みんなには共通点がある
想像してみてください。あなたの周りにはどんな人がいるでしょう?笑いのツボが合うし尊敬していて大好きー!て人や、ほんっと無理、信じられない、仲良くなれないなりたくもないといった人…。
そんな風に、きっと色んな人がいるでしょう。
でも、それはあなたから見た誰かの印象で、他の人からすれば、あなたの大好きな人が大嫌いだったりします。
しかし、そんなあなたの周りの人達にもただ1つ共通点があります。それは、彼らはみんな、ファイターだということです。
相思相愛!コラボ作品「ファイター」
2014年の11月28日に発売された、BUMP OF CHICKENのファイターと羽海野チカ先生の3月のライオン。お互いがお互いの大ファンだったということがキッカケでこのコラボが始まりました。3月のライオンの10巻にBUMPのファイターのCDが付属され、配信されるファイターに3月のライオンのスピンオフが付いてくるという、何ともお互い様で優しいコラボ。
「3月のライオン」は幼くして両親を亡くし、プロ棋士を目指す少年、桐山零を主人公にした、温かくもヒリヒリした場面のある人間物語です。この物語と音楽に共に触れると、強く一つのメッセージが残ります。
----------------
気付いたらもう嵐の中で
帰り道がわからなくなっていた
記憶の匂いばかり詰めた
空っぽの鞄をぎゅっと抱えて
≪ファイター 歌詞より抜粋≫
----------------
最初のメロディーにのせて伝わる歌詞を聞くと、今の自分がまざまざと思い知らされます。誰もが進むしかない時間の中を生きていて、そのうちにどこから来たのかわからなくなることってありますよね。
三月のライオンの中では、桐山君がなぜこれまでずっと自分は将棋を指してきたのか。なぜ、高校生をやり直したのか。と考える場面がリンクすると思います。
決して、止まれない
----------------
止まったら消えてしまいそうだから
痛みとあわせて心も隠して
振り返ったら吸い込まれそうだから
今を繰り返す 臆病な爪と牙
≪ファイター 歌詞より抜粋≫
----------------
何かを続け始めた当初は、明確な目標や目的があったはずなのに、必死に何かをすると同時に流れた時のなかでそれらが分からなくなってしまったり、はたまた自分の意識の外で、そんな目標は忘れてしまったとだましていることだってあります。
ですが、だからと言って後ろを振り返ったり、止まることはできないんです。なぜなら、それをするほうが怖いからです。臆病だから強く進むことしかできません。
----------------そして自分の鞄を、つまり今までに自分が獲得して大事にしまっている物をのぞいてみると、パッと見て空っぽ。
空っぽの鞄は空っぽで
愛しい重さを増やしていく
重くなる度怖くなった
潰さないように抱きしめた
≪ファイター 歌詞より抜粋≫
----------------
いったい何をしてきたのかと不安になります。でもそれが自分のすべてです。
お金や名声などないものを見ると空っぽだけれど、愛しくて守れるか不安になるほどの目に見ええない重みをもった思い出、友達、家族、今の自分をみつけます。
目には見えないもの、言い換えると空っぽを私たちは大事に日々生きていくべきなのでは、と気づかされます。
----------------
涙超えた言葉が
その鼓動から届き勇気になる
君がいるそれだけで
ああ まだ温かい
いくつもなくなったあとに
強く残った ひとつ残った
≪ファイター 歌詞より抜粋≫
----------------
2番に入ると、誰かの存在を感じさせる「その声」「自分のじゃない足音」「君」という言葉が現れます。
それは、友達や家族、この楽曲そのもの、自分のなかにいる違う視点を持ったもう一人の自分など様々な誰か、何かと関わって前に進んでいることに気づかされます。
三月のライオンでも、桐山零くんが気づかぬうちに川本家や研究会のメンバー、担任の林田先生や棋士のライバルとの絆が太く強くなっていることを感じるシーンがあります。
この二作品には、受けとる私たちをはっとさせる瞬間がそれぞれあり、その瞬間がどちらも同じことを伝えようとしている時に起こる、偶然のお揃いが何度もあるんです。このコラボは、偶然のように見えて実は必然だったのではないかと思ってしまいます。
勇気をもって進め
後戻りすること、大事な空っぽ(友達やお気に入りの記憶など)が潰れてしまうことが怖い臆病な私たちは、それを守るためにも進むしかなく、でもそれができるのは大事な空っぽの持つ温度のおかげです。守ろうとして逆に守られているんです。臆病だから闘って進むしかない、ファイターなんです。漫画の悪者も、あなたの嫌いな人も、日々進むしかない私たちはファイターなんです。
自分に何もなくなっても、自分はファイターであるという過去と今と未来があれば、どこまでも臆病なりに強く前に進んでいける、そんな勇気をくれる楽曲です。
2015年末の紅白歌合戦では、rayを披露したBUMP OF CHICKEN。今年も活躍が楽しみです。
TEXT:大川
BUMP OF CHICKENは、トイズファクトリーに所属する4人組のロックバンド。独特な世界観とボーカル藤原の圧倒的歌唱力、更にはドラマの他、アニメやゲームとのタイアップ曲も多く、幅広い年齢層から支持を集めている。 幼稚園時代からの幼馴染であり、1994年、当時中学校の同級生であった4人が、文···