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映画「誰も知らない」周囲も親も知らない子どもたちだけの日常が胸に迫る

2004年に国内外で高く評価を受けた、是枝裕和監督の映画『誰も知らない』。母子家庭でありながら、母親にも置き去りにされた4人の子供たちが送る日常をリアルに描く作品です。誰もが知るべき現実を伝える本作の見どころを紹介します。

実際の事件を再現!母親に置き去りにされた兄妹の何気ない日常を知る

2004年公開の映画『誰も知らない』は、是枝裕和監督による3作目の長編作品です。

1987年に実際に起きた「巣鴨子供置き去り事件」をモチーフに制作。

この事件は父親の違う4人の子供が、母親の帰って来ない家で子供たちだけで生活。

発見された時には下の子供2人が命を落としていました。

映画のため変更された部分もありますが、残酷で悲しい出来事を15年の構想を経て、ドキュメンタリー風にリアルに描いています。

国内外で様々な賞を受賞し、高い評価を受けた本作のあらすじや見どころを紹介しましょう。

子供たちだけがひっそり暮らすアパートの一室

▲誰も知らない

あるアパートに引っ越してきた親子。

母親の福島けい子は息子の明を連れ、大きなスーツケースを持って入居します。

そのスーツケースから出て来たのは、次男の茂と次女のゆきです。

そして長女の京子が、誰にも気付かれないようやって来て、家族と合流します。

この4人の兄妹は、母親は全員同じですが父親はバラバラで、出生届さえ出されていません。

そのため、学校に通いたいと願っても叶わず、母親は大家に多くの嘘をついて、子供たちをこっそり生活させることに。

母親がいない間、唯一外出が許されている明が弟妹たちのために弁当などを買いに行く毎日です。

そんなある日、母親は明に好きな人が出来たことを伝えます。

その人と結婚すれば学校にも行かせてあげられると話し、それからしばらく帰って来なくなりました。


少ない現金だけが送られてくる、母親不在の家族。

次第にお金は底を尽き、明は万引きをしたり「父親」に金の無心まですることに。

一度帰って来た母親がまた戻らなくなってから、仕送りはなくなり、ライフラインが全て止められてしまいました。

仕事を退職し、違う姓を名乗るようになった母親にもう帰って来ないことを悟った明は、まだ母親を信じている弟妹たちのために何とか生活を続けようと奮闘。

しかし、思い通りにならない生活に苛立った明が家を飛び出し、戻って来た時には驚きの状況を目の当たりにすることになります。

親に見捨てられた子供たちの毎日を映し出す日常ドラマです。

無名の子役たちがキャストとして活躍

画像引用元 (Amazon)

本作の中心となる子供たちを演じるキャストは、オーディションで選ばれました。

主演を務めた柳楽優弥は、当時14歳。

本作が俳優デビュー作でありながら、弟妹たちを支える責任感と自由を得たい気持ちの間で揺れる、微妙な感情を繊細に表現しています。

その演技が評価され、カンヌ国際映画祭最優秀主演男優賞を日本人初、最年少で受賞する快挙を成し遂げました。

弟妹役の北浦愛、木村飛影、清水萌々子も演技とは思えない自然な演技で、子供たちの素直な雰囲気を見事に表現しています。

これは是枝裕和監督の、台本を渡さない演出方法によるものなのでしょう。

撮影当日にセリフだけを伝えられ、あえて細かく演技指導をしないことで、本当の日常を切り取ったような映像に仕上がっています。

ネグレクトをしている母親役のYOUも独特の空気を持っていて、大人の無責任さがはっきり出ています。

比較的セリフが少ない映画で、それぞれの行動や表情が語る部分が多いので、どのシーンも見逃せません。

観る人に知ることを求める静かな世界観


本作の特徴は、ネグレクトを受ける子供たちの日常を追う構成にあります。

彼らは母親が帰って来ないことに慌てることなく、送られてくるお金で食い繋ぐ毎日です。

初めから不自由な生活がどんどん過酷さを増し、長男の負担が大きくなっていきます。

弟妹たちが知らない外の世界で10代の男の子が1人で責任を背負う様子が、淡々と当たり前の生活として描かれていることに違和感を覚えるでしょう。

しかし、これが彼らにとっての日常であり、どこかで起きている現実であることを理解させられます。

そして、母親が帰って来ることをまだ信じ続ける子供たちに、切なさがこみ上げてくるでしょう。

どんなにダメな母親でも、子供にとっては大切なたった1人の母親なのです。

その事実が彼らの生活にはっきりと表れていて、余計に胸が締め付けられます。


母親も周囲も「誰も知らない」彼らの毎日を画面越しに見つめている私たちにとって、このタイトルは何だか皮肉めいています。

この構図はまるで、彼らの現状に気付いていながらも、何もしなかった大人たちの1人になっているようです。

大人1人が少しの行動を起こしていれば、その生活は変わったのかもしれません。

本作では子供を置き去りにした母親を断罪することも、気付けなかった周囲の人間を責めることもしていません。

それは彼らが悪でないからではなく、子供たちの感情というもっと目を向けるべき大切なものがあるからなのでしょう。

誰も知らないのなら、誰かが知るよう観る人に託しているのかもしれません。

本作には誰もが心に留めたいメッセージが詰まっています。

「宝石」は暗くも輝きを感じる主題歌

▲宝石/タテタカコ【公式】


本作の主題歌は、シンガーソングライターのタテタカコが歌う『宝石』です。

彼女の書く独創性のある歌詞が本作に大きく関わったそうで、主題歌にも選ばれました。

ピアノのシンプルな演奏をメインに、時おりオカリナの温かな音色も加わり、穏やかなメロディが繰り返されます。

歌詞には、主人公である明の心情がつづられているようです。

漂う切なさの中にも、命の強さを感じる詩的なフレーズが連なります。

透明感のある伸びやかな歌声が真っ直ぐ語りかけるように歌い、すっと心に沁み込む美しさが感じられるでしょう。

本作が描く暗さが付きまとう日常で、必死に生きる子供たちの命の輝きを表現するぴったりの主題歌です。

「誰も知らない」は誰もが知るべき現実を描く映画!


是枝裕和監督が手がける映画『誰も知らない』は、今なおなくならない児童虐待の実態を映し出した作品です。

多くの人にとってあり得ない光景が繰り広げられ、観るのがつらく感じる人もいるでしょう。

しかし、この恐ろしい現実をなくすためには、1人でも多くの大人たちがこの現状を知らなければならないのです。

ここに描かれているのは、知らないだけであなたの身近でも起きているかもしれない日常です。

映画『誰も知らない』を観て、その現実に触れてみてください。


TEXT MarSali

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