何かを探し掴もうとしている主人公
後半からの盛り上がりに定評のある、電子的なメロディーと爽やかなバンドサウンドが特徴的なボカロP「ジミーサムP」その彼の5作品めである『Room 206』は、なんとソフトシンセで遊んでたら何となくでできた曲とのこと。
しかし、多くの人の心をガッチリと掴み、ニコニコ動画での動画再生数10万越えに加え、カラオケDAM&JOYSOUNDでも配信が行われるなど大人気ボカロ曲となりました。
再生回数も「お隣さん」に例えられたりと、人々からとても愛されていることがわかりますよね。
なぜこの楽曲がここまで人気のある楽曲となったのか。
その理由を歌詞の内容から考察していきましょう。
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その手に触れようとして
明かりをつけた
見つけたのは期待はずれの感触で
冷たさを伝えた
≪Room 206 歌詞より抜粋≫
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何かを探し掴もうとしようとしている姿が歌われているような出だし。
「手」というのがその「何か」を象徴しているのでしょう。
ですが、ようやく見つけて触れたそれは自分が思っていたものとは違っていたようです。
「冷たさ」というのは、その期待外れだった失望を表現しているのかもしれません。
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空に向かって開け放った窓
僕だけを残して時間は進む
でも僕にだって夢があって
叶えたいけど
叶えたら死んでしまいそうで怖いんだ
≪Room 206 歌詞より抜粋≫
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しかし、失望していたところで、時間が止まってくれないこともわかっているようです。続く歌詞からは、どうやら主人公が探し掴もうとしていた「手」が主人公の持っている「夢」を象徴していることが推測できます。
「叶えたら死んでしまいそうで怖いんだ」という歌詞からも、主人公にとってその「夢」がどれだけ偉大で、大きな存在であるかがわかります。
もしかしたら主人公は今、その大きな「夢」を叶えようと必死になっている最中なのかもしれませんね。
だからこそ、思った通りにいかない現状に苦しさを覚えている時なのかもしれません。
主人公がもつ「夢」とは?
では、主人公の持つ「夢」とはなんなのでしょうか。関りがあると思われる歌詞は、サビにて歌われていました。
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生まれたてのリズムが響き渡るこの部屋で
いま何もかもを壊して笑い合えば
その先へ行けるような気がするよ
≪Room 206 歌詞より抜粋≫
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どうやら主人公は音楽を作っているようです。
「この部屋で」というのは、楽曲タイトルにもなっている『Room206』のことなのでしょう。
206号室に住む主人公が、その部屋の中で音楽を作ろうとしている様子が目に浮かびます。
ですが、その歌詞の内容は先刻の不穏な気配とは一転。
どこかカラリと様変わりした、爽やかさが詰め込まれたものとなっています。
まるで何かから解き放たれたような明るさ。
もしかしたら主人公は、今まで思っていた形にこだわりすぎていたのかもしれませんね。
理想という枷を壊し、好きなように今一度やろうと作り始めた時、ようやく求めていたリズムが産み出せたのかもしれません。
しかしこの歌詞、1つ不思議な点があることに気づいたでしょうか。
それが「笑い合えば」という歌詞。
誰かと一緒に笑っている様子が浮かぶ歌詞からは、この部屋に主人公以外の誰かがいることが想像できます。
もう一人の登場人物の正体
ここで一度、冒頭の歌詞を振り返ってみましょう。
冒頭の「手」という言葉が続く歌詞は、「夢」を意味することであると推測できました。
ですがなぜ、主人公は「手」という言葉で表現したのでしょうか。
それを解く鍵は、続くこの歌詞に隠されています。
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冷たさを伝えた
≪Room 206 歌詞より抜粋≫
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同じ出だしの歌詞。主人公の夢への失望を歌ったものに見えた歌詞ですが、視点を変えるとある別の答えが見えて来るのです。
それがジミーサムPがコメント欄に残した「今住んでる部屋も前住んでた部屋も206号室なんです」という言葉。
この言葉を含めて考察すると『Room206』とはジミーサムP自身が住んでいる部屋である可能性が見えてきました。
もしこの楽曲の主人公がジミーサムP自身のことを指していたのだとしたら、そこには彼だけではなく初音ミク、ボカロの存在が共にあったことになります。
ボカロは機械でできたボーカル達。機械という言葉からは「冷たい」という言葉を連想することができます。
そうすれば「笑いあえば」の歌詞には、初音ミクと共に楽しく音楽を作り上げている、そんな一人のボカロPの姿を歌っている光景が秘められている可能性が見えてくるのです。
最後の大サビの歌詞でもその楽しそうな光景は綴られています。
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生まれたてのリズムが響き渡るこの部屋で
いま何もかもを忘れて笑い合えば
その先へ行けるような気がするよ
≪Room 206 歌詞より抜粋≫
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ジミーサムPの世界観盛りだくさんの電子音で紡がれた間奏、その先で歌われている爽やかな大サビ。
これはきっと、主人公と彼と共に歌うボカロ達が、文字通り「その先へ」行った結果の光景なのかもしれませんね。
音楽を楽しそうに作る2人の素敵な姿が今にも目に浮かんできそうな歌詞。
これが秘められた人気の理由なのでしょう。
TEXT 勝哉エイミカ