90年代の人生のバイブルが実写で強烈に蘇る!
画像引用元 (Amazon)
2019年公開の映画『宮本から君へ』は、カルト的な人気を誇る漫画家の新井英樹の同名漫画を実写化した人間ドラマです。
原作漫画は、バブル崩壊直後の1990年から連載され、確かな画力で人間の生々しい姿を描いた伝説の作品。
2018年にはテレビドラマ化となり、大きな反響を呼びました。
その続編と言える本作は、原作の後半に描かれる主人公の恋愛模様にスポットを当てています。
ドラマ版に引き続き、真利子哲也が監督と脚本を務め、強烈な熱量を持った映画作品に仕上がりました。
原作を知らない人でも引き込まれる、本作のあらすじや見どころを紹介します。
不器用すぎる男の究極の愛の物語
宮本浩は、文具メーカーのマルキタで営業マンとして働いていますが、笑顔を作るのもお世辞を言うのも下手で、営業マンとして致命的。
しかも人一倍正義感が強いせいで、不器用さに拍車がかかっています。
そんなある日、先輩の仕事仲間である中野靖子と出会います。
自立している彼女に惹かれつつ、親しくなった2人は彼女の自宅で一緒に食事をすることに。
そこに彼女の元彼の風間裕二が押しかけ、追い返すために彼と寝たと伝えます。
逆上して手を出した元彼に対し、彼は「この女は俺が守る」と宣言。
この事件から2人は心から結ばれて、幸せな日々を過ごすようになります。
そんな中、営業先で気に入られ取引先の真淵部長と親しくなった彼は、彼女を連れて飲み会に参加します。
飲みすぎて泥酔した彼を見かね、部長が息子の拓馬に車で2人を送ることを提案。
やって来た息子はラグビーで鍛え抜かれた巨漢の怪物ですが、彼らに対していかにも友好的な雰囲気です。
しかし、安心して帰路に就く2人に、人生最大の試練が待ち受けていました。
キャストの熱気あふれる演技が圧巻
本作の魅力の1つは、キャスト陣の並々ならない迫力の演技です。
主演の熱血営業マンの宮本浩役は、数々の映画作品で演技力を見せつける俳優の池松壮亮。
原作ファンということもあり、どのように主人公の持つ熱量を表現するかに焦点を当てているため、まるで漫画から飛び出てきたかのような情熱で役に演じています。
ヒロインの中野靖子役は、繊細な演技が持ち味である女優の蒼井優。
凛々しい内面の強さを備えた女性を丁寧に演じ、主人公との良いコンビネーションを見せています。
そして、彼らの間でストーリーを動かすのが、元彼の風間裕二役の井浦新と、部長の息子である真淵拓馬役の一ノ瀬ワタル。
宮本と靖子が愛を強めていく上で欠かせないキャラクターを、存在感たっぷりに好演しています。
メインキャストの2人を含め、ドラマ版で注目されたキャストの多くが本作でも役を引き継ぎ、前作以上の熱気をかもし出す演技は必見です。
原作へのリスペクトを感じる忠実な演出
本作の評価の高い要因は、原作のストーリーや演出を実写で忠実に再現しているところにあります。
多くの場合、実写化作品はキャストのイメージが違ったり、原作通りの演出になっていないことで、原作ファンからの評価が低くなりやすいもの。
しかし、本作は熱狂的なファンからも支持されるほど、原作の世界観を巧みに表現しています。
たとえば、実写化は不可能ではないかと思われていた非常階段での決闘シーンも、実在する高層マンションの非常階段を使い、池松壮亮自身がスタントなしで演じきりました。
主人公の持つ暑苦しいほどの熱量や誠実さは、原作で読者に与えた同じ衝撃を映画を観る人にも鮮明に与えています。
そして、実写映画だからこそできる生々しい表現で、主人公の泥臭い生き様を見せつけてきます。
これほどまでに原作ファンを虜にできたのは、制作陣が原作を深くリスペストしているからと言えるでしょう。
また、本作では主人公のラブストーリーを軸に物語が進んでいきます。
とはいえ、ただのサラリーマンの恋模様ではありません。
観る人によっては不愉快に感じるような過激なシーンも多く存在します。
しかし、一途な愛を糧に走り続ける主人公の暑苦しいほどの滑稽さが、不思議と愛おしく思えてくるはずです。
独りよがりでも、不器用なりに人を愛する姿は、清々しささえ感じさせます。
不器用すぎる男がどのように人生を切り開き、自分自身を貫いていくのかというエネルギッシュな人間ドラマに浸ってください。
「Do you remember?」は宮本浩次のパワーが炸裂!
本作の主題歌は、宮本浩次と横山健が初コラボした『Do you remember?』です。
ドラマ版に引き続き、主題歌の制作を依頼された宮本浩次が映画のために描きおろし、楽曲の力を最大限に引き出すために、ジャパンロックを代表するギタリストの横山健を自らオファーしたそうです。
ベースのJun GrayとドラムのJah-Rahも加わり、新バンドでの楽曲に注目が集まりました。
この曲は、疾走感のあるギターが奏でる明るいメロディをベースにしたロック・サウンド。
文学的な歌詞には、苦しみもがきながらも純粋な思いを抱き続け、懸命に生きる男の姿が描かれています。
スケールの大きなフレーズを使った大胆な歌詞が特徴的。
そして、叫ぶようにパワフルな低音と美しく突き抜ける高音を使い分け、唯一無二の歌声で歌詞のメッセージをストレートに伝えています。
PVは、スタジオでの練習風景をスマホ1つで撮影したもの。
飾らず音楽に真っ直ぐ向き合う様子は、楽曲と映画の中の熱気とリンクする生命力を感じさせます。
まさにこの映画のためにある主題歌ですね。
「宮本から君へ」は魂が揺さぶられる傑作!
観る人に大きなインパクトを与える映画『宮本から君へ』は、1人の男の人間臭くもひたむきな生き方を映し出す作品です。
大人になると手放してしまいがちな熱意や必死さを、本作の主人公は持ち続けています。
周囲の目にどのように映ろうと、常に自分の思いに正直に行動する生き方は、簡単には真似できないでしょう。
だからこそ、自分にできないことをやり遂げる存在として、多くの人の心を震わせるヒーローになり得たのです。
映画『宮本から君へ』を観て、彼の純粋で強烈な愛の行方を見届けてください。
TEXT MarSali