「愛迷エレジー」は解釈の余地が多い楽曲
2010年に人気ボカロP、DECO*27が発表した『愛迷エレジー』。ボーカルはシンガーソングライターのmarinaが担当しています。
marinaはアニメ『Angel Beats!』に登場するバンド「Girls Dead Monster」の初代ボーカル岩沢まさみの歌い手を務めたアーティスト。
また、2013年には初音ミクが歌うセルフカバーも投稿されました。
DECO*27はこの楽曲についての詳細を語っていないため、聞き手に解釈が委ねられています。
よく噂されているのは「中絶を考えていた少女説」。
今回は、なぜこの説が有名なのかについても触れながら『愛迷エレジー』の歌詞を見ていきましょう。
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「どうやら泣きすぎたみたい」とキミは笑う
どうにも笑えない。 こうにも笑えないよ。
たぶん、裏たぶん アタシのとある言葉のせい
いや、気のせい? …脳の味噌も呆れてます。
≪愛迷エレジー 歌詞より抜粋≫
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「泣きすぎたみたい」と言う「キミ」に「アタシ」は笑えない、と思っていました。
泣きすぎた理由に彼女は心あたりがあったようです。どうやら彼が傷つくようなことを言ってしまったようですね。
しかし、彼女は自分のせいで泣かせてしまったことを心のどこかで認めたくないのか「気のせい?」と思い込もうとしています。
同時に、「キミ」を泣かせたのは自分の癖に、と非を認められない自分に対して呆れてもいるようです。
中絶を考えていた、とするとつじつまが合う
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そろそろ助けようか 恐怖も引き連れてさ
雑巾絞るように 勇気もアレしちゃおう
だけどさ怖いんだよ ガタがアシアシだよ
フラフラで そのまま堕ちる
≪愛迷エレジー 歌詞より抜粋≫
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助けよう、と彼女は考えていますがそれにはとてつもない恐怖が付きまといます。
雑巾を絞るように、と例えれらています。それは勇気を絞る、という言葉を連想させています。
しかし助けようと決心しても動けなくなるほどの恐怖があるようです。
ここで「中絶を考えていた説」を思い出してみましょう。
その説を前提に考えると「キミ」が泣いた理由と、なぜ助ようとすると恐怖に襲われ、勇気が必要になるのか、ということがわかります。
「キミ」が泣いたのは、「キミ」と彼女の間に出来た子どもを中絶させようという考えを彼女が告げたから。
しかしその中絶も彼女は本当はしたくなく、お腹の子どもを助けたい、と考えています。
「そろそろ助けようか」という歌詞の助ける対象は泣いている「キミ」ではなく、お腹の子どもなのではないでしょうか。
助けるということは中絶ではなく出産することになりますが、出産の場合は中絶以上に困難が多くなります。
「キミ」や彼女の年齢について書かれていませんが、まだ出産が一般的でない年齢の場合は出産や育児の負担は大きくなりますし、周囲の理解も得にくいですよね。
「泳ぐエレジー」の意味とは
----------------涙を「アタシ」が飲み込む、ということから「キミ」の悲しみの原因になっていた中絶の選択は選ばず、子どもを産む決心をしたようです。
溢れるなら 零れるなら このアタシが その涙を
飲み干そうか そうしようか 水太りは 気にしないけど
≪愛迷エレジー 歌詞より抜粋≫
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水太りは妊娠してお腹が大きくなっていく様子を表していると考えられます。
それは彼女からしたらさほど気にならないことのようです。
しかし彼女には心配事がありました。
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塩辛いのは ちと辛いな だってアタシ 甘党だし
だからキミの 甘い愛が また欲しいから 目を覚まして欲しいな
泳ぐエレジー
≪愛迷エレジー 歌詞より抜粋≫
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それは周囲からの当たりが更に強くなることや、様々な不安から精神が揺らいでしまうことでした。
塩辛い、というのは涙を指していて、きっと彼女自身が流した涙。
それを「ちと辛い」と言っていますが、それは彼女の強がりで、実際はもっと辛い思いをしているのでしょう。
「目を覚まして欲しい」という言葉も「キミ」に対してではなく産まれてくる子どもに向けているように思います。
眠っているのではなく、早く産まれてきてその顔を見せて欲しい、という思いが込められていいるのかもしれません。
ここに出てくる「エレジー」とは哀歌や悲歌を指している言葉です。
泳ぐ哀歌、というのは決して楽とは言えない道に足を踏み入れ、そこで揺れ動く彼女や「キミ」の心情を表していたのでしょう。
こうしてみると「中絶を考えていた少女説」はしっくりくる説で、有名になるのも納得できるのではないでしょうか。
しかし解釈というのものは十人十色で、正解はありません。
『愛迷エレジー』を自分なりに考えてみると、新しい見方で楽曲を聴くことが出来て面白いですよ。
TEXT Noah