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映画「スワロウテイル」舞台は架空の日本!独特な世界観で描く円を巡る群像劇

岩井俊二監督の代表作であり、独特な世界観にファンが多い映画『スワロウテイル』。架空の日本の町で生きる移民たちの人間ドラマを描くファンタジー作品です。複雑なストーリーながら惹きつけられる本作の不思議な魅力を紹介します。
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お金がすべての世界に見る幸せの価値


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1996年公開の映画『スワロウテイル』は、岩井俊二監督が手がけたファンタジー作品。

監督自身が執筆した同名小説が原作で、彼にしか撮れない独特な世界観を放つ映画として根強い人気があります。

映画界でも高評価を得ており、高崎映画祭の3部門で最優秀賞、日本アカデミー賞でも3部門を受賞。

さらに、作中で登場する架空のバンド「YEN TOWN CLUB」も注目され、オリコンチャート1位を獲得する人気となりました。

現在も動画配信サービスにて無料で視聴することが可能なため、昔変わらずファンが多い作品となっています。

年月を経ても多くの人の心に残る本作のあらすじや見どころを、予告動画と共に紹介します。

お金に支配された人々に訪れる悲しい結末とは

▲YEN TOWN BANDの主題歌も大ヒット!2016TIFF上映『スワロウテイル』予告編

世界で円が最も強い通貨だった時代。

円を扱う日本は「円都(イェンタウン)」と呼ばれ、祖国のために円を稼ごうと集まってきた移民であふれていました。

一方、日本人は移民の存在を嫌って「円盗(イェンタウン)」と呼び、蔑んでいました。

そんな中、ある少女は娼婦をしていた母を突然亡くします。

独りぼっちになり、少女売春の店に売られそうになったところを、娼婦の1人で胸にアゲハチョウのタトゥーを持つグリコに助けられ、アゲハと名付けられます。

歌が好きな彼女は、同じく中国系の円盗のフェイフォンとヒョウが営む何でも屋「あおぞら」で、多くの円盗たちに歌を聞かせていました。

少女はその店で、彼女の妹としてアルバイトをしながら生活することに。

明るさを取り戻し始めた矢先。

彼女の客である暴力団の男が少女を犯そうとしたため、止めに入った住民が一撃をくらわせると、窓から転落しトラックに轢かれて死亡してしまいます。

死体の腹から、なぜかフランク・シナトラの「マイウェイ」が収録されたカセットテープを発見。

解析すると、テープには1万円の偽札データが書き込まれていました。

急遽大金を手に入れた円盗たちの数奇な運命をたどる人間ドラマを描いた群像劇です。

日本を代表する豪華キャストの演技が魅力的



本作は、現在ではなかなか実現できない豪華キャストが出演しています。

主人公のアゲハ役は、女優の伊藤歩が演じています。

当時16歳で、少女の脆さや成長を繊細に表現し、大胆なヌードシーンにも挑戦するなど大注目を集めました。

少女を救うグリコ役は、歌手のCharaが演じています。

エキゾチックな表情と声色が魅力で、娼婦という役どころにマッチする艶のある演技を見せています。

物語を動かすフェイフォン役は、俳優の三上博史が演じています。

一貫してグリコを大切に思う気持ちが表情に表れていて、温かな人間味を感じるキャラクターです、

さらに、渡部篤郎、桃井かおり、江口洋介、大塚寧々といった日本を代表する演技派俳優陣が出演しています。

それぞれのキャラクターが存在感を放ちながらも、互いを引き立て合い、不安定さを感じる人々の雰囲気を見事に演出しています。

空想のようでありながら現実的で共感できる世界観



本作の魅力は、詩的な映像で見せる世界観にあります。

舞台は架空の日本で、多くの移民たちが暮らす町。

東南アジアの都市をイメージさせる雑多な風景の中で、日本語や中国語、英語が混じった言葉が行き交い、無国籍な雰囲気が漂います。

日本を描きながらも移民にスポットを当てることで、外国人に対する異物感が拭えない現実の日本人の固執した観方が暴かれています。

とはいえ、岩井俊二監督の作品らしく空想と現実が入り混じる空気感で、嫌みな感じがありません。

そして、作中で日本人と移民を隔てる存在が、最強の通貨となった円。

彼らは大金を手にして生活が一変したものの、待っていたのは喜びだけではありませんでした。

お金を重視する人々の生き方に漂う切なさは、決してお金では買えないものがあることを伝えてきます。

生きていく上で本当に大切なものは何なのかを、じっくり考える機会になるでしょう。



また、本作では少女を通して、アイデンティティが形成されていく様子を見届けることになります。

多くの場合、人はいくつになっても日本人や中国人といった、自分が属している大きなカテゴリで分けられてしまいがち。

しかし、たった1人の自分自身という存在を認められたいとの願いを、誰もが持っています。

本作の少女は、日本で生まれ育ちながらも日本人と名乗ることができず、かと言って中国語がうまく話せるわけでもない、宙ぶらりんの状態です。

そんな自分の存在に疑問を感じていた少女が、周囲の人との関わりによって自身を認めて成長していく姿は、美しささえ感じられるでしょう。

少女がタトゥーを胸に刻んだ瞬間、自分の殻を破り、これから羽ばたいていく決意を固めたことが見えてきます。

その裏で、ただの歌好きの娼婦だった女性が、周囲の評価で自身の存在を確立していく様子も見逃せません。

独特な空気が漂うファンタジー作品でありながら、現実に寄り添い共感できるストーリーに引き込まれます。

「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」は心に残る繊細な名曲




本作の主題歌は、YEN TOWN BANDが歌う『Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜』です。

『YEN TOWN BAND』は、小林武史がプロデュースを務める劇中バンド。

ボーカルをグリコ役のCharaが担当し、メインメンバーとして小林武史と名越由貴夫がキーボードとギターを担当しています。

バンドの代表曲で映画を象徴するこの楽曲は、ノスタルジーなイントロから始まる心地良いミドルチューン。

キーボードをメインに、ドラムのリズムが重なる美しく繊細なメロディに惹きつけられます。

岩井俊二、Chara、小林武史の連作で仕上げたという歌詞には、厳しい世界の中で必死に生きる人たちの姿が描かれています。

グリコを演じたChara自身のコメントによって、よりキャラクターの気持ちに寄り添った歌詞になったそうです。

鼻にかかったけだるげなCharaの独特な歌声が、若く純粋な気持ちを儚く歌い上げます。

切なさが込められているのに、聴く人に一筋の希望を与えてくれる楽曲です。

「スワロウテイル」は変えられない現実を映す傑作!



岩井俊二監督の代表作と言われる映画『スワロウテイル』は、あり得ない世界の中でとても現実的な観方を与えてくれる作品です。

犯罪によって得たお金で、初めは望む暮らしを手に入れますが、その生活はほんの束の間。

むしろ、以前よりもつらく悲しい出来事がいくつも降りかかります。

お金で得られるものは確かにたくさんありますが、お金だけで幸せになれる人は1人もいないことが実感できるでしょう。

ぜひ映画『スワロウテイル』のほろ苦い世界観に触れてください。


TEXT MarSali

●YEN TOWN BAND HP http://yentownband.jp/ ●YEN TOWN BANDユニバーサル ミュージック HP http://www.universal-music.co.jp/yen-town-band/

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