「ぴえん」のうたとは?
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ぴえん…
ぴえん…
ぴえん…
ぴえん…
≪「ぴえん」のうた 歌詞より抜粋≫
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2020年2月21日にYouTubeへアップロードされてから、インターネット上で口コミが広がり注目を集めた、針スピ子『「ぴえん」のうた』。
「ぴえん…ぴえん…ぴえん…ぴえん…」という歌い出しから始まる、繰り返し聴きたくなる中毒性を持った楽曲は、一躍流行歌となりました。
この楽曲は無意識に口ずさんでしまう程の影響力を与えましたが、それと同時に楽曲について様々な疑問を抱いた方も多くいるのではないでしょうか?
「そもそも「ぴえん」って何?」
「針スピ子って誰?」
「なんでこんなに流行っているの?」
そんな疑問を解消するべく、まずは「ぴえん」とは何かを解説しましょう。
「ぴえん」とは、泣いている様子を可愛らしく表現した擬音語です。
悲しい時にも嬉しい時にも使用され、深刻さを伴わない涙の擬音語として、主にSNS上で書き言葉として使用されています。
Pleading Faceという絵文字と組み合わせて使用されることが多く、この絵文字だけを「ぴえん」と指すこともあります。
2018年11月頃から女子中高生の間で使用されるようになり、流行を経た現在では男女問わず幅広い世代に浸透しています。
元々「ぴえん」自体が広く知名度を持って使用されていたため、そのトレンドを捉えた『「ぴえん 」のうた』も流行したのでしょう。
アーティスト「針スピ子」についても触れていきましょう。
彼女は「〇〇のうたシリーズ」で歌を担当するアーティストで、その素性は謎に包まれています。
残念ながら、針スピ子自身については明かされていない為、それ以上の情報はありません。
個人的な情報は一切公開していませんが、Twitterアカウントを開設しているので興味を持った方はチェックしてみてください。
「〇〇のうたシリーズ」とは、YouTubeアカウント「〇〇のうた」にアップロードされる楽曲群を指すもので『「ぴえん」のうた』もこの中の内の一曲となっています。
日常の〇〇について歌う「〇〇のうたシリーズ」は、現在20曲を超える楽曲がアップロードされています。
さらにYouTubeだけでなくAppleMusic、Spotifyなどの定額制サブスクリプションサービスでも聴くことが出来ます。
また「〇〇のうたシリーズ」は著作権使用料が無料で、動画作品などで2次利用が可能です。
音楽著作権に厳しい時代の中で、2次利用が可能というのも『「ぴえん」のうた』が大流行した理由の一つでしょう。
この楽曲を使用したフリーホラーゲームが公開されるなど、勢いは止まりそうにありません。
「ぴえん…」に隠れた歌詞を考察
画像引用元 (Amazon)
80年代のアニメソング、もしくはNHKの教育番組を彷彿とさせる平和的でキャッチーなサウンドと「ぴえん…ぴえん…ぴえん…ぴえん…」というフレーズが特徴的な『「ぴえん」のうた』。
サウンドとフレーズのインパクトが大きすぎて、歌詞の内容が頭に入ってこないという方も少なくなさそうです。
そんな埋もれがちな歌詞の内容を、この記事では考察していきます。
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ぴえん…
切なくて泣いている時は
優しく抱きしめてなぐさめて
あゝそれだけ
≪「ぴえん」のうた 歌詞より抜粋≫
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歌い出しの歌詞はこのようになっています。
冒頭から4回繰り返される「ぴえん…」は涙の強調と受け取れます。
「ぴえん」の単語が持つ意味を先述しましたが、この歌詞内ではその意味は異なります。
「ぴえん…」に続く歌詞は「切なくて泣いている時は 優しく抱きしめてなぐさめて あゝそれだけ」とかなり切実な様子です。
「ぴえん…」などと言っている場合ではなさそうですね。
つまり、この歌詞上での「ぴえん…」は辛い気持ちを隠す強がりの表現だということになります。
「優しく抱きしめてなぐさめて」欲しいのに、そうしてもらうことが出来ない辛さを「ぴえん…」とふざけて誤魔化すことで、自分の気持ちを隠しているのです。
このフレーズは後に繰り返され、この楽曲のサビに該当します。
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一人ぼっちの部屋
スマホを眺めても
モノクロの心には
彩りは戻らない
≪「ぴえん」のうた 歌詞より抜粋≫
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このフレーズから恋人にフラれて失恋をしている状態ということがわかりますね。
恋人ではなく誰か親しい人物との別れに心を痛めている可能性もあります。
しかし「スマホを眺めても」という歌詞から、スマホで頻繁に連絡を取り合っていたことを懐かしむ様子が推測出来るので、恋人との別れを哀しんでいるとみていいでしょう。
また、フラれたり失恋をした訳ではなく、恋人との会えない時間を寂しがっている可能性も捨て切れません。
ですが「モノクロの心にはもう色は戻らない」という表現から、取り返しのつかない別れが訪れたことがわかります。
自分から別れを切り出した場合には「もう色は戻らない」とは言わないでしょう。
「ぴえん」のうたを聴いて笑顔になろう
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何にも言わなくていい
ただそばにいてくれたら
そんなことを想って
夜空ばかり見ていた
不意に涙が溢れ出す
綺麗な星空見えないよ
≪「ぴえん」のうた 歌詞より抜粋≫
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別れた恋人のことが忘れられず、また一緒になれたらと願う場面です。
忘れられない人を想いながら夜空を眺めて涙を流すのは「使い古された古典的な表現で稚拙だ」という意見の方もいるかもしれませんが、決してそうだとは思えません。
この歌詞には先ほどのサビが続きます。
つまり、星空が見えなくなるほどの涙を流しながら、それを「ぴえん…」と誤魔化しているのです。
視界を遮るほどの涙を流しているという事は、その悲しみや想いはとても大きいものでしょう。
その感情を押し殺し、悲しみを受け入れて前に進む為に、もしくは恋人に愛されていた頃のように可愛い自分でいたいという強い想いから「ぴえん…」という言葉を使っているのです。
この楽曲において「ぴえん…」はただ涙を流すだけの表現ではありません。
それは自分を欺くための自己暗示でもあり、新しい未来へと向かう決意の一歩でもあります。
元々流行していた「ぴえん」という言葉にただ乗っかっただけの楽曲と思われがちですが、この楽曲には失恋から立ち上がるための勇気が込められています。
皆さんがもし辛い別れを経験した時には『「ぴえん」のうた』を思い出して、勇気をもらってみてはいかがでしょうか。
「ぴえん…ぴえん…ぴえん…ぴえん…」と呟けば、涙も笑顔に変わるかもしれません。
TEXT 富本A吉