唯一無二の世界観を誇るSEKAI NO OWARI
SEKAI NO OWARI(セカオワ)は2010年に『幻の命』でインディーズデビューし、2020年で10周年を迎えました。
メンバーはFukase、Nakajin、Saori、DJ LOVEの4人で『Dragon Night』『RAIN』『RPG』などのヒット曲が挙げられます。
楽曲やライブ演出の唯一無二の世界観で、多くの人を魅了しているセカオワ。
この記事では、彼らの節目のスタートを飾る両A面シングル『umbrella/Dropout』から、テレビドラマの主題歌でもある『umbrella』の歌詞の意味を考えます。
復讐の為に顔を棄てた男と「透明な」傘
『umbrella』は、テレビドラマ「竜の道 二つの顔の復讐者」の主題歌として制作されました。作詞をしたFukaseはドラマの脚本を読んだり、監督やプロデューサーにも会ったとコメントの中で述べています。
この曲の魅力の一つはドラマの世界観が、セカオワならではの感性に彩られて瑞々しく表現されていることだと思います。
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鏡に映る私は透明だった
分かってた事でも知らないままの方が良かった
私は君を濡らすこの忌々しい雨から
君を守る為のそれだけの傘
≪umbrella 歌詞より抜粋≫
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例えばこの歌詞。
ドラマの内容は、大切な人たちを自殺に追いやった実業家に熾烈な復讐をしかける双子の物語です。
双子の一人は復讐のために顔を整形し、死んだように見せかけます。
大切な義理の妹にさえバレないように存在を消します。妹に災難が降りかからないよう、祈り最善を尽くしているのでしょう。
歌詞では主人公を存在感の薄い「透明な傘」に例えているのでしょうか。とてもアーティスティックで心を打たれますね。
また、このドラマの原作者である作家・白川道は小説「竜の道」を未完成のまま急逝されてしまいました。
小説の続きがドラマで示されることとなり、ファンは楽しみなのではないでしょうか。
復讐だけではなく切ない恋物語も始まりそうな期待を持たせる、まさにドラマチックな出だしです。
「必要とされたい」という切ない心の声
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この雨がこのままずっと降れば
願ってはいけない そんな事は分かってる だけど
君に降る雨が いつの日か上がって青空を望んだら
その時私はきっと
≪umbrella 歌詞より抜粋≫
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この歌詞の中では「雨」は、君に降りかかってくる災難を表しているのではないでしょうか。
嫌なことが君に降りかかってこないことを願っている、その反面君に嫌なことが降りかかってくるときにこそ、自分は必要とされると感じているようです。
雨が降っているときだけ必要とされる傘のように、災難が降りかかっている時にだけそばにいられる。
主人公は透明な傘のように君に気にも留められていないけれど、しっかり君を守っている存在なのかもしれませんね。
”どんなときでも君に必要とされたい”という心の叫びが聴こえるような切ない歌詞ですよね。
傘を人間に見立てる擬人法の表現が光る
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雨が静かに上がり傘立てに置かれた傘
忘れた事さえ忘れられてしまったような
≪umbrella 歌詞より抜粋≫
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短いけれど心に刺さる最後のフレーズです。
自分の存在を傘に例えて、君の心が自分にはないと告げているのではないでしょうか。
また、この部分だけではなく歌詞全体が傘を人に見立てる擬人法で表現されており、とても斬新ですよね。
傘が人を雨から守ろうとしていたり、存在そのものを忘れられてしまったことを、どこか悲しんでいる様子だったり。
まるで歌詞に呼応するかのように、最後のピアノの音色は傘に当たった雨音のようで、とてもロマンチックです。
是非、最後までたっぷりと『umbrella』を味わってくださいね。
TEXT 三田綾子
2010年、突如音楽シーンに現れた4人組バンド「SEKAI NO OWARI」。 同年1stアルバム「EARTH」をリリース後、2011年にメジャーデビュー。 圧倒的なポップセンスとキャッチーな存在感、テーマパークの様な世界観溢れるライブ演出で、子供から大人まで幅広いリスナーに浸透し、「セカオワ現象」とも···