カセットテープで繋がる2人!音楽に込めた想いは届くのか
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2020年公開の映画『サヨナラまでの30分』は、音楽で繋がる若者たちの心の繊細な動きを描く青春映画です。
脚本は映画『君と100回目の恋』やドラマ『凪のお暇』の脚本を手掛けた大島里美による、完全オリジナル作品となっています。
映画『東京喰種トーキョーグール』で監督を務めた萩原健太郎がメガホンを取り、映画界を支える豪華スタッフが集結。
青春と音楽という定番の組み合わせに、1つの体を2人の人が共有するという意外な設定を織り交ぜた、新感覚の音楽映画を作り上げています。
音楽好きも映画好きも見逃せない、本作のあらすじや見どころを紹介します。
奇妙な縁で結ばれた正反対の2人
メジャーデビューを目前にしていた5人組バンドのECHOLLは、ボーカルを亡くしたために解散し、それぞれが別の道を歩み始めていました。
1年後、彼らの元に颯太という大学生がやって来て、強引にバンドの再結成を迫ります。
初めは相手にしなかった彼らも、颯太の歌声や性格に引き込まれ、心を動かされていきます。
しかし実は、颯太には彼らに言えない大きな秘密が。
颯太の中には、ECHOLLの元ボーカルであり、1年前に亡くなったアキが入り込んでいたのです。
実際の颯太は人付き合いが苦手な性格で、1人で曲作りを楽しむ冴えない大学生。
そんな彼が偶然アキの遺したカセットテープを拾ったことをきっかけに、テープを再生する30分間だけ、彼の体にアキが入り行動できるようになったのです。
性格が正反対の2人の奇妙な共同生活に加え、バンドの再始動が進む中、アキを失った喪失感から抜け出せない恋人のカナだけがバンドに戻って来ようとしません。
彼女にもう一度音楽の喜びを味わってもらおうと、アキと颯太は最高の1曲を作り上げるために奮闘します。
その矢先、カナは颯太がアキではないかと気付いてしまい、さらには重要なカセットテープにも思いもよらない異変が起こり始めるのでした。
音楽で想いを伝えようと駆け抜ける、若者たちの眩しい青春を映し出す作品です。
人気若手俳優陣が演技で魅せる!
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本作ではメインキャストたちの光る演技も見どころの1つです。
明るい性格のアキ役を演じるのは、端正なルックスと確かな演技力で若手俳優界を牽引する新田真剣佑。
アキの圧倒的なカリスマ性を体現する華やかさと歌唱で、死んでもなおバンドメンバーと音楽を想い続ける熱い心を感じさせます。
内気な颯太役を演じるのは、俳優とダンスロックバンドDISH//のメインボーカルという二足のわらじで人気を博す北村匠海。
颯太本人としてのシーンと、アキが入っている時のシーンでの演技の切り替えが見事で、独自性のあるストーリーを違和感なく演じています。
アキの恋人役には久保田紗友、バンドのギター担当に葉山奨之、ドラム担当に上杉柊平、ベース担当に清原翔が起用されています。
今の映画界を支えるフレッシュな若手俳優陣の等身大の演技が、爽快感ある青春を追体験させてくれますよ。
音楽を中心に止まっていた人間ドラマが動き出すストーリー
本作の魅力は音楽を通じて繰り広げられる若者たちの人間ドラマです。
1ヶ月にわたるオール長野ロケにより、雄大で爽やかな自然の風景がストーリーの青く美しい印象を引き立てています。
アキが颯太の体を使って戻ってくるというストーリーからは、音楽とバンドをいかに愛していたかが伝わってきますよ。
彼はその真っ直ぐな気持ちだけで行動しますが、カナの抱える想いに触れることで、残された人との気持ちのズレに気付くことに。
カナ自身は颯太の存在と音楽によって少しずつ心を開いていきますが、アキを忘れてしまうことへの不安感を抱え悩んでいます。
大切にしたいと思う記憶でさえ、時間の経過と共に薄れて行ってしまうものです。
そのことをつらく感じるカナの気持ちは、誰にでも共感できる部分があるでしょう。
しかし、それは相手をそれほどまでに大切に想っている証拠であり、薄れる記憶を誰も責めることはできません。
無念にも去って行った人のためにできることは、思い出を大切にしながら前を向いて歩くことなのではないでしょうか。
本作からは大切な存在を失ってしまった人の背中をそっと押してくれる、優しいメッセージが読み取れます。
また、颯太の成長も本作で欠かせない見どころです。
1人でいることを好んでいて、アキを受け入れることにしたのも面倒な人間関係を変わってもらえるという打算がありました。
しかし、自身もバンドメンバーの一員として活動していくうちに、仲間といることの楽しさや、自身が認められることへの喜びを知っていきます。
アキが入っていない時でさえ明るい表情を見せるようになり、人は大切なものが生まれると変化できるということを教えてくれるでしょう。
さらに、アキとカナの想いを知りながらも、一緒に時間を過ごす中で颯太も彼女に想いを寄せていくようになります。
青春時代のじれったくて甘酸っぱいラブストーリーの行方にも注目してください。
「瞬間」は映画のメッセージを伝える主題歌
本作を飾る劇中バンドのECHOLLが演奏する楽曲は、andropの内澤崇仁が音楽プロデューサーを務め、豪華アーティストによる楽曲提供がされています。
その中でも、リード曲であり、エンディングで流れる新田真剣佑と北村匠海のWボーカルが印象的な主題歌が『瞬間』です。
5ピースバンドのodolがオープニングのために書き下ろした楽曲で、美しいピアノがメインのメロディに引き込まれます。
歌詞は作中のテーマにもなっているカセットテープと記憶に共通する、上書きされてしまう切なさを描きながらも、それを超える愛を感じさせるストレートな表現が美しいです。
そしてリズム感の良いバンドの演奏に、新田真剣佑の甘い歌声と北村匠海のパワフルな歌声がマッチし、心地良い音楽に仕上がっています。
オープニングとエンディングで印象の異なる『瞬間』の違いを、じっくり聴いて楽しんでください。
そして、作中で流れる他の5曲もECHOLLの魅力を感じる楽曲なので、ストーリーとリンクする音楽にも注目です。
「サヨナラまでの30分」はみずみずしい青春を描く音楽映画!
新しい地位を築いた音楽映画『サヨナラまでの30分』は、人の繋がりの尊さを感じさせてくれる作品です。
共に過ごす時間が長くなればなるほど、その価値を忘れてしまいがちになります。
大切な人を失ってから想いを伝えることはできませんし、自身が亡くなってしまってもどうすることもできません。
だからこそ、そばにいられる時間を大切にし、共に過ごした思い出を宝物にしたいものです。
映画『サヨナラまでの30分』を、ぜひ失いたくない大切な人と一緒に観てくださいね。
TEXT MarSali