚のフェンスを隔てて日本とアメリカが共存する地域です。
高校の軽音部に所属するボーカルの真栄城亮多、ギターの譜久村慎司、ベースの新里大輝、ドラムスの池原航太郎は、来たる文化祭での演奏のため練習に励んでいます。
周囲の迷惑を避けるため、学校の規則で窓を閉め切って練習することになっていましたが、練習小屋から漏れ聞こえる演奏を聞きつけた生徒たちが集まってきました。
テンションが上がった亮多が部屋の窓を開けたため、瞬く間にライブのような盛り上がりに。
しかし、あまりの騒動に教師から部室の使用禁止を命じられ、他の部員からも白い目で見られてしまいます。
学校で練習ができなくなった4人が行きつけの練習スタジオに向かうと、オーナーの根間から東京のレコード会社からスカウトマンが来ていることを告げられます。
プロになる意志を確認され、メジャーデビューの夢が現実的になったことを喜んでいました。
一方、慎司はフェンスの向こうに住むアメリカ人の女子高生のリカと交流を持っています。
互いに惹かれ合い、彼女にオリジナル曲を聴かせていることを知った亮多は、2人の恋を応援することに決めます。
ところが、亮多と慎司が共に交通事故に巻き込まれてしまいます。
バラバラになってしまった彼らの元に、慎司の妹が兄の未発表曲を演奏してほしいと1曲のデモテープを持ってやって来たことから、物語が再び動き出します。
友の想いを届けるため、音楽に向き合う高校生たちの青春を描き出すヒューマンドラマです。
映画界注目の若手俳優陣が共演!
本作は、高校生バンドを中心としたストーリーなので、今人気を集めている若手俳優陣の演技に注目が集まります。
主演であり、ボーカルとベースを担当する亮多役を演じるのは、ボーカルダンスユニットのM!LKとしても活動している俳優の佐野優斗。
ギター担当の慎司役を演じるのは、本作が映画初出演ながら存在感を見せたモデルで俳優の眞栄田郷敦。
ドラム担当の航太郎役を演じるのは、高い演技力でドラマや映画に多数出演する俳優の森永悠希。
ベース担当の大輝役を演じるのは、演技の評価が高まっているメンズノンノ出身俳優の鈴木仁。
慎司の妹でギター担当となる舞役を演じるのは、クールな表情で映画やCMに引っ張りだこの女優の山田杏奈。
それぞれにフレッシュで繊細な演技を見せ、等身大の高校生の姿を表現しています。
また、ほぼ楽器未経験者の5人が人気の高校生バンドを演じるに当たり、映画撮影の半年前からバンド練習が始まったそうです。
その結果、周囲が驚くような上達を見せ、作中では音楽への愛とエネルギーを感じる演奏を見せています。
プロからも上手いという感想が寄せられ、MONGOL800の人気曲をカバーする5人組バンド『小さな恋のうたバンド』としてCDデビューも果たしました。
ちなみに、MONGOL800の3人もカメオ出演しているので、どのシーンで登場するかにも注目してくださいね。
ただの青春物語とは一線を画す社会派ストーリー
本作は『小さな恋のうた』というタイトルから、ラブストーリーを中心とした映画のように思うかもしれません。
しかし、実際は舞台である沖縄が抱える問題をベースにした、社会派の側面もある作品です。
沖縄と米軍基地は、切っても切れない関係にあります。
作中で取り上げられている、米軍基地の敷地内に住む子供とフェンス越しに知り合うというエピソードも、実際にあることだそうです。
同じ県内にいながらも別の国であるかのように隔てられ、不和が生じている現状があります。
とはいえ、映画で米軍基地への問題提起をアピールしているわけではありません。
生活の根底に染み付いているからこそ、あえて口には出さない沖縄県民と米軍基地のリアルな距離感が分かり、地元の人たちの感覚を知る機会になるでしょう。
同時に、米軍基地にいる人たちの人間らしい一面も見え、中立の視点で問題を向き合うことができます。
そして、本作で重要になるテーマが音楽です。
作中では、MONGOL800の『小さな恋のうた』『あなたに』『DON’T WORRY BE HAPPY』『SAYONARA DOLL』の4曲が披露されます。
楽曲とストーリーがうまくリンクしていく構成が見事で、名曲たちの魅力を再発見できることも魅力です。
また、それらの音楽を通して、高校生たちが悩みながらも前へ進んでいく様子が感じられます。
自分たちではどうしようもない現実を前にしながらも、彼らが人として成長できたのは、音楽の持つパワーとメッセージが希望を与えるからでしょう。
山積みの問題の中心で、仲間と共にひたむきに音楽とバンドに打ち込む高校生たちの青春の結末が、爽やかな感動を呼びます。
MONGOL800の「小さな恋のうた」の魅力を再発見できる
本作の主題歌は、小さな恋のうたバンドがカバーするMONGOL800の『小さな恋のうた』です。
MONGOL800のサポートメンバーである宮内陽輔によって、原曲よりゆったりとしたテンポにアレンジされ、爽やかな明るさを演出した1曲になっています。
シンプルなサウンドで、ドラム・ギター・ベースのそれぞれの音色が絶妙にマッチしていくリズム感の良いメロディが特徴です。
歌詞には、島で生まれ育った男女が、手紙のやり取りを通して絆を深めていく様子が描かれています。
小さな恋心の儚くも真っ直ぐに互いを想い合う気持ちをストレートに表現し、何度も聴きたくなる印象的なフレーズが詰まってます。
力強くも優しい歌声が歌のメッセージを心に沁み込ませ、男らしさが滲む原曲とは違う味わいを見せていますよ。
PVでは、5人がそれぞれの場所で演奏する映像が組み合わされ、映画の余韻を感じる構成になっています。
原曲と合わせて、小さな恋のうたバンドのカバー曲も楽しみましょう。
「小さな恋のうた」は大きな愛を感じる名作!
画像引用元 (Amazon)
MONGOL800の名曲から生まれた映画『小さな恋のうた』は、音楽の魅力と友情の強さを実感できる作品です。
作中でも描かれるように、国境をはじめとする様々な問題が、友情や恋の絆を深めていくことをはばむ場合があります。
しかし、音楽に込められたメッセージと、音楽を愛する強い気持ちが彼らに奇跡を起こします。
絆を育む一番の方法は、好きなものを大切にすることだと感じさせてくれるはずです。
映画『小さな恋のうた』を観て、ぜひ音楽の力を存分に味わってください。
TEXT MarSali
小さな恋のうたバンド 公式サイト:https://www.universal-music.co.jp/jp/chiikoi/