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映画「百万円と苦虫女」不器用でも真っ直ぐ生きる強さを描く、共感できる人間ドラマ!

蒼井優とタナダユキ監督がタッグを組んだ映画『百万円と苦虫女』。前科持ちとなったこときっかけに、100万円が貯まると新しい町へ移り住む旅に出る女性を中心とした人間ドラマです。不器用さに共感できる映画『百万円と苦虫女』の魅力を紹介しましょう。
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不器用な若者が旅を通して得るものとは?


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2008年公開の映画『百万円と苦虫女』は、不器用な女性の旅を映す青春ロードムービーです。

原作は、気鋭の女性監督として注目を集めるタナダユキの描き下ろし小説。

彼女自身がメガホンを取った本作では、日本映画監督協会新人賞を受賞して監督として高く評価されました。

儚い現実の中で、自分なりに真っ直ぐ生きる姿に共感できるというレビューが多い作品です。

女性からの人気の高い本作のあらすじや見どころを紹介します。

100万円貯れば出ていく旅の始まり

就職浪人でバイトの日々を過ごす佐藤鈴子は、ルームシェアを送る家での思わぬ出来事により前科持ちとなってしまいます。

拘置所から出所した彼女は、実家の団地に戻ることに。

しかし、前科持ちとなった娘を腫れ物に触れるように扱う両親と、私立中学を目指す弟、近所の人からの目に肩身の狭い思いを強いられます。

そんな状況に耐えられなくなり「100万円貯まったら出て行く」と宣言。

バイトを掛け持ちして100万円を貯めると、宣言通りに実家を出て、自分を誰も知らない土地へ移り住むことにします。

▲百万円と苦虫女

初めに引っ越したのは海辺の町。かき氷づくりの才能を見いだされて海の家でバイトを始めます。

そこからさらに山間部の村に引っ越し、桃農家で住み込みの仕事を開始。

ところが、深い人間関係を避ける彼女にとって、100万円を貯める間にどちらも居心地の悪い場所になっていき、そそくさと次の町へ引っ越していきます。

次にたどり着いた場所は、地元の東京からほど近い地方都市のある町。

新居近くのホームセンターで働き始めると、同僚で同世代の中島亮平と出会います。

人付き合いを苦手とする彼女を常に優しくフォローしてくれる彼と関わるうちに、互いに想いを寄せ始めます。

彼女が前科持ちだと告白しても、好きだと言ってくれた彼の想いに応え、2人は無事付き合い始めますが、この不器用すぎる恋は簡単には行きません。

居場所を無くした若者が旅を通して得る生き方に魅入られる作品です。

実力派キャストの演技力が光る!



本作には実力派俳優陣が出演しており、その絶妙な演技がストーリーを支えています。

主人公の鈴子を演じるのは、様々な映画で活躍する人気女優の蒼井優です。

この役について「地道に生きている地味な感じが私に似ている」とコメントしており、不器用な女性の姿を等身大で表現。

行く先々で魅力的な表情を見せる繊細な演技が評価され、芸術選奨新人賞映画部門を受賞しています。

恋人関係になる中島役を演じるのは、ダンサーとしても活躍する俳優の森山未來。

ナチュラルな演技から、キャラクターのもどかしいほどの純粋な気持ちが伺えます。

その他のキャストもそれぞれの町を特徴づけ、主人公の心境を浮き彫りにする名演技を披露していますよ。

穏やかな景色の中で過ぎる若者のリアルな人生に共感



本作の魅力は、歯がゆい現実や人の弱さを素直に描きながらも、一貫して前向きなところにあります。

主人公は旅を繰り返していますが、自分探しをしているわけではありません。

むしろ、自分自身と向き合うことから逃げたいと思って、旅を続けているのです。

主人公が語った「探さなくたって嫌でもここにいますから」という言葉は、自身に悩みを抱えている人にとって、心に刺さり共感できる言葉ではないでしょうか。

どこに行こうと、自分自身から逃げることは絶対にできません。

しかし、それを知りながらも旅をすることは滑稽なはずなのに、主人公には他の人には真似できないほどの行動力があります。

自分で目標を決め、行き着いた場所で生活し、目標を達成したら次の町へ向かう。

無理をせず、自分の気持ちや決めたことに忠実な彼女は、実は一番自分を理解している人なのかもしれません。

真っ直ぐ過ぎて周囲からは不器用に見られてしまうとしても、立ち止まることなく進み続ける生き方が、次第に羨ましく思えてくるでしょう。



ロードムービーには欠かせない土地の風景の美しさも、本作の重要な見どころです。

その土地に住み慣れた人にとっては何でもないようなのどかな風景も、移り住む人の目から見ると新鮮さと懐かしさを感じられます。

本作を観る人も、主人公と同じ目線で居心地の良い穏やかな雰囲気に浸ることができるでしょう。

その中で、人との関わりを避けてきた主人公の恋模様にも注目。

もやもやするようなもどかしさですが、そこが人間らしく現実味を帯びています。

そして含みのあるラストは、観る人によって感想が分かれるはずです。

「やわらかくてきもちいい風」は映画の空気とリンクする主題歌




本作の主題歌は、原田郁子が歌う『やわらかくてきもちいい風』です。

原田郁子とは、3人組バンドのクラムボンでボーカルと鍵盤を担当している女性アーティスト。

温かみのある優しい声が特徴で、多くの根強いファンを獲得しています。

この楽曲は彼女のソロ曲で、繊細なピアノのメロディが美しく広がるバラード。

歌詞には、様々な場所へ旅する主人公の姿が描かれています。

過去の出来事の記憶を大切にしながら、風に背中を押されるように少しずつ着実に前へ進んでいく様子が感じられるでしょう。

しっとりとした音楽に重なるまるく優しい歌声が、歌詞と映画内に漂う穏やかな空気感にリンクし、心地良さを残す1曲です。

「百万円と苦虫女」は肩の力を抜いて観られる優しい映画!



映画『百万円と苦虫女』は、自分の生き方に悩む人の心にそっと寄り添ってくれるような作品です。

主人公のように人付き合いが苦手な人や、仕事が思うようにいかない人は少なくないでしょう。

現実は決してフィクションのようにうまくは進まないものの、逃げてばかりでは何も変わらないということを、主人公と共に学ぶことができます。

それでも、説教臭くなく優しい世界観で伝えてくれるので、観た後に爽やかな気持ちになれるはずです。

忙しい毎日にふと疲れを感じる時、ぜひ穏やかな空気が流れる映画『百万円と苦虫女』を観てみてください。


TEXT MarSali

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