「桐島、部活やめるってよ」とは
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映画『桐島、部活やめるってよ』の原作は、朝井リョウが早稲田大学文化構想学部在学中の2009年、第22回小説すばる新人賞を受賞しデビューした同名の青春小説。
タイトルにもなっている「桐島」は本編には直接登場せず、伝聞のみで語られるという斬新な切り口の青春ストーリー。
映画『桐島、部活やめるってよ』は、2012年8月11日に公開されました。
第36回日本アカデミー賞では最優秀作品賞を含む3部門で最優秀賞を受賞し、出演者である東出昌大、橋本愛も新人俳優賞を受賞しました。
他にも、第34回ヨコハマ映画祭、第67回毎日映画コンクール、第17回日本インターネット映画大賞など、日本の主要映画賞を総なめするほどの大ヒット作となりました。
一つのうわさがすべての始まり
ある金曜日、バレー部キャプテンの桐島が急に部活を辞めたという噂が、学校中を駆け巡ります。
桐島は、誰もが一目を置くスクールカーストトップの存在。
学業もスポーツもオールマイティで、彼女もスクールカーストトップの美人女子高生・梨紗です。
その彼がなぜ突然部活を辞めてしまったのか。
その理由は誰にもわかりません。
桐島と友達である宏樹たちですらも、連絡をとることができないのです。
一方映画部の前田は、周囲に惑わされることなく、自分たちが撮りたい映画(=ゾンビ映画)を撮ることを決意。
宏樹に片思いを続ける沙奈も、彼を吹っ切ろうとようやく決心します。
そんな時、桐島が屋上に来ていると聞いたバレー部、彼女である梨紗とそのグループ、宏樹たちが大急ぎで屋上に駆けつけるのですが、桐島はおらず映画部の撮影の邪魔をしただけ。
撮影の邪魔をされて腹を立てた映画部と乱闘騒ぎになり、スクールカースト上位も下位も関係なく、屋上は大混乱になっていきます。
思春期をリアルに描く傑作!
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スクールカースト最下位ながら、自分が夢中になれるものを持つ前田。
スクールカースト上位で人に羨ましがられるが、目標を持てない宏樹。
そして、桐島という存在に振り回される同級生たち。
しかし、なぜ部活を辞めたのかは最後までわからずじまいです。
屋上にいたのが果たして桐島だったのかも、解明されることはありません。
謎を謎のまま残しながら、ヒーローがいなくなった学校の混乱図を描き出しているのです。
目標や自らの中心となる存在がなくなり、心に穴の開いた日々をどう過ごすのか、誰の心にも刺さるテーマですね。
また『桐島、部活やめるってよ』は、思春期特有の悩みや葛藤をリアルに描いた作品です。
出てくるキャラは、どれも「あぁ、こんな人いるな」と思わされる人物ばかり。
原作は「人」で物語を切り取ったオムニバス形式となっていますが、映画では「時間」で物語を切り取っています。
時間軸を巻き戻した別の人の視線の移ろいで、それぞれの心情を描き出していく映像のセンスが素晴らしいですよ。
初々しい表情も堪能できる
映画『桐島、部活やめるってよ』は「美しい星」などを手掛けた吉田大八が監督を担当しました。
≪キャスト≫
前田涼也:神木隆之介
東原かすみ:橋本愛
菊池宏樹:東出昌大
飯田梨紗:山本美月
野崎沙奈:松岡茉優
宮部実果:清水くるみ
出演陣の演技の上手さについては、言うまでもありませんね。
子役のころから変わらぬ活躍を続ける神木隆之介は、映画によってキャラの差が激しいですが、それでも違和感なく演じ切るほどの実力派。今作でもその力をいかんなく発揮しています。
今や人気女優となった松岡茉優はこの作品が出世作であり、当時モデル活動をしていた山本美月はこの作品を機に数多くの映画やドラマに出演し始めました。
映画『桐島、部活やめるってよ』は、当時はまだ若手の一人だった彼らの、初々しい表情や演技を見ることができる貴重な作品と言えますね。
前を向く主題歌「陽はまた昇る」
映画『桐島、部活やめるってよ』の主題歌『陽はまた昇る』は、シンガーソングライターの高橋優が担当。
高橋優は今までに、映画『パパはわるものチャンピオン』主題歌やアニメ『orange』OPテーマなど、数えきれないほど多くの主題歌やCMソングを手掛けています。
『陽はまた昇る』のMVでは、神木隆之介演じる前田の「その後」が描かれており、『桐島、部活やめるってよ』の感動が再びよみがえります。
イントロから心をつかまれる『陽はまた昇る』は、激しさを内に秘めた旋律と歌声に魅了されます。
「たとえ明日を見失っても 明けぬ夜はないさ」など、勇気を与えてくれる歌詞に心が震える人も多いのではないでしょうか。
メロディも素晴らしいですが、歌のパワーも素敵ですね。
とても力強く背中を押してくれる名曲です。
考えなくてもいいから、ただ感じよう
映画『桐島、部活やめるってよ』は、なんとも言えない余韻にひたれる作品。
誰もが高校生の頃に感じた空気感を上手く投影しており、答えを求めようとする必要はありません。
映画『桐島、部活やめるってよ』は、受け止め、感じるだけでいい青春映画の傑作ですよ。
ぜひご覧ください。
TEXT 有紀